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「ペットは家族」を押し付けるな

はじめに

今年のはじめに羽田空港で海保機と日航機が衝突する事故が発生しました。大事故であるにも関わらず、日航機の乗客乗員、全員無事でした。客室乗務員の誘導が完璧で死傷者が出なかった奇跡的な脱出劇で、海外でも称賛されています。残念ながら、海上保安庁の隊員の方は亡くなられてしまいました。しかし、日本では中に残されたペットを見殺しにしてしまって可哀想という議論が沸き起こり、JALの対応を疑問視する声が上がりました。奇跡的な脱出劇にケチを付けずにいられないのかと思わずにはいられません。今回はペットの機内持ち込みについて書いてきたいと思います。

「弱者を守れ」は何処へ?

「ペットは家族だ。だから、ペットを機内に同伴させ、事故のときは一緒に脱出させるべきだ」という意見があります。「ペットは家族」は言うまでもありません。ペットは家族の一員でいなくてはならない存在です。実家で猫を飼っており、今買っている子が2代目で、最初から通算すると20年以上猫を飼っています。今いる子がいない生活は本当に考えられませんし、家族として寝食をともにしています。帰省したときにスリスリと寄ってきて、チュールをあげて喜ぶ姿を見るのが大好きです。構ってほしくて、ちょっかいを出したり、作業の邪魔をしたりと非常に可愛いです。飼い猫に会いたいがために実家に帰ることも少なくありません。子猫の時、保護して気づけば10年以上我が家にいて、すっかりおばあさんになってしまいましたが、今でもうちのアイドルです。僕もそれぐらい猫が好きです、ペットを家族と思っています。
しかし、ペットを機内に持ち込むことには同意できませんし、今沸き起こっている議論に耳を傾ける必要はないと思っています。機内にペットを持ち込めないのは、アレルギーを持っている人への配慮と安全対策です。例外的に盲導犬等の介助犬は機内に同伴できます。彼らは被介助者の体の一部であるという認識であり、いわゆるペット類の動物とは扱いが異なります。盲導犬を含む介助犬はしっかりと訓練を受けているので、機内で暴れることもありませんので、機内の安全は確保されます。むしろ、介助犬の搭乗を断ることは被介助者の搭乗を拒否することにもなってしまいます。
航空会社の一番の目的は何だと思いますか?快適な空の旅を提供することでしょか?いいえ、それが一番の目的ではありません。一番の目的は乗客を目的地まで死傷者を出さずに安全に送り届けることです。機内サービスなどの二の次です。航空会社の目的に照らし合わせると、ペットを機内へ持ち込むことは安全性に支障を来す恐れがあるため、貨物室への預け入れにしているのです。あくまでも彼らの一番の目的は乗客の命を守ることで、客室乗務員は保安員です。彼らの指示に従うことは身を守ることに繋がるのです。
動物アレルギーを持っている人は少なくありませんし、猫好きの僕も軽い猫アレルギーがあります。アレルギーを持っている人からすると飛行機のような閉鎖空間で何時間も一緒にいることはリスクでしかありませんし、重度の人は命の危険すらあります。アレルギー持ちの人にそういったリスクを背負わせてまで、飼い主のエゴのためにペットを機内に同乗させる必要があるのでしょうか?「弱者を守れ」と普段豪語している人たちはアレルギー持ちの人を守る必要がないと思っているのでしょうか?いつもの威勢の良さはどこへ行ったのでしょうか?それとも御犬様や御猫様を優先して、人間を貨物室に追いやろうとしているのでしょうか?
それとも人間が強者で、ペットが弱者だから強者である人間は弱者であるペットに配慮しなければならないのでしょうか?あくまでも飛行機は人の移動手段であり、動物と一緒に移動することを想定していません。「ペットが可哀想だから」や「ペットは家族だから」という理由で、ペットを機内に持ち込ませるべきではありません。あなたにとってペットは家族かもしれませんが、航空会社からすれば、単なる動物です。あなたの気持ちを航空会社に押し付けてはなりません。

