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ベトナム車検場問題で大混乱

毎日のようにベトナムのニュースに登場する車検場の話、ご存知でしょうか。 外国人が割とよく見ているVN-EXPRESSなどカジュアル系のニュースサイトでは露出少なめですが,昨年暮れあたりから問題が膨らみ、最近は連日報道されています。
現在、ハノイやHCMCで機能している車検場は全体の3−4割、車検需要の20%しか処理出来ないと言われており周囲数kmに及ぶ大渋滞車検切れの車が溢れ大変な問題となっています。


発端:汚職撲滅キャンペーン

こちらは1月17日のニュースで車の登録の贈収賄でベトナム運輸省登録局の元局長が逮捕されました。

2014 年から 2021 年 8 月までの期間に、ベトナム登録簿の局長として、フィギュア氏は、直接、および検査部門の責任者代理である容疑者 Tran Anh Quan を通じて、部門に属する自動車所定の条件をまだ満たしていない登録センターの運営を許可するために賄賂を受け取とった

これまでは自動車の車検でお金を払えばスタンプ押してもらえる、ということで特に大都市部の車検場は一斉検挙をうけ、車検場職員が次々に逮捕されましたが、その車検場を許可している大元が賄賂をもらって登録センターを許可していたということが発覚。(多分当たり前だったのでしょうが)

こうしたことは全国で行われており、長官が逮捕されたことで組織的・長期的に行われていたことが伺えます。個別の検査センターの逮捕劇は昨年中から旧正月まで続き、最後はこんな大きな決着となりました。

車検場での不正は 
1) 検査をせずにお金で解決していた
2) そもそも検査職員が定数いなくて素人を雇って適当にやっていた
という2つの問題がある事があかるみにでました。まあベトナムの人にとっては当たり前のことだったに違いないのですが。

専門家が居ない

問題は賄賂をもらったことのように見えますが、問題の本質は「プロが居ない」ことのようです。ベトナムの車検場はほとんどが民営で政府に書類などを提出しチェックを受けて営業しているはずです。
しかしベトナムは後進国でつい最近まで自転車を作るのも大変だった国で専門家が圧倒的にいません。
今でこそモータリゼーション爆進中ですが、産業は外国企業によるものでベトナム人は組み立てをしているのがほとんど。バイクはホンダ、工作機械や部品は殆ど輸入です。

そんな状態をわかって民間に丸投げしていた政府も「やってる感」だけの車検制度であったと思います。

取り締まる側の検査員がプロでないので内容はどうでもよく、そもそも居もしない専門家を居ることにして営業できるのも不正の匂いがします。
お金でOKということに誰も問題意識を抱けないのは「しょうがない」というのが前提ありそうです。

車検場問題の拡大までの流れ

共産党の不正撲滅キャンペーンが始まったのは知る限り、コロナの終りが見えた昨年初頭から。大きく

  • コロナ検査キット汚職(保健省)

  • コロナ隔離中の帰国便の贈賄(外務省)

  • 証券取引不正(国家証券委員会、ホーチミン証券取引所と不動産業)

  • 車検場問題 (運輸省登録局)

で大臣級と上級役人、共産党委員トップ、企業のトップなどベトナムの大物が100人単位で大量に逮捕され株価は40%も下落。最終的には国のトップである国家主席(英語だとPresident/大統領)が辞任・引退に追い込まれました。

*国家証券委員会の党委員会、ホーチミン市証券取引所 (HOSE)、および証券取引所、ハノイ (HNX)、ベトナム証券預託機関 (VSD)などで処分も

そして車場問題炎上へ🔥

大量検挙をして共産党トップのパワーを存分に見せワルものを一掃したまでは良かったのですが、逮捕したあとの人や組織の穴がうまりません。そもそも元から居ないのをいるフリして回してたのも禁止され詰んだ形?
毎日伸び続ける車検場の行列待ちと未検査の車たち。先月まではテト休暇がありあまり炎上している雰囲気ではなかったのですが、今月に入り市中までトラックなどの車検街行列があふれると、ロードサイドの商店などができなくなったり市中の人々の怒りが高まり、政府が対応に追われ始めたのが現在の状態と思います。

何もしなくても混乱しているのに…

ベトナムらしい対応策

理由は「専門家が居ないから」

賄賂は悪い!肥え太った悪人を逮捕せよ!! は良いのですが原因のなっているのはモラルが低いことだけでなく、真面目に営業しようにも専門家が居ない前提があったのです。
もっと言えば、賄賂が多いのは警察官など取り締まる側も「専門家」でなくモラルやプロ意識が低いからで、国のベースごと専門家が居ない底抜け状態なのが今回わかりやすくなった形ですが、急にプロが量産されるはずもなく困った政府が打ち出したのが

「車検いらなくね?」

火の粉を払うべくニュースは以下のような変遷をたどっています。

  • 新車の車検って新しいから必要ないのでは?

  • 車検の回数が多すぎる、先進国はもっとすくない!

  • とりあえず無理なら車検6ヶ月伸ばしてもOK

先週くらいからニュース(提灯でしょうけど)で流れているのはこんな感じです。なんともベトナムらしい。。。

(なんとなく印象操作な雰囲気が…)


自家用車の車検サイクルを6ヶ月延長する条例が施行

※そして新車の車検チェックは無くなったとのことです。まあボロボロのヤバいのとか、大八車が普通に走っているので過剰といえば過剰な検査ではあります。

外を見れば「まあたしかにね」っていう雰囲気ではあります

車検技師ってそんなに難しいか?

個人的なお話でアレですが日本にいるときには事前に整備をした上でユーザー車検を使っています。(レースをしていたこともあり、バイクは自分である程度整備ができます。)
で、思うのですが日本の車検場でも大したチェックはしないのです。見ていると検査機器の結果を見てチェックをいれるとか、車体の下から見て損傷や油染みがないかなどを目視する「誰でも出来るよな」という作業が殆ど(全部w)

それでもベトナムの現実としては、この専門性と検査官としてモラルを併せ持つ人が逆さにしても出てこないくらい足りない現実があるのは事実としてあるようです。

日本の研修制度は一部の非常に悪い待遇の人だけを取り上げて叩かれていますが、ベトナム側の需要が大きいことも原因と言わざるを得ません。
ベトナムには大小様々なことで専門性(特に知識)がある人が圧倒的に足りません。料理一つとってもまな板を使わない、包丁を研がない、そもそも包丁とは?ということで日本人の当たり前とは全く違う現実があるのです。

ベトナム政府としては是非ともお願いしたい、再教育たのんます、という現実があっての制度なのでしょう。

他にも不正の話はベトナムでよく聞くのですが、機会を見て「なぜベトナムに大金持ちがたくさんいるのか」1つのからくりを紹介したいと思います。


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