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物語「オリーブの木を育てよう⑨」


1ページ目

『シオーモの小径』にチェロを持った人が、ぞくぞくと集まって来た。

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2ページ目

にぎやかな港にアナウンスが流れた。

「今日は、『シオーモの小径』にお集まりいただきありがとうございます。
これから『シオーモの小径で全体乾杯』を開催します。

お配りしたパンフレットの2ページ目をご覧ください。
『朗読 雨ニモマケズ』
これから、5分ほどチェロの演奏があります。
思い思いの場所で朗読いたしましょう」

「雨ニモマケズ・・・・・

手をつなぎ輪になっている人たち。
海の方を見ている親子。
空を見上げてる人。
しゃがみこんでしまった人。

『シオーモの小径』を風が通り過ぎていった。
全員の頬を撫でながら。

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3ページ目

今日のために作られたステージには、大きな大きな幕が張られている。
その幕は、真っ白な布で、『ふた昔前の店』の店主は、チェロの演奏が流れる中、そこに扉の絵を描きはじめた。

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4ページ目

『ふた昔前の店』の店主が、茶色のペンで扉の絵を描いていると、真っ白な布にぽつぽつと緑色と青い色の点が現れてきた。
ぽつぽつぽつぽつ・・・点は、布一面に現れてきた。
緑色の点は、形になろうとしている。
青い色の点も、形になろうとしている。
ゆっくりゆっくり、『ふた昔前の店』の店主は扉の絵を描く。
できあがると、ドアノブを描いた。
そして、『ふた昔前の店』の店主は、ドアノブを引っ張った。
ぴょんぴょん、白いうさぎが出てきてお辞儀をした。
チェロ奏者たちは、譜面の最後の小節に入った。
たくさんのチェロ奏者の最後の音は、一つに束ねられ、伸びた音は空に上がり、そして下がり、海の中に入っていった。

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5ページ目

アナウンスが港に流れた。
「パンフレットの3ページ目をご覧ください」

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6ページ目

パンフレットのサイズは、縦18センチ横18センチ。
表紙には、ドーナツ盤の写真。
1ページ目は、一本の木の写真。

とても大きな松の木で、かなり離れた所から撮った写真。
津波に耐えた松の木は、まるで、バレリーナがダンスしているよう。

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7ページ目

3ページ目は、『下ノ 畑ニ 居リマス 賢治』と書いてある黒板の写真。

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8ページ目

アナウンスが続いた。
「これから10分ほどバンド演奏があります。その間に、この写真が会場に置いてありますから、見つけてみましょう。見つけたら写真の裏を見てください」

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9ページ目

『シオーモの小径』に音楽が流れ出した。
「君は涙を見せない 
 どんなに悔しい時でも 
 そんな君を見てると・・・♪♫」

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10ページ目

「あっ!あったよ、あったよ」
「あれ⁉︎」
「島ノ 畑ニ 居リマス 直坊」

『シオーモの小径』は、笑顔でいっぱいです。

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11ページ目

ステージの後ろに、よだかと『ふた昔前の店』の店主がいる。
『ふた昔前の店』の店主は、よだかに1枚の写真を渡した。
よだかは、写真をくちばしではさんだ。
「よろしくね」と『ふた昔前の店』の店主が言うと、よだかは、大きくうなずいた。
よだかは、『シオーモの小径』の入り口に向かって飛んだ。

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12ページ目

バンド演奏の2曲目がはじまった。

「絶望の淵を ふらふら歩いてた
 手をつなぐ親子を見たら 涙が溢れ出す・・・♪」

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13ページ目

『シオーモの小径』の入り口に、『D』社の透明な四角い箱の乗り物が来ていた。
そこには、キャプテンとアミさんとガイドのフランチェスコさんがいた。
よだかは、ガイドのフランチェスコさんに運んできた写真を渡した。
ガイドのフランチェスコさんは、受けとった写真をテーブルのような機械の上に置いた。
よだかは、頼まれ事が済んだので、のんびり『シオーモの小径』を散歩することにした。
よだかは、歩いた。
トコトコ、トコトコ。
トコトコ、トコトコ。

