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演奏会前:動画発表会の感想メモ

限定公開の動画を拝見しました。(はな・宙・シンシア、とりあえずおわりました。20210201.お代わりが来たのでとりあえず終了。すごく長くて読みにくくてごめん)

合奏、メインパートの方を練習の時は見てしまいがちなのですが、曲のクオリティを決めるのは、実際は伴奏なので。
あまり日がないのは承知ですが、「今からの伴奏の底上げ」を重視して?感想を書きたいと思います。
使えるところがあったら使って下さい。

あと状況をよく分かっていないので、よく分からずに書いている部分がきっとたくさんありますことをご了承&ご容赦を頂きたく。

*曲作りに関しては、マガジンから「奏」に分類した記事から探すと早いかも。過去10年のブログ記事から、使えそうな部分だけを抜き出してあります。


一曲目、はなはなはな。

p1.[A] 
出だし、十七絃ソロ、楽譜はAについて「軽やかに」と言う指定なのに非常に重い。(これは引き続いてA全体にかかる問題でもありますが、特に曲の雰囲気を提示する冒頭でしっかり聴者へ伝えるためにも、この出だし十七絃が非常に重要)
 ここは、4拍ある小節の、拍頭とその他の弾き分けがはっきりできていないせい。二、二、二、~ がほぼ同じ大きさで来るので、ここを二、(二、二、)~ くらいにする。カッコ内で軽さを演出、ポンポンと。

 つづいて左手3つのアルペジオ、1音目があまり聞こえてこないのは、指のかけ方のせいかな。ここは、左手で変化をつける場所になるので、爪以上にしっかり聞こえて欲しいところ、音質音量ともにもっとがんばって。
 その後、親指でまっすぐ弾き下ろす6~の部分、拍にキッチリはまっていない。そこは手先を固めてひじで押していくと指先がぐらつかずにきれいにそろうと思う。動画では、特に二行目で、十~の部分、下の方へ行くと手首の角度が変わってきている(折れてくる)ので、そこが不安定になる原因かも? 前傾・後傾姿勢の活用と、ひじの位置を調整して、いい形をキープ。

 p1、十七絃、全体的に拍が不安定です。拍の数え方は1拍4つ(一番細かいのに合わせる)こと。特に、おりてくる後半から九、九、九、九、でテンポが狂うので、たららら、たららら、と数えていくといいかも。各所で△の休符の長さが甘い(ちょっと長い)です、きっちり拍のど真ん中を針で突く感覚で、正確に。もたつきが目立つのはそのせいかと。
 細かい場所でもたつきが多いのは、手の重心が、やや支え(薬指)の方へのっているせいのような気もします。十七絃はどちらかというと親指の方へ重心が近い方が力も入りやすいし、安定する気が。(この辺が、箏と同じように弾いてはいけないという理由のひとつかも)指で弾くのではなく、手と手首で弾いていく感じ?
(もたつきについては、楽器の特性もあるかも。旧十七は、絃がたわみやすいので、細かい手が多いときは、その曲だけきつめに締めた方がいいです。柱の位置なんて数㎝ずれたって弾けるでしょ大丈夫。上から手のひらで押さえて絃がたわむようなら、締めちゃって下さい。加減してね)
 ソロとしては、流れを意識して、アクセントをつける部分と、少し軽く抜く部分と、普通の部分と、みっつくらいの弾き分けができれば、プラスして強弱を入れれると、立体感がきれいに出て華やかになると思います。

p2. 三絃が入る部分、十七絃はほぼ伴奏ですので、もう少し相手を引き立たせる努力を。完全に食ってます。音量と音質を変更しましょう。
 p2. p3. あたり(ここに限らずですが)、伴奏パート、本当の伴奏(なくても成立する)部分と、合いの手(ないと成立しない)部分が存在していて、ここは交互に来ているのですが、そこ楽譜の読み取りはできていますか。
 P2の十七絃、掛け合い(三絃がお休みのところに入る)部分は、出て来てもいいんですけれど、そうでない部分(三絃 他と被る)は、むしろない方がいいくらいなので、細かな役割をもう少し理解して演奏すると、かっこよくなります。(掛け合いは歌ってみると分かります)

