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会心の一日

「ああ、何もかもうまくいった一日だった」
登山をしていると年に1回か2回、稀に遭遇することがある。自分はその一日を「会心の一日」と呼んでいる。

例に上げると2014年秋、11月下旬、武奈ヶ岳へ登山しに行った。

武奈ヶ岳は滋賀県の琵琶湖の西側にある比良山地の一座だ。武奈ヶ岳を西から東へ横断するコースを選択し、登山口まで京都の市街地から路線バスに乗る必要があった。そのため、仮眠を含め東京を深夜に出発することになった。しかし、初っ端からドライバーが軽い接触事故に遭い、出発が2時間遅れる大トラブルが発生した。

しかし、「諦めたら試合終了」という言葉があるように、東京から京都間を休憩なしで走り切り、出町柳駅の路線バスの発車5分前に間に合わせることに成功した。信号に2つ捕まっていたら間に合わなかった時間である。寝不足だったが、武奈ヶ岳の登山は非常に満足し、土地勘のない地方での登山は非常に満足のいくものだった。温泉に入り、湖西地方から京都に再び、舞い戻る。登山靴を脱がないまま、紅葉ピーク期に入った京都の夜を歩き回り、紅葉ライトアップの写真を撮った。駐車した出町柳駅に戻ったのは0時を回り、京大生御用達、と思われるラーメン屋で1日を締めた。

その後は、完全に意識朦朧としながら翌日のために奈良に移動したが、東大阪辺りのサービスエリアで力尽きて、駐車場でヤンキーな若者がチキンレースをしていたが、トラベラーズハイ状態がプツリと切れ、目を閉じた瞬間に入眠した。

細かい出来事は他にもたくさんあり、体感的には三日間を圧縮したような一日だった。武奈ヶ岳の一日は、未だに会話の種になっている。この日、ビデオカメラを回していたら、なかなかのバラエティが撮れたと思う。

登山をした一日は充実するけれど、それを越える一日は巡ってこない。登山だけではない、観光や食事、宿泊の複合的に絡み合って、予測できないトラブルや分単位の時刻表のパズルをこなしたとき。そして、旅の行動時間が12時間以上に超える時。何より誰かと旅した時の方が、未知数が大きいので、「会心の一日」が発生する。

自分はそんな「会心の一日」に巡り合いたいから、旅を続けてると思う。



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