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アラスカスキー山行記 1話-2:「どこへ」「誰と」

「何を」の次は「どこへ」だ。そして行き先が決まると、「誰と」という問いがつられてやってきた。

アラスカへの刷り込み

 旅の行き先は、比較的にすんなりと決めることができた。ただし、理由を説明するには「なんとなく」という結論を前提にして、その裏にある思考を意図的に遡上しなければならない。

 かの地への興味の原点になっているのは、堀田貴之氏の著書「バックパッキングのすすめ」だ。中学3年のときだったか、小遣いで買った初めての本だったように記憶している。この本には壮大な原野を旅した記録が記されている、というわけでは決してなくて、内容はバックパッキング(自然の中での徒歩旅行)の技術教本としての体裁をとっている。しかしながら実際は、堀田氏の偏った道具紹介や数々の旅から得た経験談が、自然への敬意に満ちた持論と共に繰り広げられていて、少年時代の僕はすっかり影響されてしまった。そして、そんな経験談の端々に登場するアラスカ・キーナイ半島での1週間のバックパッキングが、気づかぬうちに脳裏に刷り込まれたのだった。

 その他にもいくつかの要因が重なって、行き先の第一目標はアラスカに決まった。しかしアラスカで山スキーとなると、さすがに一人ではハードルが高すぎる。そこで同行してくれる人を探すことにした。

2人旅の意義

 旅はひとりでするものだと思う。自分自身の興味を突き詰めて、夢想した景色や体験を具現化するには、それが最も純度の高い方法だろう。
 一方で、登山は基本的に2人以上でするものだ。特に冬の場合、パーティーを組むことで受け入れられるリスクの幅が何倍にもなり、求める景色にたどり着ける可能性も上がる。

 今回の場合、同行者を求めることは自然な成り行きだった。ひとりでできる範囲だけのことに留めようとしなかったのは、今にしてみれば不思議でもあるが、要はその先の景色が見たかったのだろう。そしてこれは結果として完全にプラスにはたらいた。

 「アラスカで山スキーをしよう!」と声をかけて、それが1週間程度ならばまだしも、その2倍、3倍となると滅多に同意を得られるものではない。残念ながら、大学山岳部の同学年にはあてが無かった。そこで同じように休みのとれるであろう学部4年の、興味を持ってくれそうな2人に声をかけたところ、運良く1人が同行を申し出てくれた。海外のひとり旅に実績があり、また食事が連日連夜まったく同じメニューでも一向に気にしない素質があり、体力も折り紙付きのタフガイだ。

 かくして旅の大枠は決まり、具体的な計画立案が始まったのだった。

1話-3に続く

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