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境界を越えるバス【閑話】/バスの系統番号記号

長編ばかりを書き続けると結構しんどいので、今回はバスの系統番号についての解説です。そんなに長くないハズ(??)。

系統番号記号?

 路線バスは、行先を表示することを法律で義務付けられている。しかし、現実には同じ行先でも経由違いが色々あったりとか、違う行先でも長い区間同じ方向へ走るものがあったりするので、行先だけで自分が目的とするところへ行くバスなのかどうか、判断することが難しい。行先表示が大きくなった昨今ではタイトル画像に使った例のように途中経由地を行先と併せて表示する例もみられるが、1~2箇所が限度であり、それ以上増やすと見にくくなるという欠点がある。
 そこで、行先と同時に番号を表示し、似たような方向へ行くのは近い番号とすることで、番号から自分が乗って良いバスかどうかを判断できるようにしてある例は、割と全国津々浦々にある。同じ行先の経由違いとか途中折り返しとかは下一桁の違いで表すようにしてあることが多い。
 ただし、この番号表示は法律で定められているわけではなく、バス事業者が独自に割り振っているので、全国で統一されたルールは存在しない。さらに言うと、事業者毎に番号を割り振っているので、同じ地域に違うバス会社があった場合、同じエリアに同じ番号だけど違う路線ができてしまうことも少なからずある。多くの場合、同じ地域のバス事業者の間で話し合って調整して、番号がダブらないようにしているが、その場合でも調整ミス?漏れ?が稀にある。
 余談であるが、この番号は「数字」である必要はなく、「アルファベット」や「色」、特有の「愛称」をつけて呼ぶことも少なからずある。ブルーやオレンジなどの色で系統を表す例はコミュニティバスなどによくみられる。
 例えば箱根地区の路線バスは、会社を問わず系統ごとにアルファベットの記号を付けている。例として、小田原駅~箱根湯本駅~仙石~桃源台と走る系統には「T」が、経路違いともいえる小田原駅~箱根湯本駅~早雲山(一部大涌谷)~湖尻~箱根園と走る系統には「J」が、系統記号として与えられている。これらのアルファベットの後には数字はつかない。
 というわけで、この記事の中では、数字以外もあるということを明示するため「系統番号記号」と呼ぶことにする(が、一般的な呼び方ではないと思われる…)。

漢字+数字の系統番号記号

発祥

 さて、東京地区のように、路線バス網が広い範囲にわたって繋がってしまっている場合、番号だけでは収集が付かなくなる。特に、京浜地区の場合、公営事業者だけでも、東京都バス/川崎市バス/横浜市バスの路線網が存在し、民営バスの路線なども介して文字通り網の目のように繋がってしまっているため、全て異なる番号にしようとすると4桁以上の数字を使う必要がでてくる。
 そこで、とりわけバス路線が多かった東京都交通局を中心に、東京バス協会が系統番号記号を「漢字+2ケタの数字」で表す方式を、1972(S47)年、都電が現在の荒川線を残して全廃された際に導入した。
 この場合、「漢字」の部分には、その路線の端点を含む経由する主要地を用いることで、おおまかなエリア分けを行った。多くは路線の端点にある鉄道駅の頭文字(例:池袋駅→「池」渋谷駅→「渋」)を用いた。具体的な例を挙げると、池86池袋から山手通りを渋谷まで走る系統、渋66渋谷から山手通り・甲州街道・環状7号・青梅街道を通り阿佐ヶ谷まで走る系統である。両端共に鉄道駅の場合にどちらの漢字を使うかは、ケースバイケースで決められているようである。国鉄→JRの駅や都心に近い駅を優先させる傾向にあるようであるが、必ずしもそうではないケースもある。
 「新」の文字は「新〇〇」という駅が多数あるためか、新宿駅は「宿」新橋駅は「橋」になっている。ちなみに新小岩駅は「新小」と、設定当初から漢字2文字のイレギュラーである。目白と目黒は、互いに譲り合った?ためか、各々「白」「黒」となっており「目」は使用されていないようである(見落としている?)。「亀」は亀戸駅が使ったので、亀有駅は「有」、その余波?で有楽町駅は「楽」(現在は不使用)となっているとかのフェイントは多々ある。「高」は高円寺駅が元祖であるが、都バスが高円寺駅から撤退した後、高田馬場駅発着の路線ができたときに、こちらを「高」としたが、高円寺駅へ乗り入れる民営バスは「高」を使用し続けている。この中の一社の関東バスは高田馬場駅にも乗り入れているが、高田馬場駅発着の路線は経由地の百人町→「百」を用いている。
 ちなみに、タイトル画像で使った宿51は、新宿駅西口から新宿新都心・代々木公園の西側を回って渋谷駅まで行く実在の系統である。タイトル画像では、LEDになる前の都バスの行先表示風にしてみたが、この系統は代々京王グループが担当しており、東京都交通局が担当した期間は無い。系統番号記号が深緑/経由地が黒/行先が濃紺というフォーマットは東京都交通局独自の配色で、京王グループはフォーマットもフォントも異なるため、タイトル画像の雰囲気の表示が見られた時期は無い。
 「漢字+2ケタ数字」の系統番号記号は、東京都交通局とそこに繋がっている東京都内の民営バス路線からスタートした。なので、東京23区内から遠く離れているものの、当時から都バスの路線があった青梅駅→「梅」も最初期から用意されている。ただし、現在青梅駅に乗り入れる西東京バスは「青」を使用している。また、現代では都バスの乗り入れが無くなっている立川駅→「立」も、この方式が導入された当時は路線があったため、最初期から用意されていた。
 中には駅名・地名でない漢字が使われている例もあるが、沿線を調べれば語源が判るものが多い。主なものでは通学輸送が主体の路線で短距離のもの(なので他の都バス路線より運賃が安いことが多い)には「学」が、国立劇場観劇者輸送の臨時路線には「劇」が使われていた(が、こちらは消滅か?)。
 よく見かけるが語源が想像つきにくいのは「都」で、こちらは1983年度に制定された「都市新バスシステム」を導入した路線につけられたもので、2022年現在8路線が存在する。詳細についてはWikipediaに詳しい記事があるので参照されたい。当時の最新技術であったバスロケーションシステムやまだ数が少なかった冷房車を導入、行先表示にはカラー方向幕を使い、そしてなにより頻発運転で利便性を上げた路線である。その第1号は、渋谷駅~六本木~新橋駅を結ぶ「都01」系統であり、現在も都バスのエース路線として役割を果たしている。

