五右衛門ビール風呂①
〜償い〜
中年男性のある日常の1コマを切り取ると、どこにでもある夫婦の会話が聞こえてきた。
「もう酒に酔って言うのはやめてよ。どうせ、忘れるくせに、なんの信憑性もないの、酒飲んで言ったことは信用しないから」って妻に言われていた。
これまでに酒を飲み過ぎると、嫌な奴になり、そこいらの居酒屋にいる親父そのものの姿だった。
中年男性は酔えば、上手くいかないのは人のせい、社会のせいだと、自分のことを棚に上げてクダを巻く癖があった。
そんな中年男性でも会社では、飲めば面白い、拍車をかけてぶっ飛んでいるって言われ、それも、なかなかいいなと思いながら毎日ふざけて生活していた。
外ヅラでは悩みがない雰囲気だったが内心では酒をやめたい、二日酔いになればいつも思いながらも、二日酔いがすぎればまた飲みたいと思うのであった。
いつでもやめられるからと惰性で、毎日飲んでいた日々で、問題を起こしたことは一回だけじゃなかった。 居酒屋でチンピラに殴られ、タクシーと揉め、軽トラの兄さんにまた殴られる。
とにかくよく殴られる。
酒を飲んでいる時は気が大きくなり、感覚が鈍感になり、どうとでもなれって思ってしまう自分がいた。
でも、酔いがだんだん覚めはじめ、徐々に意識がはっきりしてきたら、かすかに脳裏にアホをした記憶が残っているから、すぐさま穴があったら入りたい気分になる。
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