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札幌銭湯スタンプラリー2023のこと(その5・円山温泉)

札幌銭湯スタンプラリー2023、記念すべき5軒目は円山温泉さん。

円山地区を一言で表現するなら、かねだ。

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一言が過ぎるけれど、円山には金持ちしか住んでいない。

円山の全マダムは語尾が「ザマス」で先の尖ったメガネをかけているし、その旦那は例外なく弁護士と医者だ(ヒゲ)。一人息子は蝶ネクタイにサスペンダー&半ズボンというコーディネートで、頭はあまりよくないが、学歴を金で買うことにより薔薇色の将来が約束されている。

もちろん広い庭のある豪邸に住んでいて、デカすぎる犬を飼っている。

これが円山の全世帯だ。

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翻って私の暮らす白石区だが、荒廃し切った地獄のようなエリアだ。
晴れの日は年に2、3日しかなく、全ての住人は目が血走っているか、濁っている。前科のない人間はいない。
映画「マッドマックス」が白石区をモデルに製作されたのは有名な話だ。

そんな白石区民が円山に足を踏み入れることは許されない。憲兵に発見されたら最後、即座に射殺されるか酷い拷問を一生受け続ける羽目になる。

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そんなわけで、白石区民が円山温泉に行くのは命懸けだ。

正体を悟られないよう、金持ちっぽくシルクハットと燕尾服に身を包み暖簾をくぐった。
番台への挨拶も金持ちらしくしなくてはいけない。

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「ボンジュール!」

私の抱く金持ち像は髭男爵そのものであることが露呈した。でもバレなければオーライだ。
強気にスタンプ用紙を差し出すと、グリグリとじっくりスタンプ。

♪テレレテレレテーレ テレレテレレテーレ テレレテレレテーテテテテー チュドンチュドン(マリオでステージクリアしたときの音 花火上がったver.)

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無事、円山温泉への侵入に成功した。

お客さんはもちろん全員が金持ち、といいたいところだったが、裸なので全くわからない。

金持ちも貧乏も猫も杓子も裸。一律に裸。
だから銭湯はよい。
あの偉い発明家も凶悪な犯罪者も、みんな銭湯じゃ裸なのだ。

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金持ちを装った自分が恥ずかしい。
かねがあるとかないとか、医者だとかそうじゃないとか、飼っている犬が大きいとか小さいとか、偉いとか偉くないとか、どこに住んでいるとかいないとか、モテるとかモテないとか、剥けているとかいないとか、硬いとか柔らかいとか、少なくとも銭湯でそんなことを気にする必要はない。

円山公園駅まで雨の中を歩いた(シルクハットと燕尾服で)。

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