周辺への伝搬

 書いているうちに長くなりすぎたので、簡潔にまとめると、2022年の時点で、漢字+数字による系統番号記号表示は、西南部は神奈川県から県境を越え静岡県下のJR東海道線沼津駅→「沼」/伊豆箱根鉄道駿豆線修善寺駅→「修」、北西はJR中央本線藤野駅→「野」/青梅線奥多摩駅→「奥」、北は埼玉県内のJR八高線・東武東上線小川町→「小」/JR高崎線上尾→「尾」/JR宇都宮線蓮田→「蓮」/東武伊勢崎線越谷→「越」、東端は、成田線我孫子支線の布佐駅→「布」/京成本線志津駅→「志津」/JR総武本線都賀駅→「つ」に使用例がみられる。

 ただし、2018年に国土交通省自動車局が定めた『乗合バスの運行系統のナンバリング等に関するガイドライン』に準拠した、アルファベット+数字を用いる方式も、漢字+数字を用いていた地域の周辺に広がり始めている。静岡県方面では東海バスがこの方式を採用(ただし、頭文字は営業所名を示す)しており、沼津駅では「N」(沼津営業所)/熱海駅では「A」(熱海営業所)がみられる。両駅には漢字+数字方式を採用している伊豆箱根バスも乗り入れているが、番号の部分は重ならないように調整されている。
 埼玉県方面では高崎線本庄駅→「HJ」東鷲宮駅→「HW」幸手駅「ST」が記号を用いる駅としては北限となっている。
 ただし、熊谷駅発着の「KM61~63」系統は利根川を越えて群馬県の東武伊勢崎線太田駅・小泉線西小泉駅まで乗り入れている。
 利根川北岸にある、茨城県猿島郡境町の境車庫へは埼玉県御稲見埼玉群宮代町にある東武動物公園駅からの「TD01」系統が乗り入れている。この路線は埼玉県~千葉県~茨城県と現代では珍しい3県にまたがる路線である。境車庫には同じ茨城県内の古河駅からの路線があり「KG01」系統を名乗っているが茨城城県下のみを走る路線で唯一アルファベット+数字による路線番号記号を取り入れた路線になっている。
 千葉県のうち、常磐線沿線方面は、事業者によって漢字+数字方式と、アルファベット+数字方式が混在しているが、上述した漢字+数字を用いる布佐駅以東の路線にアルファベット+数字の系統記号番号がついたものはない。千葉市方面の東端はJR総武本線物井駅→「M」になっている。

遠隔地?への伝搬

 アルファベット+数字の方式は非漢字文化圏の外国人の方々にも判り易いことから、今後、さらに広がっていく可能性がある。
 一方、漢字+数字の方式は、結果として東京・神奈川・埼玉・千葉エリア以外で大々的に普及したのは、名古屋市交通局のみである。
 ただし番号のつけ方の基準?感覚?が東京地区とは若干異なり、東京地区は「番号がメインで、漢字は補助」的な使い方であったのに対し、名古屋地区は逆になっている。すなわち、
幹線系統である場合は、最初に「幹」の文字が付く。
・次にターミナル(主に鉄道駅)の名称が漢字1~2文字で続く。
・その後に、幹線系統は1桁数字/一般系統は11番から始まる2桁数字をつける。
という方式になっている。例えば、名古屋駅から名古屋港方面にあるあおなみ線野跡駅を結ぶ幹線系統は「幹名駅2」系統、地下鉄栄駅から若宮大通(100m道路)・安田通を通って名古屋大学まで行く系統は「栄17」系統を名乗る(余談だが、後者には経由違いの「栄16」系統もある)。このため、数字の部分は一般系統でも大半が10番代で20番代がわずかにみられるが、30番以降の数字は全く使われていない
 なお、名古屋市には現代のBRT=Bus Rapid Transit システムの先駆けともいえる「基幹バス」という専用レーンを主に走行する系統があり、こちらは、各々「基幹1」「基幹2」という系統番号記号が与えられている。
 また、名古屋市内には、名古屋市交通局の他に、名鉄バスと三重交通が路線を持っているが、こちらは数字のみの系統番号を採用している。番号自体はダブらないように工夫されている。上記の「基幹2」系統は、名古屋市交通局と名鉄バスの相互乗り入れ路線であるが、名鉄バスは名古屋市外のかなり遠い所まで行くこともあり、独自の系統番号(数字のみ)を与えられている。

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