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14ページ目

ガイドのフランチェスコさんが、やさしく響き渡る声で言った。
「写真あります。写真ありますよ^_^」
すると、写真探しをしていた親子が近くに寄ってきて、
「写真を探しているのですが・・・見せてもらえますか?」と尋ねた。
「さ〜どうぞ、この箱の中にお入りください」と、ガイドのフランチェスコさんが言った。
子どもがテーブルの上の写真を見て「わ〜、見つけた〜、あったね、あったね」
アミさんは、ニコニコしながら、「どうぞ、お持ちください。そして、ステージの前でお待ちください」と言いながら写真を子どもに渡した。
「あれ?写真の裏、何も書いてないよ」と、子どもが言った。
親子は手をつなぎながらステージの方に歩いて行った。
アミさんは、テーブルのような機械の中から写真を1枚取り出し、さっきと同じように置いた。
ガイドのフランチェスコさんが、乗り物の外で話をしている。
「さ〜どうぞ、この箱の中にお入りください」

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15ページ目

ステージでは、3曲目がはじまった。

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16ページ目

48人の天使が踊りはじめた。
そして歌い出した。
その歌は、日本中、世界中に広まっていたので、子どもも大人も踊り出した。

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17ページ目

ステージの前に『写真探し』に参加していた人たちが集まってきた。
子どもが、写真の裏が真っ白なので、息を吹きかけたり、写真を振ったりしている。
歌の途中、48人の天使たちが言った。
「写真の裏を見て!写真の裏を見て!」

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18ページ目

写真を裏返すと・・・そこには、会いたかった人がいた。
写真を持っている人々は、歓声をあげた。そして、写真に話しかけた。
すると、また、大きな歓声が沸き起こった。
会いたかった人・・・
あの日、突然消えてしまった人が笑顔で話しはじめた。
「大丈夫?元気だったかな?」
それは、まるで、テレビ電話のようです。
どこかと繋がってるテレビ電話。

48人の天使がステージ前の広場にめいっぱい広がって踊ってる。歌ってる。
「ツキを呼ぶには笑顔を見せること〜♪♫」

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19ページ目

3曲目が終わると、『シオーモの小径』にアナウンスが流れた。
「さ〜みなさま、ステージ横にあるキッチンカーの前へどうぞ、どうぞ。
そして、お好きな食べ物をご注文してください。
チェロ奏者のみなさまは、ステージにお集まりください」

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20ページ目

アチコチから集まってくれたキッチンカーには、たくさんの道具と調味料が乗っていた。
そしてフードバンクカーも、アチコチから集まってくれた。
たくさんの、食材が積まれていて、スタッフは、何度も何度もキッチンカーとフードバンクカーを往復している。
キッチンカーのシェフたちは、楽しそうに、たくさんの料理を作っている。
「どんなものが食べたい?」
「あのね、ホットケーキ!」

テレビ電話に映っている、この子のおとうさんが、シェフに言った。
「いつも、忙しくて、一緒にいる時が少なくて・・・それで、時々、この子とホットケーキを作って・・・この子がチョコレートで絵を描いて・・・サイズは、このくらい!小さめで!よろしくお願いします」
シェフは、道具を選びはじめた。
スタッフは、フードバンクカーに向かって走った。

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21ページ目

チェロ奏者の準備ができると、『ふた昔前の店』の店主は、布に描いたドアノブを引っ張った。
すると、宮沢賢治さんがチェロを持って出てきた。
『ふた昔前の店』の店主は、ステージの真ん中のイスに宮沢賢治さんを案内した。
『ふた昔前の店』の店主は、今度は、扉を開けたままにしておいた。

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22ページ目

チェロ奏者50人。
宮沢賢治さんがイスに座り、チェロ奏者は51人。
この日のために、宮沢賢治さんは、5曲の楽譜を作った。
そして、参加申し込みをしてくれる人に楽譜を送っていた。

