AIアートはイラストレーターになれない
まず、学習型AIアートがイラストレーターの仕事を奪う日は絶対に来ません。
そもそもイラストレーターの仕事というのは絵を描く事ではなく絵の権利で金銭を得るものがメインなので、著作権を保持出来ない絵を業務に使うとしたらAIアートがフリー素材だと勘違いしている人だけです。
※フリー素材と呼ばれているものは著作者が使用を許諾しているものであり、所有者や使用者が著作権を主張できない画像とは意味が全く異なります。
AIアートを更に素材にして絵を描き足したらその人の著作物になるかという議論にも落とし穴があり、その場合その作者は該当のAIアートがどの作品を素材に作られていて、その作者の権利を侵害していないか確認の上で自らの作品であると主張出来るほどの創作を行う必要があります。
これはAIの開発側からも度々警告が出ているので、知らなかった場合は規約やインタビューを漁ったほうが良いです。
(学習素材の再現で著作権の侵害が成立する可能性はあり、また成立した場合はユーザーではなくAI開発側が訴えられると思うともミッドジャーニーの開発さんなどが語っていて、自分もその可能性が高いと思いますが、それはその著作侵害物を利用したせいで発生するトラブルからまでも逐一個別に守ってくれるという意味ではありません)
他にも有名人の顔を再現出来てしまい、それがその人の権利を侵害していたら起訴リスクはあるというのも各国各ソフト全体的な共通認識です。
それと同じく、特定の有料フォントや画家のサインなど一発アウトの致命的なものを再現していたり、特定の現役作家の名前をキーワードにしてその人の模倣作を再現しそれで利益を得た場合、その行為そのものがフェアユースの範疇を超えた証拠付きの問題行為で、詐欺や業務妨害といった普通の犯罪の可能性が出てきます。
机上で法を語る時によく陥りがちな勘違いなのですが、色々理論武装して○○の法律ではセーフだからやってOKみたいな主張は大体別の法を見落としています。
そもそも被害を受けた人を救う為に様々な法律で守っているのであって、加害者がどの法か選ぶものでは無いのです。
仮にAIへの法整備が追いついていない状況であっても、業務への妨害行為が明白ならそれは単純に業務妨害罪の可能性が高いです。
要は、AIアートを素材にする場合も、自分で素材元を見分ける程度の知識を持つか、一から自分で描いたと主張できるくらいの加工加筆を全体に行う必要があります。
アイディア出しには使えるかもみたいな話を見かけたことがあると思いますが、あれはつまりアイディア出し位にしか使えないという意味です。
一時的にミッドジャーニーがかなり評価されたのは元の絵や写真に見覚えが無い人が多かったからで、学習元の素材にしている他人の著作物を知っている人から見ると細部が雑だけど見栄えは良い自動コラージュです。
そして、あの学習型AIには未来がありません。
なぜならば、あれが完成すると素材元を細部まで再現してしまうため、むしろ今よりもシンプルに重大なパクリになってしまうのです。
わかるでしょうか。今、学習型AIアートがAIアートとして成り立っているのは細部が雑で下手だからです。
実際AIアートかどうかの判別を皆そこでしているはずです。完成したらAIアートはAIアートでなくなってしまうのです。
これは人間も同じで、見たものをほぼ完全に再現出来る力を持つ方の作品は、それをどの道具で行ったかや、モチーフが何なのかといった作者以外の部分だけがクローズアップされるようになってしまいます。
それでも人間というハードウェアで行っている限りは凄さが讃えられますが、元々完全なコピーペーストが出来る電脳内でAIが独自にコピーを生み出しても、讃える以前に見分けがつかないです。
実は、特定の作家を模倣できると豪語していたAIアートソフトが問題になり、SNSのアカウントが凍結されるという出来事が既にありました。ミッドジャーニーと違い有名人のエロコラージュや犯罪者にしたてるフェイクコラージュも規制されていなかったので、学習型の問題が一気に明るみに出た感じです。
私は人工知能を持つロボが描く絵とか生み出す音楽に非常にロマンを感じるタイプなのですが、そのロマンはもう砕かれた気がします。
せめて光や色の理論、レンズ知識などからAIが自ら生み出す方向だったならとも思いましたが、これ既にある3DCG技術ですもんね。
むしろAIによるランダム生成を組み合わせたタイプの3DCGこそが完成された本当のAIアートで、自分が知らなかっただけでとっくに実用レベルにまで達していてゲームなどで触れていたのかも知れません…。