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「ランチのためだけに」2017年10月(パリ~ストラスブール往復):「TGV(フランス高速鉄道)乗車記録」第13話

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見出し画像:ストラスブール駅の壁面彫刻。

*本文中に、写真はありません。
*駅や列車の設備、システムなどは、ひんぱんに変更されます。
記述内容は、あくまでも乗車当時のものであることをご理解ください。
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都会が好きだ。

私はあまり社交的ではなく、ひとりの時間を心ゆくまで楽しみたい人間だが、人里離れたところで一生を過ごしたいとは思わない。

それぞれの個性をもった人びとが生活するエネルギーに満ちた活気あふれる空間で、自分自身の人生を確立したいと考えている。

学生時代に語学研修で訪れたときをのぞき、私はずっとひとりでフランスを旅行してきた。
ひとりの身軽さ、ひとりの解放感が、旅をよりいっそう豊かなものにする。

しかし、ひとりだと困ることがふたつだけある。
大きな荷物をちょっと誰かに見ていてもらえないことと、カップルで行くのが基本の高級レストランに入りづらいことだ。

食事に関していえば、旅行のあいだ、私は昼食をメインにして、夕食は軽く済ませることが多い。
だから、ランチの選択は重要だ。
おいしくて、ボリュームがあり、価格は控えめ、というのが望ましい。

はじめから行くと決めている場所は別だが、私はほぼ直感でそのときに入る店を選ぶ。
そして、ほとんどの場合、それは「当たり」だ。

いままで訪れた場所で、ランチのためだけにパリから足をのばしてもよいと思っている町がいくつかある。
そのひとつが、すでに語った第3話とこの第13話で語るストラスブールである。

***

この年、私は東京からパリに到着して3日目に、フランス南西部の都市トゥールーズへ移動する計画を立てていた。

パリに到着する日は空港に着くのが夕方なので、ホテルにチェックインしたあと、ちょっと用事を済ませたり食事をするために外出するだけで、かなり遅い時間になってしまう。

なので、翌日の2日目は、パリでのんびりするほうが身体が休まってよいのだが、どこか土地勘のあるところに少しだけ足をのばしてみたくなった。

近郊列車で行くことのできるパリ郊外ではなく、TGVに乗りたい。
第2話で書いたランスへは45分で行けるので、最初はランスにしようと考えた。
街全体の雰囲気がよく、おいしそうな飲食店をたくさん見かけたからだ。

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