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賠償を求めます

はじめに

法律に関する話題の第二弾です。定期的に上げようと思っていますと以前書きましたが、あの記事を書いた時点で、一回きりになるかもしれないと僕自身思っていました。しかし、何とか第二弾を書くことができました。実は第三弾をどうしようか考えていて、何の構想すらも浮かんでなく、今回で途切れてしまうかもしれません。今回は国家賠償請求について書いていきます。前回の行政不服審査との関連についても書いていきます。

国や自治体に賠償請求できる

国家賠償法は全6条から成る非常に短い法律で、国家と名前が付いていますが、賠償請求先は国や自治体となっております。国家賠償法の考え方は、公務員や物が原因で与えた損害に国民が賠償請求することを認めています。第1条が公務員の不法行為に対する損害賠償請求で、第2条が公物によって発生した損害に対する賠償請求を規定しています。第3条から6条は国家賠償法の被告となる責任者や国家賠償法に規定のないものについては民法の規定を適用することや外国人に対する相互主義について規定されています。

国家賠償請求の被告は基本的に国または地方自治体になります。国家賠償法は公務員の不法行為に対して損害賠償請求を認めているものであり、公務員が適法に行った行為により発生した損失については国家賠償法の対象とはしていません。この点については後ほど取り上げます。
公務員の不法行為で賠償が必要となる要件は国または地方の公権力の行使に当たる公務員が職務を行うときに故意または過失によって違法に他者へ損害を与えた時です。公務員の人が職務中に、事故を起こした場合は国家賠償請求の対象となります。しかし、公務員の人が職務と関係なくプライベートで事故を起こした場合は公権力の行使にと職務に服していないことから国家賠償請求の対象とはなりません。よく国家賠償請求で取り上げられるのは、逃走車両を警察が追跡している時に起こした事故や収容施設での不適切な対応などがあります。これらの事案はだいたいのケースがいちゃもんに近いものであり、基本的に適法な公権力の行使がなされています。
訴訟の相手は国か自治体であるため、公務員本人ではありません。公務員本人に数千万、数億の賠償責任を負わせるのはあまりにも酷であるため、公務員本人の責任は問われません。しかし、だからといって、不法行為を行なった公務員が無罪放免というわけでなく、常識的な範囲内で国や自治体から賠償額の一部補填を求められることがあります。公務員の方は何をしても許されるというわけではありません。一定の範囲で責任を負うこともあります。
次に公物、公の物が損害を与えた場合です。公物が損害を与えるとは、河川の氾濫や道などの欠陥、公園の遊具での事故などが挙げられます。国会賠償法は人が損害を与える場合と物が損害を与える場合の2つのケースを想定しています。公物による国家賠償の成立要件は道路や河川その他の公の営造物の、設置又は管理に瑕疵があったため、他人に損害を生じた時となっています。瑕疵とは欠陥のことであり、本来必要な安全性を満たしていないこともこの場合は含まれます。そして、公物に対する国家賠償は、過失があろうがなかろうが関係なく、瑕疵があれば、賠償の対象となってしまいます。公務員による国家賠償は、公務員が人であることを考慮し、違法性と故意または過失が要件となっていますが、公物については、被害が発生した時点でアウトであるため、公務員の場合よりも厳しくなっています。
公物が原因となった事案は、落石や空港の騒音、河川の氾濫による被害などが挙げられます。東日本大震災発生時の津波被害に対する国家賠償訴訟の1つの論点として、防潮堤の瑕疵の有無が挙げられます。国や地方自治体の違法な行為によって損害が生じた場合には、その損害を賠償してもらうことができます。
はじめの方で触れた適法な行為によって損失が発生した場合は、国や地方の不法行為による損害ではないため、国家賠償法の対象外であることに触れました。土地収用のように適法な行為によって損失を被った場合は泣き寝入りしかないのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。一般法はありませんが、損失補償という考えがあり、個別の法律で定められている場合はその規定を適用できます。土地収用については土地収用法で収用委員会が補償額を算定します。法律でその規定がない場合は憲法29条の財産権の規定を根拠として、損失補償を求めることができます。補償額は行政から提示されますが、それが不服である場合は訴訟を起こすことになります。しかし、満足のいく額になるかは結審するまでわからないので、リスクは大きいと言えます。不法行為であれ、適法な行為であれ、損害が発生した場合はその賠償や補償を求めることができます。

国家賠償と不服審査

行政不服審査の場合は、原則として、訴訟と不服審査を選び事ができます。一部のケースで訴訟を提起する前に不服審査を経ないといけないケースも存在します。国家賠償の場合は不服審査や行政事件訴訟法に基づく訴訟を提起する必要はありません。国家賠償請求自体が、行政事件訴訟法に基づく抗告訴訟を含んでいることになり、処分等の違法性を争うことになるからです。
国家賠償を求めた裁判で被告が負けた場合は裁判で争われた処分等についても見直す必要があり、行政事件訴訟法に基づく抗告訴訟を提起する必要がなく、手続きを簡素にしていると言えます。ただでさえ、訴訟手続きは複雑なのにそれを二つも提起しないといけないとなると、途中であきらめてしまう人も多くなるはずです。
行政事件訴訟法や行政不服審査法、国家賠償法はまとめて、行政救済法と言われることがあります。これは国や地方が権力を好き勝手に行使できないようにすることと、不利益から国民を守るための制度です。民主主義国家である以上、主役は国民であり、国民の行動を必要以上に制限させないために法律で国民に国や地方への異議申し立てをする権利が与えられています。
国民が不利になるような複雑な手続きを設けることは、行政側が有利になるため、行政救済法の理念に反してしまうことになります。ただし、国家賠償については教示義務がありませんので、不服申し立てする手段として、忘れられることがありますが、国家賠償は取消訴訟などと違って、出訴期間の制限がないため、ある事象によって発生した損害については法律上、いつでも賠償請求することができます。

最後に

国や自治体は完璧ではなく、時として違法なことをしてしまうのも事実です。そのときに単に公務員の怠慢だと批判するのはいいですが、それだけで終わらしては被害を被った人が救われません。被害の穴埋めをするのに、現状で最適な方法はやはり金銭しかないのが実状です。被害を受けた人が本当に救われるのは被害に対する賠償が完了し、原状復帰できたときではないでしょうか?明らかに国や自治体に責任があるケースで泣き寝入りしてしまうことは少なくなりません。泣き寝入りしないためにもこういったことを知っていただけると非常に嬉しいです。


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