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ピッツィカート & バルトーク

ピッツィカートは難しい奏法ではないので、わりと気が楽ですよね。でも、きれいな音を出すにはやはりコツがいります。(2020.10.08 加筆 一部修正)


ピッツィカートって元々なんだったんだろう

「歴史的に初めてピッツィカートを求めたのはバロック時代のオペラ作曲家モンテヴェルディだと言われている(『四季』の「冬」では冬の日の冷たい雨だれをピッツィカートで表現している)。しかし当時の演奏者は「ヴァイオリンは弓で弾く楽器として高度に発展しているのに、なぜ野蛮な民俗楽器のような撥弦奏法をしなければいけないのか」と猛反発したという。」(wiki
(四季の「冬」はリンク先で少し聴けます)

もともとは、よそにあったものが、バイオリンの奏法に取り入れられて定着し、それが輸入されて箏でも取り入れられるように。
民俗楽器の撥弦奏法(どこのだろう?)→イタリアで擦弦楽器バイオリンへ→日本で撥弦楽器の箏へ。面白い伝わり方です。

「箏
日本の箏において、大正時代以後の新日本音楽ではピッツィカートと呼ばれる奏法を用いることがある(稀に訛って「ピヂカット」と呼ぶ記述もある)。通常では箏は右手の親指・人差し指・中指に義爪をつけて演奏するが、義爪を嵌めていない薬指(稀に小指)や左手で弦を弾くことを指す。これによりやわらかい音色が得られる。」(wiki


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? ピッツィカートの略称はピッツ ?

楽譜上の表記では「pizz.」と書かれますが。
口語ではピッチカートっていいますか、ピッツっていいますか?ふつうはどっちかな、私はピアノで楽語を習ったときに一覧から pizz.=ピッチカートと先生がそう口に出してたのでそうしていましたが。
部活へ入ったとき、色んなことで「この違いは業界の差かここのコミュニティの文化か」と思ったことが多々ありw よくわからんままでしたw

調べてみましたが「ピッツ」で検索しても、音楽用語としてのヒット件数が少なすぎる、多分あまり文章中ではカタカナの略称でピッツとは表記しないと思われます。
(部活語の一つかも。)
「ピッチカート」「ピッツィカート」とカタカナ表記するのが普通のようです。
(アルファベット表記の時は「.(ピリオド)」まで書かないとですよ)
(曲紹介の記事を書く時は気をつけてほしいな)

さて肝心の部分はここから。

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★ピッツィカートのコツ★

・使う指

■ 右手
薬指 or 繊細な音を出したいなら小指。(高音域で小指を使う人はけっこういるみたい、巾でよく見ます)
■ 左手
薬指 or 強い音・しっかりした音(フォルテなど)をとりたいなら、中指(特に十七絃)。

何となくですが、使う指の太さ、しっかり太い音(中指)⇔ 繊細な細い音(小指)という使い分けをしてる感じもあります。(単に、指の皮の硬さや痛さを分散しているだけなのかもしれないけど)

・指の使い方

基礎練習の時、第一関節くらいまで指をぐいと入れて引っかけるだけ、という練習をしていると、「いい音」にはなりにくいので、指の入れ方は注意です。
基本、爪の使い方と同じ。爪の三角のところ、「爪先3mm」というように、指の先も、「爪(の指の腹側)3mmくらい」を、同じように三角にかけます。

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「指の生爪の角を使う」ように意識して指を絃にかけ、指先に力を入れて、持ち上げます。
絃に力負けすると、”ズルリ”という指の腹の皮で絃をこする微少な音が入ってしまうので、絃の張力に負けないよう、指先を固めて、手ごと上に引き抜くのがポイント。

・かける面積

かける面積が小さいほど、硬質で澄んだ「ぴん」という音に、かける面積が大きいほど、太くて丸い「ぽん」という音に。
指先の固め具合でも変わるので、いろいろ試してみて下さい。
(曲・場面の雰囲気に合わせて使い分けられるようになると、熟練のうまみが)

