見出し画像

【ビジネスと哲学①】カントに学ぶ!双方向コミュニケーション

こんにちは、N2i DS事業部です。

みなさま哲学を学んだことはありますか?
「我思う、ゆえに我あり」「無知の知」など、名言を耳にしたことはあるが、その詳しい意味までは知らない。そんな方も多いのではないでしょうか。

一見、日常からは離れた学問であるように見える哲学ですが、実はビジネスシーンで使える知識がたくさんつまっています。そこで、この【ビジネスと哲学】シリーズでは著名な哲学者の理論をもとに、ビジネスで使える知識をお伝えしていきます。

第一回目の今回は、カントの哲学です。近代哲学の祖と呼ばれるカントがどんな思想を持っていたかを、ビジネスシーンにおけるコミュニケーションの問題を通してご紹介します。


なぜ今、哲学なのか?

「実社会では役に立たない」そんなイメージもある哲学ですが、実際にその世界に足を踏み入れるとそこには日々の生活やビジネスに役立つ知識がたくさん横たわっていることがわかります。

哲学者によって導き出された思想や理論は生半可な知識ではありません。
創造的思考と試行錯誤を元に築き上げられた足場の上に、洗練された材料を使って緻密な計画に沿って建てられた建築物のようなものです。そしてこの建築物は、誰もが見て触れて入ることができます。哲学とは「誰でも使える普遍的な知識」なのです。

タイパが重視され、時代の移り変わりも加速する現代。だからこそ、揺るがない価値を持つ哲学を学び直す、ということに魅力を感じませんか?かく言う私は、その魅力にとりつかれてしまった一人です。確かに「誰でも理解できる簡単な知識!」とは言い切れません。でも、だからこそ学ぶ価値があるのではないかな、とも思うのです。

カントの哲学

冒頭でご紹介した通り、カントは哲学の祖と呼ばれています。というのも、そもそも現代に生きる私たちにとっての「基本的な考え方」はカントによって作られているからです。

簡単に説明すると、カントはこの世界を以下のふたつのカテゴリーに分け、人間の認識の及ぶ範囲を確定しました。

  1. 現象=私たちが認識するもの

  2. 物自体=対象そのもの

そしてカントは、
「認識(現象)が対象(物自体)に従うのではなく、対象が認識に従う」
と提唱します。これはコペルニクス的転回と言われ、当時の哲学を転覆させるものでした。
少しイメージしづらい言葉ですが、要するに、
「私たちは、固有の色メガネを通してしか対象を認識できない(対象そのものを認識することはできない)」
ということです。

この色メガネを作り上げている土台は、私たち人間の感覚に固有の「時間」と「空間」です。私たちが、どれだけ緻密に対象を調べ上げても、人間である限りこの時間と空間という条件からは逃れられず、物自体がどうなっているのかを知ることはできません。たとえ科学が進歩し物自体が様々な角度から分析できるようになったとしても、その方法や機械が人間である私たちに作られているうちは、私たちが知れるのは現象界の範囲内のことでしかないのです。

正反対の意見でも、どちらも正しいことがある

カントの理論では「現象と物自体」の関係について言及していますが、例えば、この考えを個人レベルにまで落とし込むこともできます。
「現象と物自体」を「自分と他者」に置き換え、一人ひとりが異なる固有の色メガネを使って他者を捉えていると考えるのです。「自分の世界」と「誰かの世界」は全く別のもので、そもそも私は自分の世界のことしか認識できないということです。

例えば、コロナ禍ではさまざまなパースペクティブ(視座)からの意見が交わされました。
ワクチン接種はするべきか否か、マスクはするべきか否か、発熱があればすぐに病院に行くべきか否か?
感情的な意見や非合理的な意見は省くとして、学問的な根拠にもとづいた意見でもふたつに分かれることがありました。
たとえばマスクに関する意見を取り上げると、

するべき:飛沫感染を物理的に防ぐため=ウイルス学的根拠
すべきではない:子供たちの顔認識能力への影響が出てしまう=心理学的根拠

といった場合です。するべき↔すべきではないという対極の意見でも、そのどちらもが間違っておらず、それどころかどちらも正しい根拠にもとづいている、という状況が起こりうるのです。
こういった、単純なパースペクティブの違いによる認識のすれ違いは、生活やビジネスの場においても頻繁に起こります。誰でも、自分が傾倒している分野の知識を中心にして物事を捉えてしまうのは当然だからです。

それにも関わらず、私たちは反対の意見に出会ったときに自分の正しさを主張してしまうことがあります。そんな時にはカントの「認識の及ぶ範囲」を思い出すことをおすすめします。どれだけ自分の正しさを主張してもそれは自分の認識の及ぶ範囲内の話です。本質的に「これが正しい」という自分の認識を他者が認識することはできません。
であれば、行うべきは「自分の正しさの主張」ではなく、「自分の持っている認識自体の提示」と「相手の持っている認識の確認」です。それぞれの認識を確認しあうことができれば、意見が変わることもあるでしょうし、どちらに決めるにしても、双方がその意図を理解したうえでの決定が行われるのではないでしょうか。

カントに学ぶ、本当の双方向コミュニケーション


お互いの意志や感情を伝え合うコミュニケーション方法を双方向コミュニケーションと呼びます。双方向コミュニケーションは今、社内はもちろん顧客との関係などさまざまなビジネスシーンにおいて重要視されています。

ただし、意志や感情という概念は捉え方に個人差が出やすく、一歩間違えると一方的な感情の発露のぶつかり合い、ということにもなりかねません。響きの良さに似つかず、扱いの難しい概念でもあるのです。

そこで、この概念にカントの理論を組み込んでみます。「意志や感情」というざっくりした概念を、そもそもこれらはそれぞれの固有の認識にもとづくものだと捉える。さらにその認識はお互いに本質的に理解することはできないという意識を持つ。
こうすれば、意志や感情の発露の方法や受け止め方が根本的に変わるはずです。

考えることの重要性


今回は、カントの哲学をもとに、ビジネスシーンにおける双方向コミュニケーションの方法を考えてみました。哲学理論はこのように、学ぶだけではなく、さまざまな現実社会の問題の解決方法を思考することにも利用できます。

今回ご紹介した解決方法は、さまざま利用できるうちのほんの一例に過ぎません。
生活の中で、ビジネスシーンで、物事が複雑化していると感じるとき、哲学を利用して思考方法を土台から変えてみることをおすすめします。偉大な哲学者の言葉が、問題の根本的な解決方法を提示してくれるはずです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?