VS みかほ湯(あつ湯五番勝負第3戦)
初めてのみかほ湯訪問に向け、まずは住所を調べた。
「札幌市東区北17条東8丁目2の10」
へ?みかほ湯なのに美香保じゃないの?と思ったが、東京ディズニーランドは東京じゃないし、品川駅は品川区じゃない。それと同じことだ。
つーか、美香保ってどの辺だっけ?
◆
美香保がどこなのか調べた私は衝撃的な事実を知った。
なんと、美香保という住所は存在しない。
あれか?ムー大陸とかガンダーラの類なのか?そこに行けばどんな夢も叶うというのか?
もちろん、そういう類のものではない。行っても夢は叶わない。以下、Wikipediaより抜粋。
なるほど。では「美香保」という言葉はどういう経緯で生まれたのか。これもWikipediaが教えてくれた。
偉いぞ!宮村、柏野、大塚!
しかし謎はさらに深まる。なぜ「ミカオ」が「美香保」になったのか。もちろんWikipediaが解説している。
...いやいや、大塚が可哀そうすぎんだろ。「美香保」って字を当てた時点でもうゲームオーバーじゃん、大塚。「ミカオ」なら別に 「美香雄」とか「美香緒」とか、いくらでもやりようあったと思うんだよ。
つーかさ、伊香保に引っ張られたよね、絶対。そんなことで大塚の功績を霞めるなよな。
◆
大塚に感謝しながらいざ、みかほ湯。
目の前にあるバス停で下車すると、 暖色の看板が目に飛び込んできた。寒夜に鮮やかな看板のおかげで、入る前から体がポカポカしてくる。
◆
こちらの看板も暖…ん?どういうことだ?
ゆ...。
いや「ゆ...。」って。
なに?ダイイングメッセージ?かまいたちの夜?美樹本?
ダイイングメッセージではないにせよ、謎が過ぎる。
◆
文末に「...」をつけることの効果は色々だ。
そのひとつに「何か秘めたものがある」感の演出がある。
例えば高倉健のあの名台詞を文字に起こすなら
「不器用ですから...」
となるに違いない。
「...」がつくことで、このセリフが単なる謙遜ではなく、秘めた何かがあると感じられないだろうか。
逆に
「不器用ですから!」
だと台無しだ。これでは開き直ったバカである。
武田鉄矢のあの名台詞を文字に起こすなら
「僕は死にましぇん!」
だ。これがもし 「僕は死にましぇん....」 だとしたらどうだろうか。たぶん、武田はまもなく死ぬ。
ゆ…。果たして、みかほ湯は何を秘めているのか。
◆
初めてのみかほ湯。その印象を一言でいうなら「静か」だった。たまたまお客さんの少ない時間帯だったことを差し引いても、銭湯で発生しうる最低限の音しか響いていなかった。
身を清めた。さてどうしようか。 いつものように薬湯やサウナでウォーミングアップをこなし、準備を整えてから「あつ湯」へ挑もうか。
しかし、私はウォーミングアップなしで「あつ湯」へ向かった。なぜかは自分でもわからない。啓示としかいいようがない。
静かな浴場で小さく「よし」とつぶやき、右足を浸けた。ポチャンという音が響く。「閑さや あつ湯に飛び込む 俺の音」だ。混ざっちゃってるし字余りだけど、この際どうでもよい。
あれ? 全然いけるぞ?
エイヤッと一気に肩まで沈めたが、屁のツッパリにもならない。
いや、やっぱ熱いかも。身体もだんだん赤くなってきている。熱いって。なんだよ、これ。「ジワる」ってこれのこと?いけると思わせといてこれはどういうこと?
◆
銭湯にしては珍しく、浴場の片隅に一脚のベンチがあった。腰を下ろした私は「あしたのジョー」の最終回といった風体だったろう。身体こそ真っ赤だったが、完全にやられた。
油断させたみかほ湯がすごいのか、油断した私が愚かなのか。
両方とも正しいような気も、間違っているような気もする。
◆
触れた瞬間に「あつっっっ!無理無理無理!」という「あつ湯」も好きだが、みかほ湯で味わった「あれ?いける?」からの「やっぱ熱い!」も好きだ。
二面性の魅力とでもいうべきか。みかほ湯はペルソナ風呂なのだ。
「地味で大人しいあの娘が実は…」みたいなことである。
「ゆ…。」
その意味が、秘めたものが、わかってしまったかもしれない。
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