かける面積をとても大きく、爪で支えるのではなく「指の中の骨」で支えるようにとり、腕ごと引き抜くように上げると、「ボン」「ドカン」という打楽器のような強い音にもなります。(バルトークはこれで。後述)
十七絃の低音はこれでやると、とても厚みのある迫力が出せると思います。ただ、絃に指の皮が負けるので、ズルむけ必至…
やるなら、ガーゼ等のクッション材+テーピングとか、対策をした方がいいかも。あまりオススメはしません。肉を切らせて骨を断つ的な何かです。

・あげ方

手は上に上げる、と言われると思います。
スローの解説をすると、いったん絃へ指先を置き、手間側へ軽く押しつけてから、上げる。「L字形」かな。
これを、できれば一瞬で行います。

フォルテの時
フォルテのピッツィカートが続く時、力が入りづらく迫力が出せなくて困る。
真上に上げる意識が強すぎると、指先のかかりが弱くなりがちなのですね。
そういうときは、真上でなく、「自分の方向へ引っかけて引っ張る」。
「✓字形」です。

なぜかというと。
十七絃講習会の記事でも書きましたが、手の動きは円を描くように動かすのが一番効率的。(回転・螺旋の運動)

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手の動きの自然さでも、手前へ引いた方が力が入りやすいので、こっちをオススメ。(図は大げさに書いてありますけど、多少の変更で大丈夫なはずです)

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★★★「同音鳴絃」の注意

十七絃講習」記事でも書きましたが、鳴っている絃を続けて弾くとき、注意。
ピッツィカートは、十七絃の「ジッ」「ビリッ」とは違い、指が触ったときに「プツッ」という「音が消える音」がします。

待機時間に手の準備をしておこうと、絃に指を置いて待ってしまうこと、よくあるのですが、ダメですよ。
(これは音楽の流れを変なところで切ってしまうのと、「休符も音の一つ」で、変な休符が変なタイミングで入ってしまうため、聴いてるときはすごく耳障りです。目立ちます)

○ 解決方法
不用意に絃に触らないこと、触るときは一瞬で触って一瞬で上げること。
ホバリング、と説明するのですが、前の音の余韻の間、指を絃の間近へ待機させて(手は浮いている)、音を出すタイミングが来たら、即 かけるようにします。

これ、とくに左手の和音の伴奏の時にやりがちなので、左手の和音の取り方はよく練習しておいて下さい。
絃をつかむ加減が、右手よりもルーズになりがち。
(左手の和音については後述)

練習するときは「ぽーん・ぽーん」ではなく、「ぽー-ぽー-」と聞こえるような感覚でつないで下さいね。音の切れ目がない状態。
なるべく余韻の残り方が自分で聴き取れる、静かな場所で試すのをオススメします。

★★★速さ優先のときは

上級生になると時々ある、16分音符の「ポポポポ」という連続pizz.。
テンポが速いとき、普通の上げ方だと、速さに対応できないので、基本の形を逸脱するこの方法で。

上げずに、ひねる
弾き遅れの原因になるのが、ピッツィカートの「手の上下の往復時間」。そこを極限まで省くと、手首をひねる形になります。要は、手全体でなく、絃にかけた指先だけ数㎝、上に上がればいいのです。

この方法、小さい動作でもピッツィカートの指先にしっかり力を入れてかけられる(=音質はいつもと変わらない)ことが前提です。それから、全体をコンパクトに、連続動作は手の回転でつなぐことができること。

それから、”そうせざるを得なかったんだな”という理解をしてもらえる速度の時のみこれを使用することw テンポがゆっくりのときにこれをやると、必ず手の形を突っ込まれるので、多用禁物です。
(基本、手首をひっくり返すのはダメです、腕で上へあげるように言われるはず)

他でも同じなのですが、無駄な動きがあると、時間をとられて手がもたつくので、どこで時間がとられているか=音と音の間に隙間ができるか、よく聴いて、よく見て、検証しましょう。

