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#17 サンダルについて

サンダルからキュッキュと音がする。


僕が持っているサンダルはビーチサンダルではない。皮のサンダルだ。
だから多分みなさんが想像したようにサンダルと地面の摩擦によりキュッキュと音がするわけではない。
自分の足とサンダルの摩擦によりキュッキュと音がするのだ。


どういうわけか順を追って説明しよう。


このサンダルを買ったのは昨年の夏だった。今まで履いていたサンダルがくたびれてしまって長く使えるサンダルが欲しいなと思った。
そこで靴屋さんに行きサンダルと言えば、これ!ということでビルケンのサンダルを買った。僕はビルケンを持つのは初めてなんだけど、ビルケンには思い入れがあった。それはゴイステの曲の佳代に出てくるからだ。
「ドイツ土産にくれたビルケンのサンダルのタグは可愛いからまだつけているんだ」
この歌詞を聞いた僕はいつかビルケンを履いてやるんだとやんわりと心に決めていた。


そんなこんなで僕は晴れてビルケンのサンダルを買った。
そして購入時、靴屋の店員にこう聞かれた。


「ビルケンのサンダルを買うのは初めてですか?」


僕があまりにも田舎者に見えたのか、はたまたお前にはまだ早いとあのCMのようにいなされたと思ったのだがそうではなかった。
店員の話によるとビルケンのサンダルは皮だから履いているうちに雑菌によって黒くなる恐れがあるとのこと。
だからそうならないようにこのスプレーをつけるといいですよ。と雑菌スプレーを勧めてきたのだ。
せっかく高い買い物をするのだから長く使いたい。メンテナンスは重要だ。
僕はなるほどなるほどと思い、まんまと店員のクロスセル戦略にハマり雑菌スプレーを買った。


それから半年後、僕はなんだかスニーカーを買いたくなって再び靴屋に出かけた。
スニーカーを買うのはなんとも数年ぶりのことだった。


僕は滅多に靴を買わない。夏はサンダル、冬はレザーブーツ、それ以外はアウトドアブーツと極端な足元なのだ。


それがなんだかスニーカーを買いたい気分になり、それも白色を買いたくなった。

靴屋に行き、白色のスニーカーをあれやこれやと吟味をしてお気に入りを見つけた。


そしてレジに持っていくと、店員に声を書けられた。


「普段白色のスニーカーをお履きですか?」


僕があまりにも白色のスニーカーが似合わないと思われたのか、はたまたお前にはまだ早いとあのお父さん犬のようにいなされたと思ったのだがそうではなかった。
店員の話によると白色の靴は汚れが目立ちやすいとのこと。
だから汚れを拭けるようにこのスプレーをつけるといいですよと言われた。

どこかでも同じことがあったぞ。ははん、またあのパターンだな。僕は今度はクロスセルされないぞと気を張った。

「このスプレー持っていますよ。以前、サンダルを買った時に一緒に買いましたよ。」僕は得意げにそう言った。
すると、店員は「サンダルには雑菌スプレーを買われたかと思うんですが、こちらはクリーナースプレーなんですよ。汚れを落とすスプレーになるのでこのスプレーをかけて浮き出た汚れを拭き取ってください。」と快活に答えた。

せっかく久しぶりに買うスニーカーだ。ましてや白色だから綺麗にしておきたい。メンテナンスは重要だ。
僕はなるほどなるほどと思い、再び店員のクロスセル戦略にハマり、クリーナースプレーを買った。



雑菌スプレーとクリーナースプレー。
この二つのスプレーはキャップの色が違うだけでメーカーも同じでデザインもほぼ同じといえる。


このスプレーを二つ並んで下駄箱に置いた。
間違いを防ぐためにはこの二つを横に並べて置くべきじゃない。そんなのは百も承知だ。しかし、僕はしっかり者だ。そんなうっかりミスをするはずがない。間違えないように別の場所に置くなんてなんだか負けた気がするじゃないか。そう思った。



最近はとても暑くてサンダルの使用率がとても高い。




僕は昨日、家に帰ってから久しぶりに雑菌スプレーをサンダルに思いっきりかけた。
するとどうだろう。サンダルが泡まみれになるではないか。
これはもしやと思い、スプレーを確かめると案の定クリーナー用のスプレーだった。


特に支障はないと思ったのだが、歩くたびにキュッキュというサンダルになってしまった。


自分のおとぼけっぷりには少し残念だが、これはこれでタラちゃんみたいでおもしろい。




思えば、タラちゃんはなぜ歩くときにあんな音がするのだろうか。



クリーナースプレーのつけすぎだろうか。




次回は「酒とタバコについて」


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