 さらに言えば、尺八の入る直前の1音は「どうぞ」の気持ちで入れてほしい。具体的に言えば、尺の音に繋げられるような柔らかめの音で、一区切りを納めて下さい。
 ここ三絃も同様に、伴奏側には、実は尺の最初の一音と同じ<A>の音が設定されているんですよ。同じものが並ぶのに、音量音質の差が大きすぎるから、悪目立ちしてしまっています。
(こういうテクニックはどの曲でも必要になる事があります、「メインパートの出だしは、伴奏の引き立て一つで決まりますので、伴奏は直前を特に注意」ですよ)

 そして、演奏中は、尺がメインパートなのであれば、尺の音の流れ(高低)に合わせて強弱を。伴奏パートは自分の弾きやすさ重視で適当な形を作ってはいけない。必ず、メインパートの音に沿わせて、「基本は己を殺す」、これ大事。
 そして、メインパート。尺は、影のように登場してはいけない。かならず、バトンパスを受け取りましたの意識を持って、ハッキリと、聴者に姿を見せることが大事。なので、尺は出だしをもっと大事に、できれば1音目から鮮やかに美しく。理想は、絃を三人相手にしてもがっつり通る音が作れるといいけど、これはまだ難しいでしょうか。(本来尺はそういう楽器のはずだと聞いたことがあります、五味君に←名前出しちゃったけどソースとしてかいておく)

p4.[B]
 箏が登場する。ここは箏の印象が弱いですね。一番動きがある音の並びなのに、一番、動感がない。アクセントとフレーズの形をもっと出したいところです。
 それと、ここも、直前の伴奏の音が同じ<B>の設定なので、普通に弾いたら三対一、当然埋もれます。もっとガッツリ弾きましょう。
 で、ここが引き立たないのは、やはり伴奏側が実は悪いです。いや普通に弾いてたら結果が悪くなるものなのです。だから、伴奏側も一工夫して、三対一の音量バランスをもっと意識的に調整して下さいね。
 p3は全体的にルーズです。箏は△の休符が甘いところが多い。そして十七絃、特に難しい場所ではないので気が抜けてるかもしれませんが、普通に弾くと拍遅れしやすい楽器ですから、気を抜かずに、細かい「たららら」で拍取りをして下さい。その他の楽器も、いまいち拍の真ん中に来ていないので、きっちり拍感を揃えられるように。
 万が一、ずれたときは誰に合わせるか、など、リカバリーの仕方を決めておくといいです、これはメインパートか十七絃になる事が多いですが、誰に合わせて演奏するかを決めるのは、全体をまとめる上でとっても大事です。

p5.L2.ケ(消し)。たいていケが出てくる部分は、動的な場面になるのですが、なぜか動感がないです。和音が大人しいので、ケの本来持つはずのシャープな音を活かせていないのかな。それと、その前の場面との切り替えの差を考えた、カットインの演出がされていない。そこもルーズな印象になりがちな原因かも。この場面はもっとキラっとするような音の使い方が欲しいところですね、とくにメインパートになる箏の高音の良さが出て来て欲しいかも。

p7. 箏のトレモロ、手をつくせいで音の立ち上がりがもったりします。手をつかずにやれるのが一番いいのですが、難しいでしょうか。無理なら来年ですね、手をつかずに軽やかにひけるのが理想です。
 ここは直前の十七絃が軽やかにおりてくるので、そこに同じ雰囲気で乗せたいところ。

