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春の思い出〜忘れられない先生〜

中学2年生の春、忘れられない先生に出会った。
4月の始業式で紹介されたのは当時25歳だった若くてイケメンの先生。ピアスをしていてビックリした記憶があるが、5ヶ国語くらい話せた気がする。

担当になって2ヶ月経った6月頃、先生は私たちに日記を書くことを提案した。当時英語が全くわからなかった私は、父に手伝ってもらいながら日記を書くようになった。先生は毎回丁寧に添削と励ましのコメントを返してくれた。先生からアドバイスをもらいながら書き続けるうちに、書くことがだんだん楽しくなっていった。
「質問があったら本当にいつでも聞きにきていいからね」と先生は繰り返し繰り返し私たちに話してくれた。その言葉に甘えて、休み時間や放課後の教員室に押しかけた。放課後の静かな校舎で教員室のドアを叩く時の緊張感とか、ワクワクした気持ちを思い出すと今でも心がぎゅっとなる。先生は本当にいつでも時間を作って丁寧に教えてくれた。そして夢中で英語を学ぶうち、気づけば自分の気持ちを英語で表現できるようになっていた。毎週授業を楽しみにし登下校中も家でも英語のことばかり考えていた。

担当2年目になった中学3年生の12月、先生が3月で辞めると聞いた。私はそのまま同じ学校の高等部に進む予定だったから、目の前が真っ暗になってその日家に帰って号泣した。
3月には東日本大震災が起こった。住んでいた場所に大きな被害はなかったけれど、学校は休みになった。
卒業アルバムの寄せ書きの最後に先生が書いてくれた「素敵な人になってください!」という言葉。誰よりも先生が一番素敵な人だったから、私はそれ以来ずっとその言葉を追い続けている。

中学卒業から3年後、高校の卒業式に先生が来てくれた。久しぶりに会って、本当に大好きだったんだと思った。
その日はずっと話しかけられなかったけれど、謝恩会の後、先生のところに行って「ありがとうございました」と声かけてみた。何か思い出がほしくて、気づいたら握手を求めていた。先生は握手はしてくれなかったけれど、その代わりぎゅっとハグしてくれた。ハグしながら「がんばってね、応援してるからね」と。大きくて、とても暖かくて、17歳の卒業式の忘れられない思い出になった。

大学生になった私は研修でアメリカに行ったり、カナダに短期留学したりと海外に行く機会を増やしたけれど、かつての情熱は消えてしまったように、英語力も落ちてしまった。
先日、予備校の通信講座に申し込んで、また英語の勉強を始めた。今の職場に入る時に掲げた夢の一つ「英語を使って仕事をしたい」を叶えるためだ。

気づけばあの頃の先生の年齢を超えて、私は大人になった。高校の卒業式以来会ったことはないし、連絡先も知らないし、現在の生活の中で思い出すことも減ったけれど、ふとした時に心に浮かぶ。
心が折れそうな時、当時英語を楽しんで夢中で学んだ記憶に助けられることもある。

職場で後輩ができた時、質問されたらどんな時でも聞くようにしようと決めた。先生がいつも言っていた「質問があったら本当にいつでも聞きにきていいからね」という言葉が好きだったから。

短い期間だったけれど、出会えて幸せだった。
先生にもらった大切な気持ちを胸に、これからも私は「素敵な人」を追いかけながら、楽しんで英語を学んでいきたい。

#忘れられない先生

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