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【読書レビュー】『読みたいことを、書けばいい。』(田中泰延さん著)を読んでみた!!

一企業で社内報を作成している人間の目線でこの本をレビューしていく。

まず、この本はどんな本なのかということだが、電通でコピーライター・CMプランナーを24年間勤め上げ、現在はフリーランスとしてWEBサイト『街角のクリエイティブ』に連載する映画評「田中泰延のエンタメ新党」、「ひろのぶ雑記」などで執筆活動をされている田中泰延さんが書いた、「文章書き」の哲学が詰められた本だ。

「人生が変わるシンプルな文章術」という副題があるが、もはやこれは文章書きの哲学本と言えるだろう。下記は目次。

【目次】
はじめに 自分のために書くということ -書いたのに読んでもらえないあなたへ
序章 なんのために書いたか
付録1 田中泰延が書いた記事10選

第1章 なにを書くのか 〜ブログやSNSで書いているあなたへ〜
その1 文書と文章は違うことを知っておく
その2 ネットで読まれている文章の9割は「随筆」
その3 書く文章の「分野」を知っておく
その4 定義をはっきりさせよう
その5 ことばを疑うことから始める
文章術コラム❶ 広告の書き方

第2章 だれに書くのか 〜「読者を想定」しているあなたへ〜
その1 ターゲットなど想定しなくていい
その2 だれかがもう書いているなら読み手でいよう
その3 承認欲求を満たすのに「書く」は割に合わない
その4 何を書いたかよりも誰が書いたか
その5 他人の人生を生きてはいけない
文章術コラム❷ 履歴書の書き方

第3章 どう書くのか 〜「つまらない人間」のあなたへ
その1 つまらない人間とは「自分の内面を語る人」
その2 物書きは「調べる」が9割9分5厘6毛
その3 一次資料に当たる
その4 どこで調べるか
その5 巨人の肩に乗る
その6 感動が中心になければ書く意味がない
その7 思考の過程を披露する
その8 「起承転結」でいい
文章術コラム❸ 書くために読むといい本

第4章 なぜ書くのか 〜生き方を変えたいあなたへ〜
その1 書くことは世界を狭くすることだ
その2 貨幣と言語は同じもの
その3 書くことはたった一人のベンチャー起業
その4 文字がそこへ連れてゆく
その5 書くことは生き方の問題である
付録2 田中泰延について書かれた記事5選+おまけ

おわりに いつ書くのか。どこで書くのか。

「文章書き」の哲学を

第1章 なにを書くのか (Why)
第2章 だれに書くのか (Who)
第3章 どう書くのか (How)
第4章 なぜ書くのか (Why)
おわりに いつ書くのか。(When)どこで書くのか。(Where)

5W1Hに則って記されている。文章書きの本質が詰まっている本で、非常に良書。


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ここから私が印象に残った箇所を言及していく。

はじめにの部分でいきなり本質的なことが述べられていた。それは「自分が読みたいことを書けば、自分が楽しい」ということである。田中氏が中学生の頃に、ある雑誌で見つけた適職診断でこのような質問があった。

「第一問:あなたはゴリラか? YES・NO」
その問いに田中氏は【YES】を選んで、矢印を辿る。
そうすると次には
「あなたはゴリラだ。まず人間になることを考えよう」

かなりふざけた記述だが、「これを書いた人は「書きたくて書いた」、「加えて「自分が読みたかったから書いた」のであろう」と田中氏は推測し、上記の「自分が読みたいことを書けば、自分が楽しい」という原則に気づいたという。

社内報作成する私でもこれは本当に痛感する。
私はプロジェクトベースで、各部署の業務内容と部署メンバーの情報をパワポ1ページでまとめた社内報を月に1本出している。決まったフォーマットに文章を書き込むだけという、きわめてシンプルな社内報だ。

「掲載部署の人から情報を取れば、それをまとめて文章を書くだけ」という言ってしまえば、それで終わりな仕事だが、その仕事に対して、全くモチベーションが上がらず、1か月さぼってしまったことがある。

それもプロジェクトメンバーに相談もせず、1カ月何もアクションを起こさなかった。完全に社会人失格だ。

社内報の仕事を進めるため、パソコンに触ろうとすると手が震える。
「手が震えた!!じゃあ、やめよう」
とそんな日々が続いた。

何でだろうと考えてみる…
なぜこんなにもモチベーションが下がっているのか?
色々要因はあるのだが、この本に関連することだけを言うと、
「自分が読みたいと思えているものを書けてない」ということが大きかったかもしれない。

プロジェクトが走り出した頃は、部署紹介をすることで組織の縦割りの壁を打ち壊すことにつながる。全社員をクローズアップして全社員のモチベーションを高めようとかなり気合が入っていたが、この社内報を作り出して半年が経ち、マンネリ化していた。A4のパワポの上半分に部署の業務内容を記載するので、大した情報をクローズアップすることができない。部署メンバー紹介もとれる情報が限定すぎて、表現の幅が限られる。そんな状況下で、自分が楽しめていなかった。つまり自分が読みたいと思えるものが作成できていなった。

前述のとおり、「モチベーションが上がりません。じゃあやりません」というのは社会人失格だ。プロジェクトメンバーがそれを許すはずがないので、詰められる。仕方ないので、情報を取るため、取材のアポどりをする。

その回はうちの会社が、とあるアワードを受賞した時の舞台裏特集だ。その公募に挑戦した先輩にインタビューしたものをまとめたものだ。その時のインタビューが非常に楽しいもので、その先輩の仕事に対する根幹の部分に揺さぶられるものがあった。舞台裏特集と題して、その先輩のコアの部分にフォーカスした内容になれば、かなり面白い内容になるのではないかと興奮した。久々に楽しめていた。自分が読みたいと思えるコンテンツが作れていた。

まとめには相当苦労したが、プロジェクトメンバー、フィードバックをくれる専務から、かなりの高評価を得る社内報を作成することができた。

自分の話が長くなったが、これが「自分が読みたいことを書けば、自分が楽しい」ということを実感した体験である。「自分が読んでみたいものをつくる」という気持ちなしにはクリエイティブな文章を書くことはできない。社内報の場合は取材の際に、「この話をどこを掘り下げたら、面白いのだろうか」と考えながら、情報を取って、自分を楽しませるのが、モチベーションを上げるコツだろう。

本の紹介に戻るがこの哲学以外にも

「何を書いたかよりも誰が書いたか」
本書では、無名の人がローマ帝国1480年の歴史についてかなりの熱量で書いた文章よりも、宇多田ヒカルさんの美味しかったロースかつ定食840円の話の読んでもらえるという例が引き合いに出されている。

「感動が中心になければ書く意味がない」
私が愛した部分を全力で伝えるという気持ちで文章を書くこととある。
全く愛せる部分がないのなら、それがなぜつまらないのかを掘り下げるのもありと書いてある。

などなど、

文章を多くの人に見てもらう仕事をしている人には共感できる真理がちりばめられている名作である。

一読の価値あり。文章を書く仕事の人は共感できる部分があると思う。

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