アレのお話
小学6年生のときに、私は雷に打たれたかのような衝撃的な経験をした。
次の授業に向けて準備をして待っていると、同級生の会話が耳に入ってきた。
「うーわ!アレもってくるの忘れた」
「あー、もしかしてアレ?
ないとキツいよね」
・・・アレ
ふたりの中では認識しているアレ。
話の流れ的に授業で使う教科書とかそういう類のものを忘れたようだった。
思い出せないものに対して「アレ」と言う同級生。
そしてすぐさま「アレ」を理解し共感する同級生。
めっちゃ大人・・・!!
小学6年生の私はその同級生たちの会話が大人の会話に聞こえたのだ。
私は何かに対して「アレ」と指したことがなかった。
すごい!!
同い年なのに「アレ」を使いこなしてる!
なんてかっこいいのでしょう!!
自分とのレベルの違いを感じさせられた。
そして授業が終わるとすぐに
仲の良い友だちに使った。
『ねーねー、さっきの授業アレだったよね!』
「ん?」
『いや、わかるでしょ?授業アレだったじゃん。アレアレ!』
「いや わかるかー」
そりゃ分かるわけがない。
ただ私は「アレ」を使いたかったまで。
内容がないのであれば、伝わらない。
そして次はちゃんと「アレ」の指すものを決めて使ってみた。
私が言いたかったのはこれだ。
『昨日宿題をしようと思ってランドセルをあけたら教科書を学校に忘れたことに気がついて結局できなかった〜』
よし。伝えたいことも完璧だ。
親友に使ってみよう!!
『ねーきいて〜!昨日ね、アレをやろうと思ってランドセルをあけたら教科書を学校に忘れたことに気がついて結局アレだった〜』
よし!これはうまく使えた!!
親友よ!!私と大人の会話をしてくれ・・・!
「ほんとうに聞いてほしかったら、思い出して相手の立場にならないと伝わらないよ?」
『・・・はい。』
私の親友は冷静に的確な返事をした。
ごもっともすぎる。
思い返すと私の親友は同級生の中で一番大人だったのではないかと思う。
あれから約20年ほど経った現在、私は「アレ」というワードを意識しなくともいろいろと思い出せずに無意識に「アレ」を日常会話で連呼している。
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