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ウェルボディ教育の実施[2024.6.24]

順天堂大学国際教養学部と関東国際高等学校の高大連携授業にて、本協議会代表幹事の田村好史とウェルボディ教育分科会幹事の吉澤裕世がウェルボディに関する授業を実施しました。

2024年6月24日に実施された高大連携授業では、「自分らしく、健康的な身体を保つために」というテーマを掲げ、男女80名以上の高校生と、大学生、大学院生が授業に参加しました。

授業では「ウェルボディとは何か?」を高校生と大学生が積極的に議論し合う時間が設けられ、健康に関する知識のインプットだけでなく、社会を俯瞰し議論を通じてコミュニケーション能力を育む授業となりました。

協議会代表幹事の田村好史

1. 自分にとっての「健康/ウェルボディ」を考える。

最初に、参加者はチームに分かれ、「自分にとって健康とはなにか?」を考え、メモに書き出し、チーム内で発表を行いました。

チームに分かれ、意見を出し合うワークを行いました。

そこで上がってきたキーワードには
・病気になっていないこと。
・怪我をしていないこと。
・食欲があって、8時間睡眠をきちんと取っていること。
・いつも元気で明るくいられること。
・勉強や趣味がしっかりできる状態であること。

など、様々な意見が上がりました。
チーム内ではそれぞれの意見に耳を傾け、似ている考えを分類したり、他に発見が無いかをチーム内で議論しました。

2. 日本における健康課題を知る

チーム内で意見交換をした後は、講義形式で今の日本における健康課題について学習しました。健康を「身体的健康」「精神的健康」「社会的健康」の3つの側面から捉え、それらにまつわる課題のポイントを解説しました。

身体的健康の課題の一つに「痩せた女性の割合が先進国の中で高い」という点があげられ、さらに「痩せた女性は糖尿病になりやすい」というリスクを紹介しました。

痩せた女性の糖尿病リスクについて

痩せた若年女性は耐糖能異常の割合が高く、これは痩せた女性の筋肉の「量」と「質」の低下が原因であることが分かってきました。「食べない」「運動しない」「結果痩せている」というエネルギー低回転の若年女性の身体的健康課題を上げた一方で、男性は肥満が進んでいるというデータも紹介しました。

女性は痩せてきている一方で男性は肥満が進み、この背景には「普通に食べて」「運動しない」「結果太っていく」という男性が増加傾向にあるということを伝えました。

田村「肥満男性が増加したことによって"メタボ"という言葉が一気に広がり”痩せたほうがいい”という情報が広く知られた結果、痩せる必要のない女性まで痩せた方が良いのでは、という思考につながったのでは、と考えられます。」

肥満と痩せの双方で病気になりやすいことに共通しているのは、運動していないことです。そのため、身体的にwellな状態でいるために、身体を動かし、筋肉を使っていることがとても重要であり、「食べて」「運動して」、ウェルボディになることの重要性を学生たちに伝えました。

3. 精神的・社会的な健康について知る

次に、そもそもなぜ「痩せたい気持ちになるのか」について授業を進めました。若年女性が痩せたい気持ちになる理由の1つとして「身近な人からのネガティブ発言」を受けたというものあるというデータを共有しました。

さらに2008年4月から開始された"メタボ健診"によって、トクホのお茶などが発売され"メタボの意識"が高まったこともあげられます。痩せる必要のないかもしれない女性も巻き込み、「痩せたら健康になれる」というムーブメントが社会に広がっていったことが紹介されました。

痩せたい気持ちを過剰に作り出してしまう社会にも原因があり、他にも「身長ー体重=120が理想体重」や「インフルエンサーの体重は160cmで45kg」などの若年女性に向けた情報がSNSで広がっている状態もあることが述べられ、痩せたい気持ちを過剰に作り出してしまう社会にも原因があるのではないか、という問いかけがなされました。

4. アンコンシャスバイアスへの気づきとウェルボディ

「痩せたい気持ち」を生み出す社会の中で、多くのアンコンシャスバイアスが存在していることも、講義の中で示唆しました。

例としてバービー人形をあげ、画一的な女性の人形だったバービーも体型・人種・セクシュアリティ・身体的特徴など様々な人形が発売されるようになったこと、そもそも「生まれつきの体型」の要因も多くあることなど、体型の多様性についての議論を促しました。

田村「『みんな違って、みんないい』という言葉がありますが、日本では外国人が少ない、遺伝的に似ている人が多いなど、『みんな似通っていることが普通』というアンコンシャスバイアスが生じやすい国だと思います。ですので、それは本当に"普通"ですか?思い込んでいるだけじゃないのですか?とみなさんには一旦考えていただきたいと思います。」

体型の多様性の理解を行い、誰もが自分らしく、心地よくあり続けられる健康な身体=ウェルボディを自らの意志で選択できる社会を目指していくために、何をしていけばよいのか?学生同士の議論の場を設けました。

5. 自分にとってのウェルボディってなんだろう?

講義を聞いた後、再度グループ内で
①講義で気になった情報
②自分にとってウェルボディとはなにか?
③「ウェルボディ」でいるためにプラスになること、マイナスになることは 何か?
の3つについて考え、発表を行いました。

ウェルボディとはなにか?という問いに対して高校生の発表からは
・”かわいい”の基準を自分で決められる人。
・しっかり食べて、しっかり運動できている人のこと。
・数字ではなく、自分が納得できる体型でいられること。
・幸せだと感じていること。
・身体だけじゃなく、気持ちも元気でいろんなことを楽しめる状態であること。

など様々な意見が出てきました。ウェルボディの講義を経て、生活習慣と結びついた身体的な健康だけでなく、精神的・社会的な健康への気付きがあったことが印象的でした。

グループごとでの発表も行いました

また、ウェルボディでいるために
・SNSの情報が正しいことなのか疑ってみる。
・偏見を持たないように、色々な人がいることを知る。
・相手と自分が違うことが当たり前という意識を持つ。人と比べない。

など、「一人ひとりが自分らしくあるために」何をしていけばいいのか、議論を深めることができました。

田村「自分でも自覚しないうちに選択してしまう情報や振る舞いがあります。まだまだ思いこみ、誤解が沢山あることを知って、ぜひ大学生になっても、大人になっても学び、考え続けてほしいと思います。」

今回のウェルボディに関する授業では知識を基盤として、自分の考えをアウトプットし、他人の意見を聞き、議論するという、高校生にとってチャレンジに溢れた時間になりました。