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『三体Ⅲ』死神永生の読書感想文。ネタバレに注意して書いてみた

『三体Ⅲ』死神永生。いや~凄かったですね。
正直言って『三体Ⅱ』黒暗森林が完璧な終わり方だったんで、どうやって話をつなげるのか不安でした。

だってそうでしょう、これまでも世界中で傑作が継続されて成功した例は少ないです。

なので…

やらなきゃよかった。『三体Ⅱ』黒暗森林で終わっていれば…
そんなパターンにならないか心配で心配で。

しかし、いい意味で期待を裏切ってくれました。

私の、いや世界中の不安をよそに『三体Ⅲ』死神永生は最高の作品となったんです。

もちろん、多少はやらなきゃよかったと感じる部分もありましたが『三体』『三体Ⅱ』とは一味も二味も違ったいました。いや、あまりにも壮大すぎる物語でした。

それでは、いつも通り読書感想文を書く前に「あらすじ」と「登場人物」を掲載しておきます。

□あらすじ

三体文明の地球侵略に対抗する「面壁計画」の裏で、若き女性エンジニア程心(チェン・シン)が発案した極秘の「階梯計画」が進行していた。目的は三体艦隊に人類のスパイを送り込むこと。程心の決断が人類の命運を揺るがす。

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□登場人物

程心(チェン・シン)航空宇宙エンジニア
雲天明(ユン・ティエンミン)階梯計画の任務執行者
艾AA(アイ・エイエイ)天文学の博士課程に在学中の大学院生
トマス・ウェイド 元・国連惑星防衛理事会戦略情報局長官
関一帆(グァン・イーファン)宇宙論研究者
羅輯(ルオ・ジー)元・面壁者
智子(ヂーヅー/ともこ)智子に制御される女性型ロボット


三体艦隊に人類を送り込む階梯計画(ラダー・プロジェクト)

『三体Ⅱ』黒暗森林で、羅輯(ルオ・ジー)による土壇場の大逆転で危機紀元は終焉。

羅輯(ルオ・ジー)が執剣者(三体世界の座標発信ボタンを任せられた者)となることで、地球は平和に…
しかし危機感を失った地球人類は、羅輯(ルオ・ジー)に世界絶滅罪の容疑をかけてしまいます。

「呪文」で一恒星系を滅ぼした容疑ですって…なんかありがちなパターン。

ネタバレになるのでこれ以上は書けませんが、紆余曲折あって太陽系はとんでもないことになっちゃいます。

万事休す…

ところが面壁計画(ウォールフェイサー・プロジェクト)とともに、階梯計画(ラダー・プロジェクト)が進行していたんです。

※階梯計画(ラダー・プロジェクト)とは、三体艦隊に、生身の人間をスパイとして送り込む計画

考えてみてください、人類に宇宙を瞬時に移動する力はありません。大きな質量を移動させることも不可能です。

そこで考えられたのは、余命いくばくもない男、雲天明(ユン・ティエンミン)の脳だけを取り出して三体艦隊に送る計画。
それこそが階梯計画(ラダー・プロジェクト)です。

苦肉の策というか、地球人類に残される選択肢は他になかったのか…
あるいは考えられる方法はすべて試してみたかったのか…

いずれにしても地球人類は、相当に追い込まれていたんだと思います。

程心(チェン・シン)と雲天明(ユン・ティエンミン)

階梯計画(ラダー・プロジェクト)は、程心(チェン・シン)の発案。
『三体』シリーズでは、初の女性主人公(執剣者)です。
階梯計画(ラダー・プロジェクト)の発案者である程心(チェン・シン)と、実行者である雲天明(ユン・ティエンミン)。

実はこの2人、同じ大学の同級生なんですよね。(なんだかありがちな展開)