宮沢賢治さんが、腕を伸ばし、チェロの弓を高く上げた。
すると・・・弓に向かって周りの空気が絡みはじめた。

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23ページ目

チェロの弓が振り下ろされ、空気の層をトンっと叩いた。

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24ページ目

1音目は、チェロ奏者たちを癒した。
2音目は、ステージ近くの人々を癒した。
3音目は、シオーモの小径を歩く人々、キッチンカーのある広場にいる人々を癒した。
次から次へと現れるチェロの音は、四方八方に飛んで行った。
まるで、目指す場所があるかのように。

ステージ奥に張られた白い布の幕に向かったチェロの音は、布の中で成長している青い色の点を絡め取るように、布からはがした。
青い色の点は、勢いよく空を舞いながら青い鳥に変化した。
シオーモの小径に現れた青い鳥は、四方八方に飛んで行った。
まるで、目指す場所があるかのように。

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25ページ目

緑色の点も、次々とチェロの音で布からはがされていった。
そして、チェロの音の背中に乗った緑色の点は、ふわりふわりと飛んで行き、人々の洋服の左胸にくっつくと、みるみるうちに4つ葉のクローバーになった。

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26ページ目

チェロ演奏の5曲目の最後の音が伸びている時、四方八方に飛んでいった青い鳥たちが戻ってきた。
そして、『ふた昔前の店』の店主が開けておいた扉の中に次々と入っていった。
シオーモの小径にいる人々は、青い鳥が飛んでいる姿を見ながら・・・たくさんの人の気持ちが軽くなってればいいな・・・と思った。

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27ページ目

シオーモの小径にアナウンスが流れた。
「みなさま、これから『全体乾杯』を行います。
ステージ横のキッチンカー、フードバンクカーの方へお集まりください」
カモメ、よだか、ルリビタキ、カワセミ、蜂すずめ。
48人の天使たち。
島の人たちもいる。
宮沢賢治さんも。
宮沢賢治さんの足元には、三毛猫、かっこう、狸の子、野ねずみの親子。
三毛猫、かっこう、狸の子、野ねずみの親子は、ずっと、扉の所でチェロの演奏を聞いていた。そして、青い鳥たちが戻ってきて扉の中に入った時、中から出てきていた。
それから、『D社』の360度透明な四角い箱の乗り物も空中を移動して広場に降りてきた。

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28ページ目

『ふた昔前の店』の店主が、マイクを持った。
「みなさん、今日はお集まりいただきありがとうございました。
チェロ演奏のみなさん、ありがとうございました。
バンド演奏のミュージシャンのみなさん、ありがとうございました。

これから、いつもと同じように冬が来ます。
でも、同じような気持ちで冬を越せない方が多いと思います。
パンフレットの5と6ページをご覧ください。
ここに、ホットラインを載せました。
どうぞ、ご利用ください。

それでは、これから、『全体乾杯』をいたしましょう。
みなさん、お好きなお飲み物を、キッチンカーのシェフやスタッフの方々に頼んでください」
ワイワイ、ワイワイ、にぎやかな声が広場に広がった。
テレビ電話のようになった写真を持っている子どもが、飲み物を持っている母親の手を見て言った。
「あれ?お母さんの手荒れが治ってるよ」
「ま〜不思議ね」

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29ページ目

「準備ができましたね」と、アナウンスが流れた。
「それでは、乾杯の御発声を宮沢賢治さんにお願いいたしましょう」
と、『ふた昔前の店』の店主が言った。
「宮沢賢治です。
今日のイベントは、多方面から、多種多様な生命体が集まるそうです。この乾杯の後、もっと集まって来ると言うから楽しみです。
これからは、もっと全体を見て、全体を感じて生きたい。
1つ1つが全体を愛し、全体が1つ1つを愛している。
そんな環境がいいですね。
それでは、
世界が全体幸福になりますように。全体乾杯!」

