色玉の往き着く先は

国名シリーズを順に読んでいたわけではないが、「アメリカ銃の謎」はいつもの始まりとはかなり違っていた。



何が驚いたって、序文のみ表れるあの物語の語り部たるJ・J マックが本編にて高名な探偵にして友人たるエラリイ・クイーンと事件の会話を始めるのだ!
私が面食らってしまうのは致し方ない。
続くエラリイの話しはこれまた真新しい趣向であって、これから出てくる登場人物を様々な色の玉に例えその行方に想いを馳せるように語り始める。


有名な国名シリーズは処女作「ローマ帽子の謎」から人気を博し、ダネイとリーのいとこの共作作品はアマチュアからプロフェッショナルへと地位を格上げし、年々多くの作品を生み出していた。
「アメリカ銃の謎」は国名シリーズにして6作目。作品を発表し始めて4年ほど。
そしてここで人気シリーズに新たな試みを魅せてくる作家エラリイ・クイーンに私はしびれてしまった。


色玉での例えが過ぎた後にやってくるのはこれまた新しい試みなのか、事件に関わる登場人物たちそれぞれの視点をコロコロと変えながら事件前の動きを語っていくパートだ。
視点がエラリイや第三者目線以外である期間がこうも長く丁寧にあるのは無かったはず。
序盤でこれまでのシリーズから逸脱した物語の滑り出しにまぁ私は目をパチクリさせて戸惑ったものだ。


物語の本筋に移る前に白熱してしまって申し訳ない。
それだけ衝撃的だったことを感じてほしい。
肝心の本編の事件だが、往年のハリウッド西部劇スターがニューヨークのコロシアムにて銃殺された。被害者は当時ロデオショーに出演し乗馬していた。
偶然居合わせたエラリイ・クイーンに父で警視のリチャード、そして従者のジューナ。
警察の速やかな捜査にコロシアムに詰め合わせた2万の人、被害者関係者みなを調べ上げたが凶器となる銃は見つからない!
探偵エラリイは消えた凶器、事件の犯人を追う。
概要はざっとこのようになっている。
事件の真相は実際に読んで確かめてほしい。




真相に少し踏み込んで、私の感想を短く言いたい。
私の拙い読書遍歴でも数ある死体入れ換えトリックと比べても興奮せざるを得なかった。
エラリイの想像力をもって精査した色玉がこんなにも収まりが良いものなのか!と私は舌を巻くばかりである。




もしまだこの作品や作者に出会っていないのなら羨ましい限りである。
だって今から真っ新で作品に出会える機会があるのだから。
悔しいほど本当に羨ましい。

読んでくださった方へ。
良き読書タイムがあらんことを。

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