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★左手のピッツィカート

単音の場合、基本のかけ方・動かし方は、右手と一緒です。
■ 使う指
中指・薬指・小指

和音になると親指を使います。伴奏の時は三音の和音もわりと多いですね。
■ 使う指
中指・人差し指 + 親指

和音の基本的な手の取り方は、「合わせ爪」を参考に。

合わせ爪と同じ感覚で、指を置き、ピッチカートの指のかけ方(生爪の角を意識)して、ぐっと掴み、そのまま上へ引き抜きます。
和音なので、親指と他の指の音が同じ音量で鳴るように、少しかけ方のバランスは注意して、指先の調整をして下さい。

手の形は「つ」ではなく、「コ」のイメージで。
つまむのではなく、掴む。特に連続音の時は、ここに注意。
しっかり掴めれば、大きな音で鳴らせますし、いい音にもなります。音の形も意識できると、ぐっとクオリティが上がりますよ。

掴むことができれば、分散和音=「アルペジオ」の左手ができるようになります。基本はしっかり押さえておきましょう。アルペジオは少し力がいるので、指のかけ方に特に注意です。

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バルトーク

「バルトーク・ピッツィカート:バルトークが好んで書いた奏法の俗称で、弾く際に弦を指板と垂直に強く引っ張って離して弦を指板にぶつけることである。硬質なアタックを伴う「バチン」という音になる。」(wiki

今回調べて、バルトークってバルトークさんの名前から命名されたのかと初めて知りました。(…いや思い返せば、ゐ先生が成果発表の時に説明してたかもだわ。いつだったかな)

バルトークといえば十七絃、低音域での「バチコーン!!!」です。よく柱が飛びます。もはや名物と言ってもいいくらい。
中音域~高音域だと、「ビシィ」という、楽器にヒビでも入ったかと思うような音がします。
あまりこの奏法は多くないですが、効果的に使いたいですね!

指の、かける面積をとても大きく、爪で支えるのではなく「指の中の骨」で支えるようにとり、腕ごと引き抜くように上げる。強く引っかけて高い位置で放す感じです。(と後輩に教わりました)

実のところ、私まともに曲でやったことがないのです、遊んだことはありますがw (十七絃はお弾初め用に2.3週間しかやった記憶がないので)
なので、柱を飛ばさないコツとかは書けないので、誰かに訊いて下さい;すまん;

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指が痛いときは

皮が厚くなるまでは、指の痛みとの戦いになるのは避けられないですが。
使う指を変えながら、無駄な反復練習はやめて、温存しましょう…としか。

マメができたら、その時点で練習をやめた方がよいです。余裕があるなら。
でもそんなこと言ってられないですよね。

マメができても、まだもう少し、というときは、テーピング or 絆創膏
テーピングは、絃に接触したあと離れが悪く粘着がミチミチいうことがあるので、気になるなら絆創膏かなぁ…
粘着のミチミチをさけるのに、縦ライン(指をぐるぐる巻きにしない方向)で貼ってみたり、いろいろやってた記憶。

痛いときは、キズパワーパッドを緩衝材にしようとしたけど、その上からテーピングしても指の感覚が変わるからやめたかも(このへん記憶があやふや)

(マメの水は抜かない方が、痛みが少なく、皮膚の回復も早いので、針で刺して潰さないように。自然に水が抜けるまで、皮が破れないように、ケアなしでの練習は控えた方がよいと思います、個人的には)

・他の弦楽器の人の方法

検索すると、弦楽器の人もピッツィカートで指痛くて大変みたいですね。
何か防護にいいもの使ってたりしないかと思ったんですけど、指の感覚が変わるから、テーピングすらNGの人もいたり。あまり役に立ちそうなものはみつからなかった。

(検索してて、個人的にシリコンのトゥ・キャップというものが、押さえのときの指の痛みの軽減に使えないかなと思ったけど、家に楽器がなくて試せないので笑
誰か試してほしいかも。指サックはすぐ破れちゃったんだよね)

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2018.07 ピッチカート表記を「ピッツィカート」に改めました。

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