広場に集まった人々も大きな声で言った。
「世界が全体幸福になりますように。全体乾杯!」

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30ページ目

「さーみなさん、楽しんでいってください」と、港にアナウンスが流れた。

ステージからドラムソロがはじまると、それが合図になり、皆が動き出した。
歌のおにいさん、おねえさんが踊り出すと、子どもたちのお目々が次々とキラキラ!
カモメ、カワセミ、ルリビタキ、よだか、蜂すずめも、羽を裏に表に、ばたばた、ばたばた🎵
キッチンカーのスタッフたちは、フードバンクカーに向かって走った。
空の奥の方で『D』と文字が光り、その数は、とてもたくさんになった。
水面が点々と光り輝き出すと、魚たちのダンスがはじまった。

オリーブの木の苗が植えられた島の『心』は、風を呼んだ。
そして、1枚のオリーブの葉を『シオーモの小径』に届けるように頼んだ。

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31ページ目

ステージでは、一曲ごと演奏者が変わり、ミュージシャンたちは、久しぶりに会った友たちと音楽を楽しんでいた。

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32ページ目

風が、1枚のオリーブの葉を運んでいた。
風は、オリーブの葉をやさしく包みながら、1つの島を越え、2つ目の島を越え、『シオーモの小径』を目指した。

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33ページ目

『ふた昔前の店』の店主がギターを抱え、カホンを持った人が、ステージに上がり、演奏の準備をはじめた。
『オリーブの木の苗を運ぶ人』がステージに上がると、ステージ後ろの大きな布に描かれた扉から、紙ひこうきが1つ飛び出してきた。
『オリーブの木の苗を運ぶ人』が、紙ひこうきに手を伸ばすと、紙ひこうきは飛行を止めて『オリーブの木の苗を運ぶ人』の手のひらに着地した。
紙ひこうきには、小さなキラキラしたモノが乗っていた。
その小さなキラキラは、『意志』というモノ。
その意志が、紙ひこうきを操縦していた。
『オリーブの木の苗を運ぶ人』は、マイクの前に立った。
ゆっくりとしたテンポのイントロがはじまった。

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34ページ目

「お前に会える夢を願って目を閉じる・・・・・♪」
『オリーブの木の苗を運ぶ人』は、やさしい気持ちで、やさしい声で、歌い出した。
紙ひこうきに乗っている『意志』は、輝きを増し、真っ直ぐ空の天蓋に向かって光の線を伸ばした。
オリーブの葉を運ぶ風は、伸びていく光の線に絡み、光の元の『意志』に向かって下降した。
「昔、お前が飛ばした紙ひこうきが、
 今、目の前に届いた・・・・♪」
『オリーブの木の苗を運ぶ人』が、そう歌った瞬間、風は、運んできたオリーブの葉をそっと『意志』の中に落とした。

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35ページ目

『オリーブの木の苗を運ぶ人』は、手のひらに乗せている紙ひこうきの重さが微かに変わったのを感じた。
歌いながら目線を紙ひこうきに向けると、紙ひこうきに乗っている小さなキラキラしたモノの中に、ハート型のオリーブの葉が1枚入っているのが見えた。
「・・・遠くで海しぶきが静かに輝いている
 今でもお前の声は確かに聞こえている・・・♪」
『オリーブの木の苗を運ぶ人』は、歌い終えると、深く深くお辞儀をした。
すると、紙ひこうきに乗った『意志』は、『オリーブの木の苗を運ぶ人』の手のひらから上昇し、ステージの上を行ったり来たり飛行し、オリーブ畑のある島の方に飛んで行った。
『オリーブの木の苗を運ぶ人』は、「ありがとう」と言った。

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36ページ目

真っ白い割烹着姿のボーカリストが3人、ステージに上がってきた。
『オリーブの木の苗を運ぶ人』と、3人は、うれしそうに、楽しそうに、マイクを持ってお話しを始めた。
過去、今、未来の話しを。

