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受動的から能動的へ。~案内される側だった私が南相馬を紹介するまでのお話~|#訪問体験記

マガジン「福島県南相馬|中のひと、外のひと」では、みなみそうま移住相談窓口よりみち移住コンシェルジュ6名(中の人)と南相馬を訪問した人たち(外の人)とが、それぞれの視点で南相馬での生活や体験を切り取っていきます✍️

今回は外のひと。
3月にインターンに訪れた、きのしたみゆさんの記事です。
たった半年で、「案内される側」から「案内する側へ」。
みゆさんに起こった変化を、ぜひお読みください📒


はじめまして!きのしたみゆです。
私は普段、福祉学科で地域福祉を中心に学んでいます。
私が南相馬と出会ってから半年が経ちました。
乗馬体験に畑での収穫体験、ロボットテストフィールドの見学。
2022年8月はMYSHの方々にとても貴重な経験をさせていただきました。
しかし、初めての土地で新たな出会いがあり、私はとても緊張していました。昨年の1週間は「案内される側」であり、学ぶことはできても自分から何か行動することは困難でした。


2022年夏、仕事暮らし体験プログラムに参加した理由

大学3年生の夏。大学生活が半分終わった中、私はコロナ禍を言い訳に何もできず、ただただ焦燥感に駆られていました。そんな中、私は同じサークルの先輩から【南相馬仕事・暮らし体験プログラム】の紹介を受けました。

南相馬市ってどこだろう。
どんな魅力があるんだろう?

私は現地へ行くまで南相馬市について名前も知りませんでした。しかし、地域福祉領域の学びを深めるためにも自分からフィールドワークに参加する必要があると思い、一週間南相馬に滞在することを決めました。

【南相馬仕事・暮らし体験プログラム】
期間:2022年8月1日~8月7日
内容:まちづくり業務体験・地域課題視察・ワークショップ

0から始めるまちづくり。「復興」ではなく「新興」。

私が仕事暮らし体験プログラムで一番印象に残ったことは、南相馬市の発展性です。私は福島県といえば「震災」のイメージしかありませんでした。

私は現在、東日本大震災復興支援サークルに所属しており、高校生の時も年に1回、岩手県釜石市にて仮設住宅や復興住宅でボランティア活動をしておりました。

そんな中、ボランティアではなく「仕事暮らし体験プログラム」や「移住相談窓口」でのインターンシップ。これは、今まで復興支援でしか東北と関わりの無かった私にとって考えが大きく変わる出来事でした。

起業したい人が移住したり、新しく何かを始めたいベンチャー企業が訪れる場所。

どこか被災地についてマイナスイメージを持っていた私にとって、実際にポジティブな面を見ることができた貴重な機会でした。

ロボットテストフィールドでは、ITについて知識がほとんどない私でも技術の凄さが分かりました。
南相馬市では「野馬追」という伝統的な行事もあります。(今年夏は見に行きたい!)

一週間という短い期間ではありましたが、たくさんポジティブな面を見ることができたため、福島県に対してのイメージは大きく変わりました。

ロボットテストフィールドにて

2023年春、案内される側から案内する側へ。まちづくりマップを作成して考えたこと。

学ぶだけでなく、自分から動いてみたい。
何か成果物を残してこのインターンを終えたい。

それらを目標に、再チャレンジとして私は今回のインターンシップに参加しました。

内容として、
・競合アカウント、バズ投稿リサーチ(Twitter)
・Instagramのリール作成
・原町まちあるきマップの作成
・滞在ノート作成
の4つが今回、私が1週間南相馬市で行うタスクでした。

Instagramのリール作成では、南相馬市中央図書館について紹介させていただきました。畳のある読書席や天空のテラス、映画鑑賞イベントや子ども向けのイベントなど、魅力的な図書館であったため、多くの人に知ってほしいと思い作成しました。

お気に入りの場所・図書館の和室

一番苦労したのは原町まちあるきマップの作成です。マップは徒歩の場合と自転車の場合で2種類作成しました。
徒歩マップの目的は、初めて南相馬に来た人に町を知って知ってもらう。自転車マップの目的は生活のイメージができるのそれぞれ目的がありました。

まちあるきマップ作成アイデア出しの様子

徒歩マップの作成には1㎞圏内でまちの情報が分かる場所と、地元の人と話せる場所と、まちのシンボルになる場所を探す必要がありました。
また、自転車マップでは5㎞圏内で住むイメージが持てる場所、南相馬の雰囲気や文化が分かる場所を取り入れる必要があります。

私は原ノ町駅を散策するのは初めてではなかったのですが、いざそのような施設をピックアップするとなると難しく、しかし、実際にマップを作るために1人で散策した時、昨年夏では気付かずに通り過ぎていた魅力的な場所も見つけることができました。

都内とは違い、Instagramなどの媒体では魅力的な場所を見つけるのは容易ではありません。食べログでそのお店を見つけても口コミが少なかったり、そもそもインターネットで情報が見つからないお店もあったため、実際に店舗へ行くこともありました。

あるお菓子屋さんでは、店内の様子や商品を見ている時に店員さんがお茶を出してくれました。店内は全体的に暖かな雰囲気であり、その時、ふと思い出したことがありました。

コンビニエンスストアでも、「いらっしゃいませ、こんにちは」という明るい声が聞こえるのです。南相馬市では当たり前でも私の地元、都内ではそうでない時がありますし、「いらっしゃいませ」で完結することがほとんどです。この「こんにちは」という一言が加わるだけで、私はこの南相馬市の住民の暖かさを感じることができました。私は大学生であり、ちょうど髪色も金髪であったため、地域住民の方にはよく見られることがありましたが…駅で写真を撮ろうとした時に話しかけてくれる人がいるなど、すごく心地よい1週間を過ごすことができました。

