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『煙々羅』陰陽座(思い入れのある曲シリーズ)

今日は陰陽座について。
陰陽座との出会いはとても印象的で、高校時代に遡ります。

当時バンドをやっていた友人に誘われ、コピーバンドが集うライブイベントを見に行っていました。

その中で女性ボーカルでハードなリフものの楽曲を演奏しているバンドがあり、格好良いなぁと思って観ていたところ、スウィープのテクニカルなギターソロでおっつ!!となり、更にラスサビでは急にベースボーカルがメインで歌うパートが登場するという展開でひと聴きで魅了されてしまったのです。

演奏が終了し、出演したそのバンドに話を聞いたところ、コピーしていたのは陰陽座の『鳳翼天翔』という楽曲でした。
『鳳翼天翔』はアニメのタイアップで有名な『甲賀忍法帖』と双璧をなす知名度の楽曲で、いわゆるジャパメタ的なサウンドにキャッチーなメロディーの女性ボーカルが載っているという陰陽座の持ち味が大いに感じられる仕上がりになっていると思います。

サウンド面だけでなく、陰陽座の魅力は瞬火さんの作詞する和の歴史や物語をベースにした歌詞にもあって、歌詞を読み解くことでそういった知識を深められるのも素晴らしい。

そんな陰陽座の楽曲の中でも筆者が特に思い入れがあるのが、アルバム『夢幻抱影(むげんほうよう)』に収録されている『煙々羅』という楽曲です。

『煙々羅』は『甲賀忍法帖』や『鳳翼天翔』とは違い、スローテンポなバラード調の楽曲になっています。

更に大きな違いとしては、メインボーカルを男性の瞬火さんが務め、通常メインで歌っている女性の黒猫さんは瞬火さんのボーカルをバックアップするような黒子役に回っているということが挙げられます。

瞬火さんはベースボーカルで通常はコーラスを務めているのですが、音域が非常に広くヘビメタ的なシャウトもこなすことができ、ボーカリストとしての実力も文句なし。

どちらかと言うとハイトーンの印象の方が強い瞬火さんですが、『煙々羅』のAメロでは低めの音域の男らしいボーカルを聴くことができます。
そこから黒猫さんが歌う麗しいBメロを挟み後にやってくるサビではかなり高い音域までを歌い上げており、この楽曲を聴くだけでも瞬火さんのボーカルスキルの高さを実感することができるでしょう。

普段はハードなフレーズを弾いていることの多いギター2人も、この『煙々羅』ではクリーントーンを主体にした歌を盛り立てる黒子的なフレーズに徹しています。
それはそれで味わい深くて良いです。

特にBメロの、ベースのルートはステイした上でギターのコードが変化する箇所が印象的で、この楽曲にマッチした儚い雰囲気が感じられます。

ただ終始黒子に徹しているわけではなく、しっかりと長尺のギターソロも用意されていて、しかもギター二人のリレーソロになっているという充実ぶりです。

前半の招鬼さんのソロはサビ前半のコードをベースにした構成で、浮遊感を感じさせるコードに沿ったフレーズ。
一方後半の狩姦さんのソロはサビ後半のコードをベースにし、前半とは違い少し切迫した雰囲気を含んだ、楽曲のラストに向かうのに相応しいフレーズになっています。
この辺りの楽曲構成力も流石です。

最後に歌詞について触れると、タイトルになっている『煙々羅』と言うのは煙の妖怪を指すそうで、『今昔百鬼拾遺』という画集にその姿が収められています。

そのことを踏まえて歌詞を読むと、亡くなってしまった恋人のことを惜しむ男性が、葬儀の煙を見て煙々羅に姿を重ねて、また来世で会おうと決意するというそんなストーリーなのかなと思いました。
男性目線なのは瞬火さんがメインボーカルだからそうなのかなと想像しています。

真偽の程はわかりませんが、そうやって歌詞に出てくる見慣れない単語を調べて、その背景を想像するだけでも充分に楽しむことができますよ。

この『煙々羅』が収録されている『夢幻抱影』は全10曲というコンパクトさながら楽曲の幅が広く、キャッチーなものから重いプログレ的なものまで揃っているので、どんな音楽が好みの方が聴いても楽しめる一枚になっているかと思います。
よろしければ、アルバム単位で是非聴いてみてください。


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