全曲レビュー - The Cheserasera 2nd FULL ALBUM 「Time To Go」

明日6/3より初のワンマンツアーがスタートする「The Cheserasera」。
全国6個所を回ります。
チケットまだあるようなので、フルアルバム1枚これから買うなら、そのお金と3時間ばかりのお時間で以てライブで体感していただけた方が「今」の彼らを見られて良いんじゃないかなー、と、思います。ライブで気に入ったら音源に触れてみてください。ツアー詳細については最下にて。

さて。そんな彼らが4月にリリースしたフルアルバム「Time To Go」。
友人より後押しされたので書いてみました。お楽しみいただけたら光栄です。

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1,『ファンファーレ』
本作のスタートを切るリードトラック。「4月のスタートを切る人へ向けたアルバム」というコンセプトをそのまま表現するに相応しい曲です。新年度を迎える時に感じる、大きな期待感とほんの少しの不安感を肯定してくれるような爽やかさ。イントロから走り出すギターとドラムが目まぐるしいほどの疾走感を見せ、Aメロが始まった途端にギターが立ち止まりベースが唄いだす様は「拝啓皆様僕は今日から迷いを捨てました」という歌詞がいっそう引き立つ。
個人的に一押しなのはCメロ~サビ部分。音の切り方が非常に小気味よくて、楽曲の軽快さを持ち上げている印象があります。
今のThe Cheseraseraをしっかりと見せつけてくれる入門曲。

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2,『butterfly(in my stomach)』
リードトラック「ファンファーレ」の勢いそのままに繋がり、西田さんのベースが観客の手を引っ張るように鳴らされる、ダンサブルな一曲。
漠然とすり切れた心に抱え込んだ厭世観を見せるような歌詞と相まって、宍戸さんの声が持つ多彩な色気のうちの一つを堪能できます。
ノれる楽曲である以上に、歌声の通りの良さから言葉がよく聴こえてくるのでつい曲へ陶酔してしまう。
渋谷の道玄坂を手を取り合って踊るように歩いていくけれど、手を繋ぐ相手へ友愛と期待と失望を同時に抱え込んでいるようなイメージ。

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3,『Day after tomorrow』
The Cheserasera史上稀に見るポジティブソング。人の抱える後ろ暗い過去や、振り返りたくないけれど離れられない思い出を、肯定しつつも今を見つめ未来へ生きる後押しをしてくれる。忘れる必要もない、悔やむ必要もない。声を上げられなくても、まさに「今」が大切なのだという、彼らの決意も伝わってくるようです。聴きどころはドラム。美代さんのドラムが非常にリラックスしていて、明るい未来を見て今を楽しんでいるような音に聞こえます。

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4,『まっすぐに』
美代さんが作詞したこの曲は、そのタイトルからも象徴されるように非常に「まっすぐ」な印象を受ける。少年の心を持ったまま大人になった時、元々持っていた理想と現実のギャップに心がささくれだつ事もある。そんな思いを抱えながらも、ひたむきにまっすぐに、自分の見る光を信じて進もうとするような。(それでも実際には迷う事や悩むこと、環境に左右されてしまうと思ってる事もあって、思うように進めないという気持ちも見え隠れするような。)
音も非常に聴きやすく、大人の青春を感じるような爽やかさ。

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5,『ギブ・ミー・チョコレート』
個人的に、このバンドの醍醐味は「愛を渇望する歌」を嫌味なく、しかもキザになる事も無く表現できる部分であると思う。
ここまでの爽やかな流れを一気に変えるような、歪んだギターでのイントロが非常に印象深い。
「愛を呼べばすぐ駄目になるから 気のない素振りで」
「うまくやれる甘い言葉よりも かけがえない絆が欲しいけど」
言葉の裏側で強く愛を求める歌詞であるのに、非常に男くささを感じさせる響きで聴かせてくれる。
その男くささの中にも、「どうせ誰も愛なんかくれないだろ」というヒネた心は全く見えない点が見事で、「臆病な俺だけど愛してくれよ」と叫んでるように聴こえるのがたまらない。

