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#詩
【絵画によせて/詩】No.10
「嗚呼なんて私は惨めなんだ。貧乏で見窄らしく頭まで禿げて、何をやっても失敗ばかり。金も底が見えはじめた。これから何をすればいいのだ、私に何ができるのだ。ああ誰か教えてくれ助けてくれ」
そんなセリフを想像するが、叫んで投げ出して泣きたいのは、今の俺だ。
おっさんよ、感傷の身代わりにしてすまんな。あんたは、ゴッホのためにポーズを取ったんだってな。
一枚の絵で、一ページの文章で、あんたの、俺の、ことが
【絵画によせて/詩】No.9
前にもゴッホが描いた頭蓋骨に言葉を添えた
真正面から凝視めるそれは未来の俺に思えた
道端に落ちているようなこの頭蓋骨は名も顔も知らぬ誰かに思える
なぜ感じかたは違うのだろうか
頭骸骨に眼球はないが 相対すると目で問いかけられているように錯覚する
名も顔も知らぬ誰かが 俺の知らぬどこかで朽ち果てても
知ることはできないので 何も感じようがない
眼前の絵を未来の自分に錯覚するなら 問いかけは無視できな
【絵画によせて/詩】No.8
踊れよ 踊れよ
メロディとリズムに乗って
楽しさと喜びが体から溢れるように
くるくる回れよ 余計なものが振り落ちてゆく
舞えよ 舞えよ
空を目指せよ 白鳥の子らよ
地を蹴る一歩に勇気を見た
それを宿す君は飛べる
屋根を抜けて外に飛び出そう
どこにだって行けばいい
いつだって帰ってくればいい
【絵画によせて/詩】No.7
俺がかつて見るはずだったもの
感じるはずだった手触りと臭い
味わうはずだったご馳走
過程と労力を素通りして それさえ知らずに気づかぬまま
整然と並べられた断片をスーパーで買って 口にするが
何も感慨はなく 別に普通じゃね?
苦労をせずに手に入れたものは
脳に引っ掛からずに落ちる
かつて見るはずだったものも
いま見ているものも
慣れてしまえば 別に普通じゃね?
【絵画によせて/詩】No.6
むかしむかしの テレビもネットもない暮らし
今とは違うけど 今と同じような暮らしもあっただろう
花を描いて 花を詠んで 肴に呑んで
馬鹿騒ぎして 馬鹿になって笑って
仲睦まじくなったり 喧嘩したり
むかしむかしの人もきっと
人に疲れて一人歩いている道端で
花に微笑まれて 花に微笑んで
花も人も色取り取りだね
出典:NDLイメージバンク
非水百花譜 第18輯
杉浦非水 編 春陽堂 ( 昭和8 )
【絵画によせて/詩】NO.5
title:skull
artist:Vincent van Gogh (1853 - 1890)
Credits (obliged to state):Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)
おいで こっちへおいで
そんな怯えた顔をするなよ
お前もいつか同じになる
俺みたいに笑えるさ
おいで こっちへおいで
そうだ
【絵画によせて/詩】NO.4
Title: Mäda Primavesi (1903–2000)
Artist: Gustav Klimt (Austrian, Baumgarten 1862–1918 Vienna)
引用元:https://www.metmuseum.org/ja/art/collection/search/436819
少女よ貴女の
足は
地面を踏みしめますように
身体は
芯を貫いていますように
目は
【絵画によせて/詩】NO.3
Title: View of a Country House
Artist: Anonymous, French, 19th century
引用元:https://www.metmuseum.org/art/collection/search/349093?sortBy=Relevance&ft=Anonymous%2c+French%2c+19th+century&offset=120&rpp
【絵画によせて/詩】NO.2
Title: [Fontainebleau Forest]
Artist: Eugène Cuvelier (French, 1837–1900)
引用元:https://www.metmuseum.org/art/collection/search/265904
今日も森へ入っていく
薄暗い森へ
霧がかる森へ
遠くまでは見通せない
身の回りを認識できる程度だ
歳のせいか視力の衰えも感じる
い
【絵画によせて/詩】NO.1
Title: Camellias with a Bird
Artist: Kuwagata Keisai (Japanese, 1764–1824)
引用元:https://www.metmuseum.org/art/collection/search/36986
鳥と花
雀だろうか?
網膜に焼き付いた映像を手が写しとる
視線には作為がなく自我がなく
自然を自然のままに写しとる
100年やそ