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無人島には自撮り棒を持っていくべき!?──見慣れた問いとアイデンティティ・クライシス


どうも、相川です。
突然ですが皆さんは、「無人島には何を持っていくべきか」という質問の答えを、一度くらいは考えたことあるんじゃないかと思います。
「いろいろ使えるからナイフがいい」とか、「やっぱり飲水の確保を優先すべきだから水」だとか、はたまた「火が使えたら便利だからライター」みたいに、人の考え方に応じて無限大の答えがあると思います。
しかし、この問いをされる人にはまず間違いなくある特徴があります。なんだと思いますか?
それは、「無人島に漂着したことがない」ということです。
そして、極限状況下での生活を体験したことがない我々にとって、生きていく上での大きな問題でありながら、しかし盲点とも言えるようなある観点があります。それがタイトルにもある「アイデンティティ・クライシス」です。
アイデンティティ・クライシスとはなにか?
英単語の意味から推測できる方もいるでしょうが、一応説明しておくと
自己同一性の喪失、つまり「自分とは何なんだろう」「なぜ生きているのだろう」という問にぶつかり、心理的な危機状態にぶつかることを指します。
無人島に漂着してしまい、そして食料も見つからず、飢えに苦しんでいる時。
そんな極限状態になった時、人は「どうして生きているんだろう」という疑問を抱くのです。
こんなことを言われても、にわかには信じがたいかもしれないので2つ例を挙げましょう。
1つ目は、福永光司の例です。
彼は中国思想の研究家でした。元々は儒学の研究をしていたのですが、あることをきっかけに道教や老荘思想の研究の道に進みます。
道教や老荘思想は非常にざっくり言ってしまうと「どう生きるか」が源流なのに対して、儒学は「善く生きる」ことが源流であり、後ろにいつも流れているテーゼです。
そしてその「どう生きるか」ということについて研究しようと思い立った出来事が太平洋戦争です。
彼は体格も良く、健康であったので兵隊に取られることはまず間違いないという状態でした。
そんな生死も危うくなるような状況において、「善く生きる」というのは苦しみから逃れる為には思想として弱い。
自分というもの、実存に対する不条理の壁にぶち当たった彼は、「どう生きるか」ということに直結する老荘思想、及び道教を研究するに至ったのです。
これは極限状態でアイデンティティ・クライシスが発生し、それをどうにか解消しようとした結果ですよね。
とまあ一例を挙げたわけですが、「これはたった一つの例じゃないか」と言われそうなので、もうひとつ。今度はもっと抽象化された事例です。
まず皆さんに問います。「自分ってなんで生きてるんだろう」って考えたこと、ありますか?アイデンティティ・クライシスになったことがありますか?
あると答えた人は、その考えた時の状況を思い出してください。
ご飯を食べて満腹で幸せな時にそういうことを考えるでしょうか。そういう場合も無いとは言いませんが、それよりも、落ち込んでいる時とか、しんどい時のほうが「なんで生きてるんだろう」って思ってることが多くないですか?
そういう時は、実は一種の極限状態なのではないかな、と私は考えます。
食べる物が何も無くて、なのに仕事もない、お金もないという時と、マラソンで40kmくらい走っている。あと少しだけどもう死にそうっていう時と、毎日銃弾が飛んできて、いつ死ぬか分からないっていう時は等しく極限状態なんだと思います。人間の精神と肉体は密接に関係しているので、「生きていたくない」と本気で思っている時は普段の半分以下の力しか出ませんし、逆に肉体が消耗仕切った時には明るい考えが浮かばない。なんてことがある訳です。
そして、これを踏まえた上で無人島に何を持ってゆくべきか。
それは「自分のアイデンティティを保てるもの」が真に必要なものなのでは無いでしょうか。
ナイフがあっても、生きる意思がなければそれは何の役にも立ちません。
そして「生きているとは何か」「自分とは何か」に明確な答えを出せた時、初めて生きることが出来るのです。
でも日常ではそんな事しなくても生きていける?
それはそうでしょう。
生きているのが辛い時、苦しい時。人はそんな時に初めてその問いを意識するのですから。
だからInstagramに沢山自撮りを載せているような人は、アイデンティティを保つために自撮り棒を持っていくべきです。
スマホは充電が切れるとうんともすんとも言わなくなり、否応なしに現実を見せつけられますが、自撮り棒は自撮り棒のままなので「イマジナリースマートフォン」を召喚すれば大丈夫だと思います。
ちなみに私は無人島に何を持っていくかというと、多分瓶を持っていくと思います。
紙を作るなりの方法で瓶の中に物語を閉じ込めて海に流せば、もしかしたら誰かの所に届いて、その人へ忘れられない体験をもたらせるかもしれませんからね。
その為には話者が比較的多い英語を使うのが合理的でしょうか。

今回はこの辺りで終わりとさせていただきます。
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それでは、ここまで読んで下さり、ありがとうございました

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