 └ ★★★ケシについて

 章の切り替わりでいちいち音消しに絃をおさえるのはやってはいけない。理由は二つ。

 ケって、ひとつの音なんですよ。舞台では耳で聞こえるサイズの「プツッ」ってノイズ音が入ってしまうので、そんな所で使われたら興ざめです。あれがきこえないって耳悪いのかなレベルなんですがw 邦楽部さんはよく使いますね…なんで?
(聞こえる聞こえないは別として、意味を説明すると。ケシで全ての音が消えるときは、その世界の消滅の時間が来たときだとでも思っておいて下さい。章の変化の場合は、場面転換=継続しての移動なので、意味合いが全然違います)
(例外は、G.P. のとき。世界を急停止させる演出の時だけ。ここは「ぶっつり」音をぶった切ることでそれを演出します)
 で、演出の問題がもうひとつ。
 ソロ前でケを入れた十七絃、その手の動きがあるせいで、二章ソロの入りに時間的余裕がなく見えてしまうのもよくない。つまり、現状では、間の静寂が、ケの動作によって完全に存在しないことになっているのです。視覚的に。ケさえなければ成立させられた。それは動画を見れば分かると思う。
 見た目の問題、同様に、尺の楽器を置く動作も、もう少し早くスタートさせておかないと、ソロの前の静寂が短く感じてしまいます。いい感じの間を作れるように、そこは研究して下さい。(動作の一つも、目で見たときは、音と同様に「舞台上の存在」として認知され得ることを意識してください)

 └ 二章

 [C] ソロの出だしのアルペジオは、もう少しひとかたまり感が欲しいですね、今は単音のパラパラで風情がないです。ゆっくりに弾いても、そこだけがアルペジオだと分かるように、アクセントと滑らかさがもっと必要かも。
 そして、アルペジオの装飾をされた一音からが、フレーズとしてどう機能しているのかを、もっと研究した方がいいです。
 この一行は2パーツに分かれます。上へ行っておりてくる山型の形が、バリエーションを変えて2連続かと。あまり理解がされていないような曖昧な弾き方の気がしたので、気になりました。一行を二小節ずつの分割に認識していないかな、大丈夫かな。
 そこの理解がされていれば、真ん中の一~の部分をもう少し使える気がする、前後の山型の差をつける弾き分け用のパーツ(アルペジオ ⇄ 普通の上昇)として。
 出だしをソロっぽくするなら、もっと全体的に緩急とタメが必要かもしれません、ちょっと普通すぎる。
 尺ももっとフレーズの形を分かりやすく出せるように、上下の音の動きを形にして下さい。全部のっぺりと同じに聞こえてしまって、せっかくの場所がもったいないですね。「ゆったりと」の指定なので、尺は息が苦しいとは思います。がんばって。ここは、フレーズの形を歌ってみて、それを同じように尺から出せるように練習すると、それらしく作れると思います。
 そして十七絃のpizz.。風情…風情を…。ここは広がりを表現したいところです、つまりは柔らかくて尺の低音の底支えになるような、溶ける音。箏 ⇄ 十七+尺の構成にするために、もっと引きの美しさを求めたい。出てくるな。w

 └ 三章

p9.[D] 指定は「明るく、いきいきと」。こういう指定はわりと得意なことが多いので、弾きやすいかな。
 三絃のスリさげの出だしが曖昧でかっこよさが半減してしまっているので、一音目の拍頭をキッチリ決めて下さい。ルーズに弾くと、聴者はだいぶあとからの認識になるので、2秒くらい損します。
 かっこよさの演出をしようと思うと、もう少し全体的に、音の動きに連動させた強弱を鮮やかにつけたいところかな、全体的に薄味です。
 アクセントももっと欲しい。箏の二音の掴み込みの合わせ、手の形が「ハ」に近いので、手が大きいなら「コ」にするともっとガツッとした角の立つ音にできるし、それがやれれば、gliss.の柔らかさなどと、音質の変化でメリハリがつけやすいかなとか。
 箏は押さえの手の準備が遅いです、ずっと押さえは八しかないぽいですけど、人差し指を八の絃にかかる位置に手をセットしておけば問題ないはず。なぜか左手がヒラヒラしているのにセットが遅い。押さえる動作も、△の半拍分もあるのだから、もう少ししっかり音を作りましょう。一音として成立していると言えるのだろうかと思う音もありました。押さえの高速ヲハ練習をがんばりましょう。十六分音符でできるようにね!
p16 L2 箏のスクイは返りの音が遅いですかね? 動作が大きいせいなのかな、ロスも大きく見えます。もっと小さい動作で上げられそうですが。音のずれは、三絃さんも少し返りがルーズ気味かなと思うけれど、そこはきっちり拍で揃えてかっこよくできるといいな。

p17ラスト 三行目頭にスタッカートがありますが、曲中の「・」は、「音符の長さを半分に」の意味ですので、テンポを緩めた場合は、それに即した長さにすること、十七絃がただの短い音になっています。ここはテンポに合わせて風情を残す。

