❻親の手伝いと校庭で遊ぶことは関係がない

 最近のタカオは、この「遊び」に夢中だった。これが今、彼にとっての最もスペシャルな趣味と言っていいだろう。
 マキとは20代前半の頃、合コンで知り合った。つまらない人間のつまらない話ばかりが続く飲み会に辟易し、タカオは店の前で煙草を吸っていた。そこを、同じく抜け出そうと赤いハイヒールを履いている途中のマキと目が合った。彼女は右手の人差し指を口の前に立て、微笑んだ。魅力的だと思った。そこから2人はポツリポツリとお互いのことを話し始めた。合コンの間は離れた席だったため、存在は認識していたが会話は交わさなかった。彼女は友達の誘いで気が乗らないまま参加していたらしい。その友達が近くの男といい感じになったため「もういいだろう」と判断し、抜け出してきたのだ。
 自分だけ吸っていたからという理由でもないが、ハイライトをマキに一本渡した。吸ったことがあるのか訊いたら「親と友達には内緒で少しだけ」と微笑んだ顔が綺麗だった。
 そこからマキと付き合い始め、タカオとしてはこれといったアクシデントもなく結婚し、8年前にかなえをもうけた。なんの波風も立っていない、当人たちにとっても周りから見ても順調な結婚生活である。
 しかし、出会ってしまった。別に家族でいる時は思い出さない。そういうものとは全く関係がない。だから、罪悪感がない。ただ、この間家族でいるときに、浮気相手から電話があったときは少し焦った。あちらが会う日にちを間違えていたらしい。
 彼は、これから会う浮気相手とただ一緒に「遊ぶ」のだ。内容に関する予定は既に立てている。あちらはいつもそれに従ってくれる。少量の額ではあるが、現金を渡している。そんなものを払わなくてもあちらは絶対誰にも言わないだろうが、念のためである。最早、これはWIN-WINの関係であると、彼は認識している。

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