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直木賞受賞!『テスカトリポカ』の講評。世界の裏社会に生きる

第165回直木賞受賞、第34回山本周五郎賞受賞『テスカトリポカ』
著者は「佐藤究(きわむ)」さんです。

いきなり結論をいっちゃうと、取り扱い注意の犯罪小説となります。
ていうかめっちゃ面白い、面白すぎるんです。

しかし、あまりに過激すぎてブログでは内容を書くことができません。
メキシコ、インドネシア、日本、世界の裏社期に生きる人々が主人公です。

過激な内容なんですが、あまりに淡々と書かれているので、読み手の方もそれほど嫌悪感がなくなっていたりするんですよね。

ちょっと話はズレるんですが、『テスカトリポカ』に直木賞を受賞させるかどうか、選考委員は大激論となりました。
受賞してしかるべき作品。しかしながら内容が直木賞の趣旨に合わない。さらにいえば、これほどの過激な内容の作品が直木賞を受賞してもいいのか…

それぞれの思いが、それぞれの選考委員にあったようですね。

直木賞受賞後も、一筋縄ではいきません。講評を担当した「林真理子」さん、あまりに淡々を語っていましたね。私は受賞させたくなかったけど、受賞しちゃいましたのでよろしく。みたいな感じの棒読みな講評だったと思います。

W受賞の『星落ちて、なお』が「林真理子」さんの本命だったのか分かりませんが、そっけなかったです。

さて、ここからは『テスカトリポカ』の書評を書いて行こうと思うのですが、内容が過激すぎて「あらすじ」を掲載するか迷いました。

しかし、書くからには「あらすじ」は必要です。以下に掲載します。

メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう。川崎に生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモはバルミロと出会い、その才能を見出され、知らぬ間に彼らの犯罪に巻きこまれていく――。海を越えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国〈アステカ〉の恐るべき神の影がちらつく。人間は暴力から逃れられるのか。心臓密売人の恐怖がやってくる。誰も見たことのない、圧倒的な悪夢と祝祭が、幕を開ける。

Amazon商品ページより引用

テスカトリポカとは?世界の裏社会に生きる

『テスカトリポカ』の物語はメキシコから始まります。

テスカトリポカとはアステカの神ですから、メキシコからスタートするのは必然かも。
ところで福岡県出身の「佐藤究(きわむ)」さんが、なぜメキシコなんでしょうか?

いろいろと調べてみましたが、佐藤さんとメキシコのつながりは発見できませんでした。ただ、麻薬カルテルについて聞き込み調査をしていたらメキシコに行き当たったといった感じなんだと思います。

佐藤さん自身、何度も書きことをやめようと思ったみたいですし、現実の麻薬戦争の凶悪さに夢でうなされたそうです。
『テスカトリポカ』はかなり過激な内容ですが、佐藤さん曰く現実の世界はもっと過激らしく…本当に恐ろしいですね。

メキシコを舞台にした、アメリカ映画はたくさんありました。過激な犯罪映画が多かったのを覚えています。

『アメリカン・ミー』という映画をご存じでしょうか?

メキシカンマフィアの物語で、なかなか過激な犯罪映画です。しかし、『テスカトリポカ』の比ではありませんね。
映画化された『テスカトリポカ』を見てみたいですが、実現不可能だと感じています。

世界の裏社会に生きる人々を主人公にすると、極上のリアルストーリーを描くことができますが、様々な制約もあるんですよね…刃の剣と言ったところでしょうか。

そして、メキシコと言えば「アステカ」スペインに滅ぼされた国です。スペイン人たちはアステカを滅ぼすだけではなく、文化そのもを奪ってしまったため、現在に伝わるものは限られています。

残念といえば残念ですが、建造物や遺構、言い伝えも残っているので興味深いです。

アステカの神テスカトリポカ

『テスカトリポカ』はアステカ神話の神です。

神々の中で最も強い神様といわれていて、その名前は「煙を吐く鏡」を意味します。
ここでいう鏡とは、儀式で使用された黒曜石の鏡のことです。

アステカ王国を滅ぼしたコンキスタドール(征服者)、スペインによって持ち込まれたキリスト教の宣教者たちは、テスカトリポカを悪魔としました。

テスカトリポカは身体は黒く、顔に黒と黄色の縞模様を塗った姿として描かれます。
右足が黒耀石の鏡か蛇に置き換わった姿が多いです。

アステカ神話によれば、地の怪物と戦い右足を失ったらしい。時として胸の上に鏡が置かれ、鏡から煙が生じている様子で描かれることもあるようですね。

テスカポリトカについて詳しく語っている動画があります。

最強の戦士で魔術師 テスカトリポカ

コルテスとモクテスマ2世

先ほどから何度か書いていますが、アステカ帝国はスペインによって滅ぼされました。
さらに言えば「アステカ」の名前は、19世紀にアレクサンダー・フォン・フンボルト(ドイツの博物学者兼探検家)が名付けた造語です。

要は、コンキスタドール、スペインによって完全に完膚なきまでに滅ぼされました。
そしてアステカ帝国を滅ぼした中心人物は、エルナン・コルテスです。

コルテスを恐れたアステカの人々は、「白い神ケツァルコアトルの化身」とコルテスを崇めます。

対するアステカ帝国の王、モクテスマ2世はコルテスに対して「国をお返しします」と言うんです。
その弱腰を貴族たちに責められたモクテスマ2世は、前言撤回。スペイン人に立ち去るように要求します。

結局モクテスマ2世はアステカの人々に殺されました。(スペイン人説もある)

その後アステカ帝国の王は…クイトラワック王→クアウテモック王と続きますが、1521年8月13日に首都テノチティトランが陥落。アステカ帝国は滅亡します。そして1525年2月28日クアウテモック王は処刑されました。

小説『テスカトリポカ』の中で、スペインやキリスト教を侮蔑するシーンが何度かありますが、このあたりの歴史が影響しているんでしょう。

まとめ

今回は『テスカトリポカ』の書評を書きました。

過激すぎる犯罪小説は、本当に面白かったです。この記事のポイントしては…

・テスカトリポカは直木賞に相応しいのか?
・林真理子さんの講評がどういったものだったのか?
・世界の裏社会に生きる人々
・アステカの神、テスカトリポカ
・コルテスとモクテスマ2世

世界の裏社会に生きる人々、とりわけメキシコの人々の物語。深く考えさせられました。
本当に久しぶりに重厚な小説に出会えて幸せです。

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