自己満足のために安全を犠牲にするな

ペットを機内に持ち込むと暴れる危険があります。それは介助犬と違い訓練を受けておらず、大きな揺れや音に動物はびっくりしてしまいます。そして、飼い主がまともでなければ、ケージに入れておくのは可哀想だからと機内に放してしまうことも考えられます。動物が機内に放されると乗客に危害を加える恐れや食品や飲み物などが汚されてしまう危険性、そして、運航への支障を来すことが考えられます。飼い主が飼い犬に狂犬病ワクチンを打たせずにその犬が暴れて乗客を襲えばどう責任を取るのでしょうか?日本での狂犬病の発症数は非常に少ないですが、発症すればほぼ確実になくなってしまう恐ろしい病気です。訓練を受けていない動物をあの狭いスペースに放つことはリスクでしかありません。航空会社としては安全運航に大きな支障を来すのでそれを認めるわけにはいかないと考えるのが当然です。
飼い主がペットと一緒にいたいからという理由だけで機内に持ち込むことは認めるべきではありませんし、ましてや、緊急脱出時に一緒に連れて行くなんてもってのほかです。ペットを一緒に連れ出したくなる気持ちは分かりますが、他の乗客の命もあります。自分とペットさえ助かればいいと本人は思っているかもしれませんが、航空会社はそんな身勝手なことを考えるはずがありませんし、乗客全員を無事に救出することを最優先に考えます。こういったことが理解できない人たちが声を上げることで安全性が損なわれてしまい、同様の大事故が起こって、切迫している状況でペットと一緒に脱出したがために、犠牲者が出てしまえば、また航空会社が責められ、人命を軽視しているなどと言われることになります。メディアは場当たり的なことしか言わず、無責任なことしか言いませんし、粗探しをします。そして、それに同調する著名人がいることも事実です。そういった意見に会社も流されるべきではなく、しっかりと安全を確保した上で対策を取るべきで、うるさい人のお気持ちに付き合う必要はありません。
緊急時に優先順位を決めることは当たり前のことで、災害時の治療も資源が限られた中で優先順位を付けずに治療することはできません。従事する人としては心苦しいでしょうが、そうしなければ、助かる命も失われてしまいます。優先順位を付けて、助かる可能性がある人を中心に治療します。今回の事故も平時ではなく、有事です。つまり、優先順位を付けないと全員が犠牲になってしまう恐ろしい状況です。そんな状況下で優先順位を付けることは当たり前です。荷物を機内に置いて出て、家の鍵や財布やケータイをなくされた方もいらっしゃるでしょうし、その後が大変なことは容易に想像ができます。しかし、自分の命は守られたのです。そのことを忘れてはいけません。

最後に

航空会社でペットの機内同伴を検討する動きが出てきています。ただし、緊急時はもちろん同伴できません。仮にこれで解禁されたとしましょう。そして、事故が起こりました。そうなると、ペットと一緒に機内いたのに一緒に脱出できないのは可哀想。そして、ペットと一緒に脱出することを認め、事故が起こって、犠牲者が増えて、叩かれるということになるのは目に見えています。動物が好きな気持ちは分かりますし、ペットが家族ということも痛いほどわかります。しかし、周りのことを考えられない自己中心的な人が騒ぎ立てれば、大きな犠牲が生まれるだけです。ペットが可哀想という気持ちもわかりますが、だからといって機内に持ち込ませろというのは乱暴ではないでしょうか。人命を優先することはよくないことなのでしょうか?JALの対応は航空会社の鑑のような対応だと思いますし、誇るべきことだと思います。それで文句を言うのは筋違いとしか言いようがありません。自己中心的なものの見方しかできない人の相手をする必要はありません。JALの対応は非常に素晴らしい。それに尽きます。

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