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37ページ目

キーボードの音が、ふわりふわりと現れて、空気の中を漂いながら四方八方に流れていった。
1つの音が宮沢賢治さんの耳元を通り過ぎた。
宮沢賢治さんがステージの方を見ると、
「雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ 夏ノ暑サニモ・・・・♪♫」と、歌声が聞こえてきた。

「あっ・・・私の言葉にメロディが・・・ありがとう、ありがとう」
宮沢賢治さんは、うれしそうにステージを見つめた。
カモメ、カワセミ、ルリビタキ、よだか、蜂すずめ。
三毛猫、かっこう、狸の子、野ねずみの親子、白いうさぎ。
みんな、宮沢賢治さんのおそばで一緒にステージを見つめた。

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38ページ目

『シオーモの小径』にアナウンスが流れた。
「今日は、お集まりいただきありがとうございました。これで、『シオーモの小径で全体乾杯』を終わります・・・

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39ページ目

島行きの船が来ました。乗船される方は、ご準備をお願いいたします。
演奏者のみなさま、イベント最後の曲をお願いいたします」

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40ページ目

船が、海水にやさしくやさしく押されながら港に入ってきた。
船員さんたちが、乗船の準備をはじめた。
ていねいに、ていねいに。
すばやく、力強く。
金属の音、木の音が港に響いた。

ステージからは、ドラムソロが聞こえてきた。
やさしさと
穏やかさと
強さと
しなやかさと、そんなエッセンスが音に入っていた。

ステージには、2つのドラムセット。
2人のドラマーの音が港に響く。

ドラムソロは、次第にリズムを刻み出した。
リズムは、四方八方に飛び、あらゆるモノが持つ振動とリスペクトしながら共鳴しだした。

『オリーブの木の苗を運ぶ人』は、小さな声で歌いはじめた。
「ワカンタンカ 
 ワカンタンカ 
 WAKAN TANKA ・・・・」
 

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41ページ目

広場に降りていた『360度透明な四角い箱の乗り物』の1つの面が、少しづつ透明から映画のスクリーンのようになっていった。
ガイドのフランチェスコさんが小さな声で、早口で、何かを言った。
すると・・・スクリーンに映像が映し出された。
それは、日本の景色のように見えた。
家が映った。
そして、その家の庭にどんどん近づいて、、、
そこは、芝生のある庭で、そこでキャンプをしているような人が映った。

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42ページ目

その人の瞳には、家の中の様子が映っている。
倒れた棚。
落ちて割れたお皿。

スクリーンを見ていたカモメは、その家が『オリーブの木の苗を運ぶ人』の家だとすぐに分かった。

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43ページ目

ガイドのフランチェスコさんが、スクリーンに向かって早口で何かを言う
と・・・次は、レジャーシートの上でゴロンゴロンと寝返りの練習中の赤ちゃんが映し出された。
周りには、音楽フェスに来ている人たちが大勢映っている。

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44ページ目

ゴロン ゴロン
寝返りがうまく出来たり出来なかったり。
それでも赤ちゃんは楽しそうです。
おや?
赤ちゃんの片手がぐーで、片手がぱー。
周りの大人たちが、不思議そうに見ています。
たくさんの大人たちがレジャーシートの周りに集まったので、赤ちゃんは、ぐーしていた手を開いて手のひらを母親に見せました。
母親は、目頭が熱くなりました。
赤ちゃんは、4つ葉のクローバーをにぎっていたのです。

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45ページ目

島行きの船が動き出しました。
島に帰る人、
島の民宿に泊まりに行く人。
カモメ、カワセミ、ルリビタキ、よだか、蜂すずめ、宮沢賢治さんも乗っています。
『オリーブの木の苗を運ぶ人』は、動き出した船に向かって大きく大きく手を振りました。
大きく大きく手を振りながら歌い続けました。
「・・・ここから先へ行こう〜」

おわり  m(_ _)m


YouTube 「オリーブの木を育てよう」
作詞作編曲   伊藤心太郎さん


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