 全体的に、見せ場の設定がされていないので、あまり印象に残りません。三章ある中のそれぞれの見せ場、全体の見せ場=三章の演出、シメの落とし方、そのあたりが研究されると、華やかな曲になりそうです。
 あとは、楽器の特性をどう活かすのか。その楽器にしかできない奏法があるはずなのですが、もっと使えると面白く思ってもらえそうです。
 「メリハリは、奏者の思っている感覚の三倍つけろ」といわれることもあるくらいですので。今は、絹ごし豆腐みたいな感触ですね。悪くはない。でも、どうせなら適宜、醤油と薬味が欲しいです。特に後半、飽きてきちゃう。
 今のメンバーでしかできない味が出せるといいですね。


尺曲と三絃は割愛。
ごめんね時間があれば追記します。

シンシア

 この曲は楽器が奥であまり手がはっきり見えない…。動画を撮るときは余白は要らないので、少人数の時はもっと配置を前にしてもらえたら嬉しいです。もしくはカメラを前へ。

p1.[1] 「のびやかに」ソロっぽい感じはありますが、まだもう少し突き詰めれば広がりや伸び縮みみたいな部分が表現できそうな(期待)
 二行目から、相手の音に伴奏側からアルペジオを当てる構成ですが、ここ、拍頭はどこに設定されてるのかが不明…
 一音に対してアルペジオを当てるとき、2パターンあるんですね。拍頭に、アルペジオの先頭の音を合わせるのか、最後の音を合わせるのか。つまり、四音のアルペジオと一音、1234の1で合わせるのか、1234の4で合わせるのか、です。
 この曲は、三行目のラストに「後押さえのヲハヲハ」がつくので、アルペジオの最後の音を拍頭に合わせる(1234の4で合わせる)方が、きれいにおさまると思います。そうすれば、たらら「ら」ーん+ヲハヲハヲハ… という余韻のきれいさを引き立たせられる気がします。この楽譜、三連符とか組み合わせてさらに緩急つけられてるから、アルペジオを前に食い込ませても合わせやすいし、最後は17がアルペジオを待っても構わないくらいの間は違和感なく作れると思う。この部分は拍通りに弾かずに、きれいさを優先にしてよい。ほどよい感覚は歌ってみて掴んで。

p2. [2] 「軽快に」。ここ、前の雰囲気を引きずってるのか、箏の△の休符が全体的に微妙に遅いです。全部をもっと小気味よく、気分をしっかり切り替えて。とくに和音の後の △九七五 などが、ゆったりしてしまっていて変にエレガント、ここを修正するだけでかなりかわるはず。
 そのせいで、雰囲気の切り替わりが[3]になっているので、違和感があります。繋がってなくていきなり始まった感じに聞こえる。[3]に入る前は、テンポが変わるので少し加速してもいいかな、音数が少ないところから急に増えるから、そのごちゃっと感もできればそこの加速で消しておきたいかも。
 ごちゃっと感がでるのは、箏の和音が三音になるせいなのかな、どうなんだろう。弾きづらいとは思うんですよね、三音の和音の連続。手が疲れるし。そのせいでか、△がルーズ。ベースの音質がキレイめなだけに、不完全なのが目立ってる気がします。
 和音取るときに、手の上下動作が大きすぎるんだろうか、定型で移動していくなら、そう大きく上下させなくてもいいから、ホバリングで。多少は体力温存しておく方がいいかも。

p3. [4] ここはどっちが伴奏? 十七絃がメロディっぽく聞こえるけど、それならそれでハッキリさせた方がいい気がする。
 箏が伴奏なら、高音の方が通りがいいので余計に抑えた方がいいし、音質も十七絃が引き立つように考えてもいいかもしれない。十七絃はメロディを担当するならもっと明らかに鮮やかに弾かないと、伴奏みたいに聞こえているので、動きがあっても耳に入らないです、特に低音は、芯を入れて固めに前に出すようにしないと、音が広がってしまって、お客さんに届く音になりにくいので。
 メロディ担当する人は、カラオケでサビを歌うときのように気持ちを張って、大きな声を出すように楽器を扱うこと。これできてるつもりでできてないこと多いので、特に伴奏が多いパートは注意してやるといいです。

