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書評 - 夜間飛行

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ, 『夜間飛行』, 1931
今回読んだのは、光文社の古典新訳シリーズ


郵便機という、郵便物を飛行機で運搬する事業が始まった黎明期の話。当時は鉄道や船と速度を競っていたので、たとえ飛行機が早くても夜に止まっていると追いつかれてしまう。したがって、郵便機というのは死と隣り合わせの危険な仕事であった。サン・テグジュペリ自身も郵便機パイロットだったからか描写が緻密で臨場感がある。

物語の経過時間は非常に短くて、たぶん一晩、後半の解説ではおそらく10時間程度の話。内容もシンプルで「大嵐にみまわれた郵便機パイロットと、それを帰還させようとする郵便飛行会社の一夜」の話。話も133ページぐらいで短いのでサクッとよめる。

ただし、その緊迫感は伊達ではない。前半は登場人物の名前が覚えられなかったので大変だったが、社長のリヴィエールとパイロットのファビアンの2人だけ覚えていればあとは大丈夫。リヴィエールの周りに理解されない辛さと、それでも飛行機による郵便事業を実現させる覚悟というか冷徹さみたいなものがぐっと来た。

最後の解説で物語の構造が解説されているのだが、これも秀逸でもう一回読み直したくなる。

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