「突然の豪雨で立ち往生」2013年6月(パリ~アンジェ往復):「TGV(フランス高速鉄道)乗車記録」第4話
--------------------------------------------------------------------------------
見出し画像:アンジェ・サン=ロー駅のホーム。奥に見えるのは、2階建てTGV。
*本文中に、写真はありません。
*駅や列車の設備、システムなどは、ひんぱんに変更されます。
記述内容は、あくまでも乗車当時のものであることをご理解ください。
--------------------------------------------------------------------------------
アンジェ城の広々とした庭園を歩きながら、私は旧友に送る絵葉書に添える言葉を考えていた。
旧友とは、プロローグに出てきた親しい同級生のことだ。
私はこの23年前に、フランス北西部の町アンジェで、この同級生と一緒に語学研修を受け、その後、TGVで南フランスを旅してまわった。
学生時代の友人で、いまでも連絡をとりあっているのは、彼女だけである。
庭園をぐるりとまわったあと、城壁にのぼり、はるか下方を流れるメーヌ川を眺めながら、私はしばし昔の思い出をたどった。
アンジェには、よい思い出しかない。
授業は楽しく、ホームステイ先の家族は親切で、学校帰りにはなじみのカフェでくつろいだ。
絵葉書に添える言葉がひらめいた。
私はそれを書いて、絵葉書をバッグのなかにしまった。
帰りのTGVに乗る前に、駅前のポストに投函しよう。
この帰りの列車に乗った30分後、私ははじめての事態に遭遇する。
その結果、アンジェでの懐かしい思い出に、忘れられない思い出がもうひとつ加わることになった。
***
パリからアンジェまでは、TGVで2時間かからない。
すでに知っている町で、土地勘もある。
だから、ちょっとそこまでという気分で出かけていったのだ。
現地でできるだけ多くの時間をとるために、私はパリ・モンパルナス駅を7時35分に出発する列車に乗った。
行きはなにひとつ問題がなく、アンジェ・サン=ロー駅に9時32分に到着した。
駅舎はすっかり新しくなり、昔の面影はなかった。
以前の建物を改修し、拡張したらしい。
しかし、駅前の雰囲気はほとんど変わっていなかった。
ここから先は
¥ 200
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?