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バイアスを外して、人間の可能性を引き出したい/Eureka! 代表 寺島ゆりかさん

アートとコミュニケーションを融合したワークショップを開催し、バイアス(固定観念)に気づくことを通して人間の可能性を広げたい、という思いで活動をしている、Eureka!代表の寺島ゆりかさんにお話しを伺いました。

出身地:東京
活動地域:日本
経歴:カリフォルニア州立大学へ留学後、日本で最初に営業を始めた西洋古美術商に入社。数千点に及ぶ美術品を扱う。鑑定、売買などの経験を通じ、古美術を実践的に学ぶ。イギリスロンドンに留学、Sotheby's Institute of Artにてアート・ビジネスを修了。
2018年〜 Eureka!主催
オリジナルプログラムを考案、提供
現在の職業・活動:Eureka!代表
好きな言葉:•Festina Lente(ゆっくり急げ)
      •ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず(方丈記)

記者:Eureka!(ユーレカ!)という言葉は、どのような意味ですか。

寺島さん(以下、寺島、敬称略):Eureka! というのは、アハモーメントで、何かを発見・発明したことを喜ぶ時に使う言葉です。「あ、なるほど!そうだったんだ!」という意味合いで使います。私は、現在アート作品を通して、「バイアス=固定観念」を外すワークショップを開催しているのですが、最後に参加者の皆さんに「気づき=Eureka!」を発表してもらっています。

◆「自分とは違う意見」という「外」に出会う優しさを持つ事で、差別や偏見のない社会を創りたい


Q:寺島さんの夢やビジョンを教えて下さい。

寺島:お互いがもう少し優しくなって、差別や偏見のない社会を創りたいです。人間は、気づかないうちに常識に固まっていきます。でも「自分にとっての当たり前=自分の枠=バイアス」に気づき、それを緩める事ができれば、多角的に物事をみる事ができるようになります。バイアスを緩めることで、「自分とは違う意見」という「外」と出会える事ができると思うのです。そうすれば、「ちょっと待てよ。そういう風に思い込んでいたけど、違う見方もある。もしかして、すれ違っているだけかも」という風に、もう少し優しい世界になります。自分なりの常識に固まっていたら勿体無いです。そのような発見や気づきに満ちた毎日が送れるようなサービスを提供していきたいです。

◆Eureka! が日常に溢れるように

Q:「差別や偏見のない社会を創りたい」とい夢を実現するために、どのような目標や計画を立てていますか?

寺島:短期的には、今やっているEureka!のワークショップを、より多くの人に提供していきつつ、今後は企業様やビジネスマン向け、地域コミュニティの方向けも含めて、その人やグループの感性やコミュニケーションを引き出すのに、何が一番最適であるかを取捨選択していこうと考えています。そして、国内だけではなく国外にもサービスを提供していきたいです。また、自分のバイアスを可視化できるニュースサイトを作りたいと思っています。それを可視化することで、自分が取りにいかない情報の傾向をマップ上に示し、気づきに繋がるようなサイトを作りたいです。長期的な目標だと「 Eureka! 」という言葉が日常会話の中で使われるようになったら最高ですね。

◆性別・年齢・肩書きを全部外して楽しんでもらいたい

Q:夢を実現するために、現在どのような活動をしていますか?

寺島:2時間くらいのワークショップで1つの作品を掘り下げて頂くこともあれば、美術館に行き、テーマ(質問)を参加者へ事前に渡した上で、自由に作品を鑑賞して頂き、その後ディスカッションをする事もあります。先日は大学で、10代の現役学生から50代のOBの方まで一緒になってワークをしました。同じ作品で、同じ質問を渡しているのですが、参加者から出てくる印象、感想、イメージが違っていて皆さんびっくりされていました。普段あまり考えないことを、敢えてしていただくことによって、普段出てこないその人なりの個性を、アートという共通のフィルターを通すことによって引き出す事ができると感じています。そのために、参加者のみなさんには、「性別や年齢、職業などは横に置いておきましょう」というのをお約束ごとにしています。その状態で、自分からどんな気づきやイメージが出てくるのかを楽しんで頂ければと思っています。ただ、それでも今までの経験が出てきてしまいます。逆にそれが自分でも驚きになるし、発見に繋がるという側面もあります。

Q:寺島さんが活動するにあたって、大事にしていることはありますか?