[5] フォルテの指定で入りの箏だけはそれっぽかったけれど、あとはズルズル音量キープされなくて「?」って思ったんですが、これはどこまでフォルテだったのかな。
 表現には、音量と音質の使い分けが必須ですが、ここからここまで!という分かりやすい場面の演出を組み合わせることが必要で。一場面としての塊がなくて微妙かなと…場面って、塊なんですよ。区切りまでは、統一感を持たせないと、曲の構成が分からなくなっちゃう。
 で、伴奏が弱いのかな。アクセント強くするだけで躍動感とか、強さを表現できるので、そこのサポートがあれば、もう少しフォルテっぽくだせたかも。

[6] [7] ここらへんの構成、関係が分からないな、6落とし7あげという構成なんだろうなと思うんだけど、[4] [5]とはセットでいいのだろうか。
*[4]の直前は箏△八九九アクセントつきなんだけど一瞬アゲで[4]=静的、
*[5]は箏パートにフォルテ、
*[6]静的+[7]の直前には楽譜にはアクセント無し(だけど演奏には演出がついている)、
*[7]十七絃パートにフォルテ、の構成なのか?
 これ楽譜の表記が落ちてるという可能性もあるから分からないけど。
 しかし、静的場面の直前にちょいあげがついて、動的場面の直前にはつかない(=カットイン)、ということなんだろうか、悩むな。統一感がないので…。
 これが、二箇所とも、静的場面のまえはちょいアゲで落差のオチ感を出し、ということならば、まだ分かりやすいんだけど。曲リーダーさんの考えを聞いてみたいな。

[8] ここまできてようやく、[8]=[2]だと分かりました。ということは、3~7がサンドイッチの具、ここの構成の内訳なのね。
 奇数ということは、中心線から鏡面かなーとか考えたけど、どう見ても楽譜はそうではないw 同じ形の違う組み合わせが複数試されているみたい。これはさらっと流してしまった方がいいのかも。どうなのかな。
 とりあえず楽譜通りにいくなら、メインパートの指定のされている場所は、それぞれがもっとメインらしく演奏し、そうではない側は伴奏として引き立てるように工夫する。でいいのかも。
[8]の終わり方は、もっともっと余韻を作った方がいい。今のだとただテンポを落としただけで、情感が感じられない。続きの十七ソロへの花道を作ってやらないと、曲が変わりすぎてしまう。

 └ ★ 緩急のつけ方

[9] 「気持ちを込めて」、ここまでハッキリと指定されるからには、かなりやらないといけない場面ですね。

 緩急のつけ方。
私は「プラス・マイナス ゼロ」という言い方をするのですが、緩い曲線で描かれたグラフのような、中心から線対称の上げ下げをつけようにすると、バランスが取りやすいです。つまり、最初と最後が同じテンポになるようにして、その中で調整します。
 調整のやり方は幾つかあって、
・急加速・トップスピードを長めに・急に減速、という台形の型もありだし、
・緩やかに加速してトップスピードに乗せてまた緩やかに落として、
という裾野の広い三角のもありです。フレーズの長さにもよりますし、ベースのテンポにもよります、トップの位置をずらしたりもしますし、ここはその時々によってです。でも基本的に、元に戻す。(ソロの最後以外は)
 緩急の山をつけるのは、ゆっくりのベースからあげた方が楽で、差がつけられる分、ドラマチック。特にここの場合だと、「テンポ・ルバート」、自由にテンポを揺らして、という指定があるのでその通りにさせてもらっちゃいましょう。

tempo rubato
=「ある音符が他の音符の音の長さを盗むもの、すなわち(盗まれた音符の長さがそのぶん短くなることによって)より長いスパンではテンポを崩さず、辻褄を合わせるように演奏するべきものだと説明している。」wiki
(つじつまを合わせる=プラスマイナスゼロ、ということなのかな。)