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6,『seen』
直前の毒気を抜くようなエモーショナルなギター、淡々としたドラム、ゆっくりと歩くような調子を作り出すベース。鬱屈とした心を投影した歌は、Bメロ~サビでのファルセットにのる事によって、一層と心苦しさを増していく。
美代さんのドラムは、かなりストレートに感情を込めている印象がある。『Day after tomorrow』ではリラックスしている音が心地よいと書いたけど、この曲では淡々としている上で、内に秘めている抑圧感や泣きたくなるような感情も感じられる。そういうものを表に出せなくて、平然を装っているような。
あくまでマイペースに歩き続けるベースと、ひたすら感情をひけらかすようなギター。一見それぞれの音がバラバラに鳴っているような印象を与えるレビューになっていると思うが、この音たちがひとつにまとまった結果は、是非聴いてみてほしい。
心から誰かを求めたくなる。

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7,『ラストワルツ』
『seen』で味わった浮遊感を落ち着かせるような、ふっと地に足がついたバラード。真っ白い部屋の中で、よく晴れた昼下がりに誰かへと思いを馳せるような印象を受ける曲。サビのコーラスのきれいさが、このバンドの器用さを物語っている。宍戸さんの骨っぽさを感じる男らしい声にこのコーラスが絡む事によって、曲が持つ「人へのやさしさ」がよく伝わってくる。
もう取り戻せない「あの人」との日々から逃れられないあなたの心に、そっと寄り添ってくるのでは。

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8,『Lullaby』
Lullaby(子守歌)というタイトルとは裏腹にアップテンポなナンバー。3ピースバンドでのギターソロというものは、どうも印象に残りにくいという先入観があったのだけど、The Cheseraseraはしっかりと聴かせてくれるので気持ちがいい。この曲も例にもれずにいいギターソロをしています。
終わりに向けてどんどん加速していくような(実際はそんな事はないのだけど)激しさは、ライブでもテンションをしっかりと引っ張ってくれます。
別れの歌であるはずなのに「忘れた頃またここで会おう」という次の約束も盛り込まれていて、まるでライブでの一期一会を歌ったかのよう。

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9,『スタンドアローン』
西田さんのベースは一体どこまで歌い上げることができるんだろう。それほどまでにベースが伸び伸びとよく歌っている。美代さんのドラミングの(私が勝手に感じている)魅力の一つ、情熱的な音を持ったシンバルもよく鳴らされている。
「努力がもし叶うなら とっくに世界平和さ」
「今になって 焦って 探してるマイネーム」
これらのフレーズを内包した歌詞の上でのタイトル「スタンドアローン」に込められた意味を味わうと、迷いを持つのも必要な事だと励まされるようです。
その迷いすらも君の魅力なんだ、迷わず迷え、その先に君自身のユニークな人生の目標地点は必ずあるから。

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10,『AIR PLANE』
元々は弾き語り曲として生まれていたものを、バンドアレンジにしたもの。その為か、抒情的なニュアンスがほかの曲よりも強い。
純粋さでもって世界を見ることはできているのに、脳のフィルターを通した後、心へその景色を落とし込んだ時に、心苦しさを覚えるような日常。
溢れるほどのひかりの中で、自分自身が影となって生きているような景色が見えてくるようです。
余韻の後に聞こえる、弦の擦れる音がこれほどセクシーなのは、ちょっと、他にない。

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11,『After party lululu』
このアルバムの中でここまでの間、骨太だったりとんでもなく歪ませたり叫び散らかしてきていたギターが、満を持してきらきらとしたキレイさを見せてくるイントロ。
そして歌が始まれば「俺にはこんな魅力だってあるんだぜ」と言わんばかりにやさしく響く宍戸さんの声。
間奏へ差し掛かれば、バスドラムか?ものすごくおおきく響く太鼓の音から始まる、音の重なり合いが厚いサウンド。
それらのすばらしさを更に凌駕していく、サビでの解放感と清々しさ。アルバムのラストを飾り、このままリピートして、また『ファンファーレ』から聴きたくなります。

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■The Cheserasera “ Time To Go Tour ” ※全てワンマン
6月3日(金) 仙台 Flying Son
6月5日(日) 札幌 SPIRITUAL LOUNGE
6月11日(土) 福岡 Queblick 
6月18日(土) 大阪 LIVE SQUARE 2nd LINE
6月19日(日) 名古屋 HUCK FINN
6月26日(日) 東京 WWW
全公演来場者特典あり。
料金:前売 3,000円 / 当日 3,500円(税込/ドリンク代別)

The Cheserasera official HP:http://www.thecheserasera.com/
The Cheserasera official Twitter:https://twitter.com/The_Cheserasera

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