まちあるきで訪れたお店

3.11。北泉海岸で感じたこと

3月11日の14時頃、北泉海岸へ連れていっていただきました。
海岸ではサーフィンをする人は子ども連れもいて、楽しそうな様子も見れました。

東日本大震災から12年が経ちました。この海に、波に飲まれ亡くなった人も多い中、北泉海岸で地域住民はどう思うのか。空気が重いことだけは分かり、言葉では表せない感情がありました。

私は震災当時、小学校3年生で下校する時の出来事でした。私のいた地域では震度4でしたが、「もしお母さんに何かがあったらどうしよう。」と不安でいっぱいでした。母親が小学校まで向かいに来た時に泣いてしまった記憶が今でも残っています。

家のテレビでは津波の情報が流れ、幼いながらに「これは本当に大変なことなんだ」と毎日不安でした。計画停電ではランタンを付け、心細い思いをしていました。
直接津波の被害が無かった私でも、当時の記憶はハッキリ残っており、今でも、もしあの規模の震災がまた起きたらと不安になることがあります。

そして、2023年3月11日。毎年私は神奈川県にいましたが、福島県でこの時間を過ごすのは初めての出来事であり、北泉海岸で黙とうを行いました。
全体的に、重い空気が流れておりました。それは、高校で黙とうをしていた時の教室の雰囲気とは異なるものでした。

現地では、放射線測定器であるガラスバッジを身に着けることや健康診断での甲状腺検査、居酒屋では自宅の放射線量について話題が出るなど、当時被災地にいなかった私には想像できない話が沢山ありました。

帰還困難区域がまだ存在して、まだ故郷に帰れない人がいるということを知らない人も、私の地元にはきっといるでしょう。
そして、北泉海岸で遊んでいた子どもたちはきっと震災を経験しておらず、あの大きな地震が来た時の恐怖は知らないでしょう。
つい最近のことに思えてしまう東日本大震災が、教科書の中の出来事に変わりつつあることを私は恐れています。

昨年、「すずめの戸締まり」という映画が話題となりました。そこで印象に残ったシーンがあります。

劇中、芹澤朋也と鈴芽は帰還困難区域にて車を止めました。
芹澤は「こんなに綺麗な場所だったんだな」と口にしますが、 「綺麗?ここが?」と鈴芽は表情を曇らせました。

鈴芽は、津波で母親を失っています。
芹澤には綺麗な場所に見えても、津波によって建物から人間まで飲み込まれ、何も無くなった土地を見ても鈴芽は綺麗だとは思えず、ただ悲しい記憶が出てくるだけだと思います。

映画(フィクション)での話といえど、東日本大震災を経験した年の人間でさえ、被災地で被害に遭わなかった人と被災者には大きな壁があるように感じました。

「復興」ではなく「新興」。新たなまちづくりで被災地での風評被害やマイナスイメージを無くしたい反面、東日本大震災のことは忘れないでほしいと私は思います。

北泉海岸にて

今後、やっていきたいことや考えたいこと

大学内のゼミナールにて、フィールドワークとして福島県南相馬市へ2月初旬に訪れた時、海鮮丼がある飲食店にて店員さんに言われたことが印象に残っています。

「福島第一原発の処理水が海に放出されたら、貴方たちはそこで採れた魚を食べることができますか?」

私たちは笑顔で「もちろんです!」と答えることはできませんでした。
私はALPS処理水が海に流れ、そこで採れた魚を食べたとしても特に気にしません。しかし、数年後もし子どもを産む時に何か障がいが出た時、もしかしたら…と、処理水を疑う可能性を否定できませんでした。

私は、福島第一原発事故は原発の「安全神話」を信じた結果、起きてしまったのではないかと考えています。
「人災」とも呼ばれ、まだ帰還困難区域も残っている中、本当に処理水を流しても良いのだろうか。本当に安全なのだろうか。

今日、国および東京電力による福島第一原子力発電所処理水(ALPS処理水)の処分に伴う対策の対応状況に関する説明会が様々な地域で行われています。

安全性や風評被害が懸念される中、私たちにできることはなんだろうか。

まだまだ震災についての知識は浅いですが、仕事暮らし体験プログラムを通して南相馬市の良いところをたくさん見つけることができました。
震災の恐ろしさを伝えることも大切ですが、地域の良さを伝えることも重要です。

『日本にはたくさんの地域があるけれど、私は南相馬市に移住したい!』

そう思ってくれる人が今後増えてくれたら嬉しいと思いますし、その手助けが少しでもできたらと私は思います。


みゆさん、ありがとうございました😊

3.11に南相馬の海岸にいて感じたこと、そこから見えたこれからのこと。
南相馬で体験したからこその心の変化を綴ってくれました。

インターンでは、大学生ならではの視点で、Instagramのリールや・まちあるきマップの作成など、さまざまな”足跡”を残してくれています👣

みゆさんの更なる活躍を楽しみにしています🙌

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📹みゆさんが作ってくれたリールはこちらからご覧いただけます👇
Instagram:https://www.instagram.com/minamisoma.yorimichi_jp/

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