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ブリジストンの中国撤退、理由とベトナムの立場

ブリジストンの撤退の判断の理由は?という記事や動画が1年たった今もたくさん出ていますが、理由は貨物輸送の低下だそうです。
中国不動産バブルの崩壊とそれに伴う大手の破綻のニュースをよく目にしますが、不動産バブルが弾ける要因についてはあまり詳しく語られないのでベトナムへの関連も含め調べてみました。

撤退理由は?

  • 中国の産業が育ち、安いタイヤ国産製品ががある

  • 運送需要が減り、毎年のようにタイヤを交換する運送業が低迷

  • 品質ではブリジストンの優位があるが不況で安さに流れる

  • 中国の成長期が終わり、インド以外は高齢化で需要の増加も見込めない

ということで、ブリジストンは長期の視野で撤退したということだそうです。

中国国内の運送需要は2016年をピークに下がり、日本の1年分くらいは余裕で消失したということです。人口・国が大きいので変化も巨大になるんですね。


ブリジストン工場、ベトナムにもあります

ブリジストンは世界中に生産拠点があり、ベトナムのハイフォンにも巨大な工場があります。ヨーロッパだとポーランドとか有名で、為替の弱い国が開国?されるやいなや大きな工場を作りタイヤをモリモリ生産販売してきました。 そして、一説にはベトナムの生産が一番利益率が高いのだとか。
中国の工場の代わりにバンバン生産していただきたいな!と思います。

ポートの眼の前の一等地に巨大なブリジストン工場


トランプ政権で変わった中国経済

物流のピークが2016年というのは原因が割とはっきりしていそうです。脱中国・アメリカ・ファーストを公約にしてトランプさんが当選したのは2017年1月です。
そこからは法律が制定されたり、脱中国の費用補償を国が行ったり(日本も追従して行っています)、関税をかけたりして中国からの離脱が進むなかコロナで生産・物流が停止・混乱しました。


中国企業も脱中国

人件費が高くなり競争力が低下したり米国などの関税を回避するために、中国はベトナム経由の対米輸出を拡大するなどして、トランプ前から対応をしていたそうです。

ベトナムの製造業の輸出のうち国内で生産 された付加価値は2015年時点で51.8%を占め るにとどまり、残りは外国由来の付加価値で ある(図表26)。中国(81.3%)、韓国(64.5%)、 台湾(62.4%)との差は大きく、製造業の輸 入依存度が高いといえる。

サプライチェーンの脱「中国依存」はどこまで進んだか  より


日本が中国やベトナムに対して行ったことを中国も始めたということですが、人口・会社数が多く国内産業が収縮すると大きなインパクトになるため価格競争、凄惨な労働環境、消費減、、、、と連鎖がおきて不動産信用不安まで到達したのが最近の現状なのでしょう。

次は半導体

昨年から今年にかけて、アメリカの要人や大企業がベトナムに訪問し、半導体の生産をベトナムに移す計画が進んでいます。ハノイやダナンに専門家養成のための研究所やプラントの開発のニュースが、今年に入ってから特に多くなっています。

ベトナムは人件費が安く土地や水資源がありますが、人的資源は最低ランクで専門家とその養成所がないため、米国や日本・韓国、そして中国が人材育成をして工場を建て…ということが工業移転で行われてきましたが、そのほとんどは組立工場です。部品を作る地場産業も当然無いですし、過去には世界をリードしてきた文明国でもある中国のようになるには未だまだかなりの時間がかかりそうです。


https://vietnamnews.vn/society/1650251/da-nang-amps-up-investments-for-education-training-infrastructure-in-semiconductor-industry.html

コロナ時に中国依存が高すぎる半導体で生産リスクが露呈、対応するために日本やベトナムで製造を増やそう、ということでベトナム政府の専門家養成の掛け声が毎日のように報道されていますが、流石に学校や学生からは不審や疑問の超えが上がっているようです。

  • ベトナムには技術者は少なく、教育も大変

  • 高い技術でも給与はベトナム水準なので台湾で働く方が良い

  • そもそも5万人が必要、養成するって数値の根拠は?

など。。。まあそうなりますよね。(笑


物流にも変化が。。。

ものを生産すれば物流も必要になります。ベトナムは交通インフラも脆弱で、南北鉄道はソビエト・中国由来の旧式なものが南北に1本、それ以外はハノイは中国、ホーチミン市には日本が今まさに建設をし現地の人のトレーニングをしているような状態です。

また高速道路は日本のMEXCOなど2社が参入して建設をしていますが、建設中に資材がバンバン盗まれたり水害が起きたりと、予算がいくらあっても(まあODAでしょうが)足りないようです。

そんな中、海外貿易のためにベトナム政府は港湾開発に力を入れています。

「北部の港湾都市ハイフォンは、2021年から2030年までの市の基本計画と2050年までのビジョンに基づき、2030年までに東南アジア有数の近代的な海洋経済センターになることを計画している。」

南部のカントーはマレーシアの出資も

航空も

航空分野ではベトナムを空路輸送のハブにする条件となるサプライチェーンの建設がダナンで始まります。ボーイング社の部品を生産する工場で、合わせてベトナムはボーイング機50機の購入を決めアメリカに寄り添う姿勢が強まっているようです。

「ダナンハイテクパークおよび工業団地の当局は、ダナンハイテクパークにKP VINA航空部品工場を建設するため、韓国に本拠を置くKP Aero Industries Co., Ltd.に投資登録証明書を付与しました。総投資額は2000万ドル。」


中国経済は2024年に失速?

ウォール・ストリート・ジャーナルの取材では(ベトナムは統計が信用できない国なのであまり数値の説明は無いものの)

「少なくとも今のところ、中国の不動産市場は依然として深刻な問題に陥っている。ゴールドマン・サックスによると、12月の加重平均不動産価格は季節調整済み年率ベースで2.4%下落し、11月の2倍のペースで下落した。新築住宅床面積販売と不動産投資は秋に若干改善した後、12月には再び前年同月比で減少幅が拡大した。労働市場は依然として不安定なようです。」

とレポートしています。

https://www.wsj.com/economy/central-banking/chinas-economy-limps-into-2024-718d9a4a

不良債権問題や実体経済の成長度鈍化で数値は下がっているのでしょうが、生産拠点をベトナムなど海外に移して最適化している最中でもあり移してる主役が少子高齢化が進む中国みたいなところもあるので単純ではなさそうです。ベトナムには追い風ですが、今後もしばらくは世界の工場である中国の大きすぎる存在は簡単に変わらない気がします。


参考:

サプライチェーンの脱「中国依存」はどこまで進んだか
 ─米中対立と新型コロナウイルス感染拡大のインパクト─
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/rim/pdf/12621.pdf


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