 なので、たっぷりめにテンポを取って、始めるといいかも。
 ソロ終わりには、フェルマータ部分にゆっくりめのユリを入れて、余韻と終わりました感を出してもいいですね。気持ちが入っているように「見せる」、そういう演出ももっとしていいと思う。
 で、その手の動きのぶんだけ、ゆったりと間・間隔を稼いで、次に行ってもいいので。(ここでたっぷりめに間を置く場合は、出だし(の直前のフェルマータ部分)もそれなりに間をたっぷりめに。プラスマイナスゼロって、間にも適用した方がよいです、前後のバランスをとるために)

[10] 箏のソロは、フレーズが短いので緩急のつけ方が非常に難しい感じを受けますが。もっと変化をつけたいなら、緩急の差を出すためにスタートのテンポをもっともっと落とした方がいいですね。ドラマチックになりそうな音の並びをしているから、もったいないです。それと。ソロの肝は、オペラ歌手のように陶酔感を出せ、です。もっと鳴らそう。
 ヒは、主音を大きく入れないと余韻までが聞こえない技法。なので、もっと大きめのアクセントを置くと、ヒまできれいに出せると思う。特に、フレーズの最高音+ここにしかない装飾音なので、この音はもっと特別扱いしてもいい。
 あと、ソロの質感が全部一緒なので、もっと面白くできるならしたいですね。例えば、L1 二小節目の最後、一で終わる部分を、もっと重々しくガツンと落とす。ここ、一にフェルマータがついている、プラス、ソロ内の最低音の一がここにしか入れられていない理由があるはずと思う、この低音を活かす工夫をもっとしてみてもいいのかも。
 ラスト三音のritはもっとかけた方が、終わり感が出ます。一行目と二行目のrit、楽譜上で位置が同じではない理由があるのですが、そこは考えてやっているのだろうか。
 もっと言えば、一行目と二行目は、形が同じに見せかけてわりと違う造りになっているのだけれど、そこの差を理解できてるのかな。
 十六八十~と各行頭で来る音、そこは違うふうに入れた方が後のフレーズが引き立つはずなので、フレーズの形の違いをもう少し読み込むといいでしょう。 

[11]  ここの部分は、曲の構成として、十七ソロ+箏ソロ+二人でソロを締める、という構成なのか、or[12]の導入なのか。多分12の導入だろうなと思ったのですけど、どうかな。
 [12]の導入であるなら、11の前はもっともっと開ける、そこが区切りの境目だと聴衆に理解させられるように。動画の状態では、あいだが少なくて構成が伝わりづらいです。

 始め方について。
 奏者はソロrit.で作ったテンポで、弾き終わったそのまま → 止まって間を一呼吸置いて → ゆっくり手を構え直して(ここに他があわせる)、合図、スタート。
 十七絃、箏ソロ中にもう構えに動いていますけど、あれは目立つからやめといた方がいいです、目がそっちに行ってしまう。無でいること。ソロの奏者以外は、ソロが弾き終わって、ソロ奏者が手を移動するのに合わせて手を出します。尺もそのタイミングで構えます。

 [11]は、メゾピアノの指定ですが、フォルテよりは小さく聞こえるけどもう少し。ピアノの指定があったら、音量は半分くらいの感覚で弾いて下さい。ピアニシモだったら聞こえるか聞こえないかくらいの感じです。
 …というのも、見えない星に目をこらすように、聞こえない音にはお客さんは耳をそばだてるものなので。小さい音の活用、集中させる=聞かせるための準備をさせる、という意味でも積極的に使うべき。
 (とくに、[12]が「激しく、情熱的に」という指定です、ここは落差をこれでもかとつけた方がボディーを叩けますから、音量も質感も小さく小さく。)
 十七絃、スタッカートの「・」がついていますが、これは「音符の長さを半分に」の意味なので、特に△部分を正確に取って下さい。「△ゝ△ゝ」が「んタんタ」になるように。ちょっと長い?
 その後のpizz.になったときに拍ずれしているので、左手と右手を駆使してきっちり。というか右手のお留守(滞空)が気になってしまうので両手を使っちゃいましょう。

