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欲望のまま生きたいわけではない、ただもっと自然に生きたい

小学生のときのこと。


8歳離れた兄は少年マガジン、5歳離れた兄は少年サンデーを買っていた。


少年ジャンプが我が家にあった試しはなく、いつもあるのはこのどちらかだった。


理由は少年マガジンにはドリームスが連載していて、少年サンデーにはH2が連載していたからだ。

我が家は野球一家で漫画ひとつにしても野球に沿ったものだった。


でもまさか、週刊雑誌を買ってお目当ての漫画だけを読むわけではなくて、他の漫画も読んでいた。

最近その中のひとつの漫画がふと頭をよぎった。

それがサラダデイズだ。

(こちらはkindle版。今すぐ読むならぜひ。)

一話読切のオムニバス形式の恋愛漫画。
絵が綺麗で登場人物の女の子が可愛い。「BOYS BE...」ほど過激ではなくて、ただただピュアな恋愛もので思春期に差し掛かった僕は毎度キュンキュンしていた。

清純派そのものの女の子が出てきたり、一見気の強そうな女の子がしとやかな面もあったり、感情を揺さぶられながら読んでいた。

そして僕が最も印象に残っている話がある。

内容はこうだ。
主人公の男の子には付き合っている女の子がいる。
二人は19歳でもうすぐ成人式を迎えるのに、彼氏はフリーターで彼女はそれが不満だった。
早く仕事に就いてくれなければ別れると言う彼女に不服そうな彼氏。
それもそのはず、彼氏は彼女に黙ってしていることがあった。
それは、バンドだった。音楽で食っていくという夢を彼女に打ち明けられないでいた。
そして、成人式の日に彼氏はスーツではなく、ゴリゴリのバンド衣装で式に参加した。
驚く彼女に彼氏が一言。「お前とも付き合って、音楽の夢も叶える。ロッカーはワガママなんだ。」
彼の誠意が見えて彼女は涙ぐんで「もっと早く言ってよ、バカ」と言って抱き合う。


最後の女の子のシーンが可愛いのはもちろんなのだけれど、僕がこの話がやたら引っかかる部分は「ロッカーはワガママなんだ。」というところにある。

(こちらはコミック)


僕自身、バンドを続けていた経験から、音楽を続けるには犠牲という代償の上に成り立っていると思っている節がある。
でも、本当をいうならば、生活の幸せと同軸上に音楽が存在してほしい。しかし、幸せの同軸上でやる音楽は趣味であり、という自問自答がメビウスの輪のごとく交差する。


僕の今の生活でいえば、本当のところとても幸せなのだけれどそれでも足りないと思うし、それでも満たされないとも思う。
それは不満や欲望という類のものではない。もっと自然に生きたいというところにある。
自由という表現でもなく、自然というもの。
肩に力の入ったものではなく無駄なく最大のパワーを出したいという感じ。

自分の中で制御することは簡単なのだけれど、簡単なことはやっぱりちょっとつまらない。
どうせ、中長期的に同じような思考が巡ってくることは目に見えているなら、そこを見据えて生きる方が何かとコストがいい。


ロッカーはワガママなんだ。

残念ながら僕は生まれながらにしてロッカーじゃないし、欲望のまま生きたいわけじゃない。
ただもっと自然に生きたいだけなのだ。


さて、僕は次に何を選ぶ。


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