寺島:私自身のバイアスが入らないようにするために、自分の考えはあまりワークショップで言ういうことは控えています。ワークを通してその方から出る気づきや発見、価値観を引き出したいと思っています。そして、意見が極端に偏ることがないように、他の人と違う意見はもちろんのこと、同じ意見でも自信を持ってシェアして頂きたいという事を伝えるようにしています。

◆「知ること」、「想像すること」、「視点を変えてみること」

Q:「差別や偏見のない社会を創りたい」という夢やビジョンを描くようになったきっかけには、 どの様な発見や出会いがありましたか?

寺島:小さい頃から、重度のアトピーだったんです。その症状がピークだった時、私に対する相手の対応は分かれるんですよね。そのままの私に接してくださる方もいるし、そうではない方もいらっしゃいました。悪気があっての事ではないと分かっていても、悔しい思いをする事もありましたし、傷つく事もありました。それとは別の経験で、アメリカに留学していた時に、スーパーでミルクを買って帰る途中で、突然現地の人に「国に帰れ!このアジア人が!」と罵声を浴びせられ、缶を投げつけられた事がありました。私は「えっ!なんで?」と思って本当にびっくりしたんです。突き詰めて考えてみると、「相手の立場に立ってみる」ということと「知識」が欠けていたのかなって。もしその人の中に、一人でもアジア人の友達がいたり旅行したことがあって親近感があったら、そうはしなかったかもしれないと思いました。だから「知らない」という事が、すごく怖いと思いました。それと、相手の立場が想像できないというのが致命的だと感じました。ですから、私は「知ること」、「想像すること」、「視点を変えてみること」が大事だと思っていて、この3つを提供できるようなサービスを世の中に出していきたいと思っています。

◆肩書きや背景という枠を外し、中心にある本質にアプローチしていきたい


記者:「知らない」という事が、偏見や差別を生むという事を発見されたんですね。

寺島:全部むいてしまえば「人」しかないと思います。枠=バイアスは、その人の考え方や価値観はもちろんですが、今持っている肩書、背景、国籍、性別なども全部枠だと思うので、それを剥いでしまったところにある本質にアプローチして育てていけば、もっと魅力的な人が増えますし、そこでお互いのコミュニーケーションがとれれば最高です。そしてもうひとつ、情報リテラシーがとても重要だと思います。今の時代、情報がとても多いので、自分が見聞きする情報だけを信じてしまうことに疑問を持つことが大事です。盲目的に知ろうとせずに、自分の力で多角的な視点でみてみること、そして情報をどういう風に精査して、自分で考えて扱っていくのか、ということがますます大事であると感じています。

記者:読者のみなさまへ、メッセージをお願いします。

寺島:自分の中に可能性が必ずある、ということを信じてほしいと思います。「自分には可能性がない、強みがない」とおっしゃる方にお会いすると、本当に寂しくなります。絶対みなさんの中にあります。出会いの中で気づくものですから、人と関わることを恐れないで、人生を楽しんで欲しいと思います。

記者:人間にはみんな可能性や強みがある、ということを一人でも多くの人に気づいてもらいたいという真っ直ぐな姿勢に、私たちも心が震えました。今日は貴重なお話しをありがとうございました。

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【編集後記】
今回、記者を担当しました菱谷と杉本です。
ご自身の経験を通して、人間の部分観からくる偏見や決めつけに対する問題意識を持たれている事が印象的でした。どんな事があっても諦めずに、人間の可能性を追求してきた生き方に感動しました。これからの寺島さんのご活躍がとても楽しみです。
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この記事は、リライズ・ニュースマガジン“美しい時代を創る人達”にも掲載されています。


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