 └ 変拍子以降

[12] うっ変拍子…!w 変拍子ー!(混乱するから好きじゃない)
 出だしの十七絃は、指先を固めて手ごと入れます。というか全体的に手ごとで引かないとたぶん辛いと思う、手がパタパタ気味なので「コ」の字に構えて前後に動かして使います。中指の安定感が違うはずなので試してみて。で、最初だけは手をつかずに叩き込むように引き入れると、もっと激しい音になると思う。拍が不安定なのも、弾き方の変更で少し解消するはず。
 箏と十七絃、両方キレがないですね、もっとバッキバキのキレッキレに半拍とってもらえると、かっこよくなると思う。(今はできてるかもしれない)

[14-15] 十七絃、フォルテで音作るときはもっと強く押さないとです。とくにパートの切り替わりの一音目がフレーズ内の一番の高音6で来るから、この音を一番出したい。でも、楽器の特性としてもとから弱いのです、1〜7あたりは。音域は箏にかぶるのに、音質が太くて柔らかいのですよね。ここの差を使うというよりは使いこなせってことだと思うけど難しい。
 で、十七絃のコツですけど、「フォルテは弾くんじゃない、押せ」。高音ほど箏みたいに弾くとやわやわ~のぽわぽわ~になるから。親指を固めて絃を切るくらいの気持ちで、手首ごと前に押しだす。一音ずつ、前の絃まで当てるつもりで、しっかり。なので、手を固めたままでの手首の前後移動を弾き方として意識すること。
 (箏にも共通するけど、「強く当てれば強い音」「堅めに当てれば硬い音」が作れる。逆は100%そうではないけど。w これを要所で使い分けるようにすると、表現の幅が出せるようになります。ちなみに弱音は指先に力を入れて、その状態で丁寧に粒の小さい音を出します、これはまた別で難しい)
 もし十七絃が高音部を使っているせいであまり前に音を出せないのなら、その分は伴奏の箏が音を弱めて差をつけて対応する。箏は17が単音で来るのに対して音数が多い、そのせいでどうしても目立ってしまいがちなので、全体を小さく抑えて、pizz.も響かないように入れるといいかと。
 で、その後のパートの入れ替わりは、一音目を強めにして、切り替えましたのアクセントを入れ、しっかりフォルテ感が出せるといいですね。
 15から十七絃はmp指定ですけど、そこまで差が感じられないので、その半分くらいで。

 押さえが出てくるときに十七絃、手がやけに柱から遠いのはなぜ。八くらいならそんなに腕伸ばさなくても?と思いますが。
 手の形、手が上から突き立てる形で入れてないから押さえにくそう?な感じもありますし。(手の甲が上向きになっていると指の長さ分だけ遠くなる、手の甲を客側に向けると指の分近くなる。物理で考えると上から下へ突き立てる方が、力は伝わりやすくなると思うのだけれども、くせになっているのなら今からの修正はしづらいか)
 柱から遠いほど、押さえ幅を深く取らないといけないのでしんどそう。いくら十七絃は柱から少し遠目がよいらしいとはきくけれども、そこまでするのはちょっと遠すぎな気がします。
 あと、そんなに姿勢を低くしなければならないなら、お尻を上げた方が。というのも、和装をすると動きの自由度が下がることが多いので(特に女子)、押さえが遠い場合は、左足に重心を乗せて立った方が楽。一応、男子なので、女子のように帯が腹に食い込むことはないだろうとは思うけれども。押さえに関しては一考の余地ありか。

[15]L2 三十の合わせが遅れるのは何か原因がありそうですが。手の開きが遅すぎるのかな。と思って何回も見たんですが。
 ここ楽譜は全て親指指定(楽譜に指定無し)で、「テンテン」弾きのはずなのですが、中指使ってるのはなぜなんです。中指のとこだけ音質変わってやや滑らかになってしまっているし、いいことない。親指で弾き続けてれば、自然と薬指の支えが下側に来るから、三まで手が届くのに余計なことを。w
 で、その三十の合わせ、mpだけどアクセントつけて入れてほしい。ここしかない変化なので。見せ所では。