容姿端麗かつ頭脳明晰、誰からも愛されるマドンナ的な存在だった程心(チェン・シン)。
一方の雲天明(ユン・ティエンミン)は、自分の殻に閉じこもるタイプの男でした。

当たり前ですが、この2人に交流は無かったんです。

程心(チェン・シン)に淡い恋心を抱く雲天明(ユン・ティエンミン)は、とある恒星を贈ります。
しかし、人類が到達することも不可能なほど遠くです。

私は男性なので分かりませんが、女性って直球勝負に弱いんですかね?
イメージ的に、女性は現実主義な感じがしますけど…

『三体Ⅲ』死神永生は、恋愛ドラマ要素も多分に含まれているので「そこも注目」です。

武闘派トマス・ウェイド

『三体Ⅲ』死神永生の中で、もっとも男らしい人物。それがトマス・ウェイドです。

PIA(PDC戦略情報局)の長官として登場。PDCって何?って声が聞こえてきそうなので…
PDCとは国連惑星防衛理事会を指します。

このトマス・ウェイドは、超がつく武闘派です。

未来の地球では、いわゆるジャニーズ系というか女性的な男性が当たり前。そんな中、トマス・ウェイドは体育会系というか、日本的に言えば「昭和の男」みたいな変わりもの。

時代が時代ならモテるのかもしれませんが、『三体Ⅲ』の世界では…

冬眠(コールドスリープ)を繰り返して生きてきたトマス・ウェイドは、物事を強引に進めるタイプ。
決断力がない程心(チェン・シン)とは真逆です。

ちょっとネタバレになっちゃいますが…

「俺によこせ、すべてを」

『三体Ⅲ』死神永生より出典

このセリフが決まりすぎていました。

地球から全宇宙に向けてのメッセージ

何にせよ、三体人の強さはハンパじゃありません。

ネタバレできないので、ここまでは物語の本筋には触れていません。もちろんこれからも触れません。
そのうえで書くんですが、暗黒森林攻撃(実は黒暗森林攻撃の誤記)によって三体世界も…

ということは…地球もヤバい!

羅輯(ルオ・ジー)は智子(ヂーヅー)に尋ねます。

ある文明が、自分たちは無害で、だれに対しても脅威にはならないということを全宇宙に示し、それによって暗黒森林攻撃を回避することはできるのか

『三体Ⅲ』死神永生より出典

三体人の智子(ヂーヅー)は可能だと言う。

しかし、明確な方法を教えてくれるわけではありません。

そこで地球人類は、3つの計画を発案

①掩体計画:木星などの巨大惑星の陰に隠れて、攻撃を回避
➁太陽領域計画:光速を低下させ太陽系をブラックホール化して、全宇宙に安全性をアピール
③光速宇宙船計画:太陽系から離脱

こんな計画で成功するんでしょうか?

宇宙に安全性をアピールするなんて無理っぽいですし、太陽系からの離脱なんて可能なんでしょうか?

※物語の真相は『三体Ⅲ』死神永生を読んで確かめてください。

『三体Ⅲ』死神永生はSFファンの方を向いて書かれた

著者の劉慈欣(りゅうじきん)さんは語っています。
『三体Ⅲ』死神永生はSFファンの方を向いて書いたと。

というのも『三体』と『三体Ⅱ』黒暗森林は、SFファン以外の一般の読者向けにエンターテインメント性を考えて書いたようです。
一般的な現代人にも理解しやすい内容にしたんだと思います。

それに比べて『三体Ⅲ』死神永生は、SFファンにしか理解できない…いやいや、それどころか物理が専門の人にしか理解できないほど高度な内容。

物理SFと言ってもいいと思います。

難解な部分もありましたが、SF史に残る超名作ではないでしょうか?

まとめ

今回は『三体Ⅲ』死神永生の読書感想文を書きました。

2作目の『三体Ⅱ』黒暗森林の完成度が高かったので多少不安がありましたが、見事にさらなる高みに到達してくれました。
物理が理解できていないと難易度が高い小説ではありますが、ハードSFファンなら楽しめる物語だと思います。

ちなみに私は物理が苦手なので、かなり難易度は高かったです…

『三体』シリーズを知ったとき

「中国のSFって聞いたことがないなあ…」

と、思ったんですが…大変失礼いたしました。これからは中国のSFも好んで読んでみたいです。
人間、思い込みは絶対にダメ。中国SF恐るべしです。

※最後に私からおすすめがあります。
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