[17] 中指でのフォルテの入り方。これはもう書いたので書かないけれど、一音目からフォルテでメインパートですって分かる弾き方をして下さい。全然耳がいかない。
 箏の方は音数が多く高音で耳につきやすいので、ここはキラキラ感は消す。

[18] ここは十七絃が4小節あって、もったりするのが目立つので、軽く。具体的には、二と九を同じ音量で弾かない。メインのリズムはどっちかいうと二に重きを置く方がいいのかな。そして、細かいところを素早く。拍を正確に。
 ここ箏と十七絃は音の数は合うはずですよね。どっちも正確じゃないのでアレですけど、十七絃が修正しないと合わないだろうなと思うので、細かいところを正確にとしか。
 このテンポでずれるのなら、もう少し合わせやすいスピードで丁寧に合奏練習をして下さいね。テンポよりも美しさを優先に。

 [19] 箏、伴奏の音質をどうにか変更しよう。すでに書いているけれど、十七絃の高音部は響きにくいので弱々しいのですよフォルテでも。なので、そこのカバーを箏側でなんとか。音の通りがよく音量を小さくしても聞こえてしまう場合は、もっと十七絃に溶けるような柔らかい音質に変更、伴奏として引き立たせてあげる工夫を。

[20]箏のトレモロの入りが微妙に遅れるところがあるのはなぜ。L2二小節目終わり、七九が親指と中指の場合、人差し指を上側(親指上部)へ曲げておけば十trに間に合うはずですので、手の形でカバー。あと、手を上下に上げすぎないこと。その場でホバリング状態の合わせ爪にしておけばもう少し楽なはず。

[21] 箏もやりがちですが、十七絃、トレモロの頭が拍通りに入らないのは、前振りしてるからですね。動画で見たところ1.5振りか2振りしてそうなんだけど、そこをなくしましょう。
 トレモロで振りかぶらないといけないってことは、振る方に意識がいってるということだと思うんですけれど。そこちょっと変えたいかな、拍通りに一回爪を当てる方が優先です。振るのはその後からの動作なので、まずはさきにきっちり爪を当てて下さい。音としてはまずは「かん。かかかかか」で構わないので。フレーズとして機能させることを優先。
(気合が入るのは分かるw でも遅れないように)

[22] ここ、二人とも音数が多いので、全体を聞いた感じとしてpに感じられないです。pは、聞こえないくらいの音で。爪が絃にかすってれば音でちゃうから、それくらいでいいです。というよりそれくらいがいいです。
 弱音の作り方は、多少気を使うところはありますが、まずは音量、それから音質に気を遣えるといいな。

└ ★ G.P.(ゲネラルパウゼ)

 G.P. って、略称ですけれど、もともとの語は何かって、意識したことはありますか。これゐ先生にもずっとずっと前に言われて、私も考え込んだんですけれど。
「Generalpause」(ゲネラルパウゼ、ドイツ語)、英語だと「Grand Pause」。ただのポーズじゃないんですよ、グランドなんですよ。つまり、ものすごい静止なんですよ(語彙)。

 用語の意味を調べると、「全休止」とか「演奏者全員の休止」と解説にはあるのですが、なぜか和楽器(うちの部だけか?)では、「全停止」の意味合いで「動作の一切を止めて、世界の静止・停止を表現する」とされています。
 「電源オフった家電みたいに」と、某げんさんは指示していましたが、まさにそれかと。その感覚でやってほしいな。
 で、お客さんが理解するのは一秒後からなので、一秒は少なくとも静止しておくといいです。「?」→「!」には、時間がかかります。

 なので、G.P.の表記があるのに、すぐに動き出してはいけない十七絃。G.P.+間、ですよここ。なので、調絃は、静止してから、次へ行くための間を取るあいだに、そろそろっと小さい動作で目立たないように調絃を変えましょう。

[23] ここへきて、やっと、十七絃の弾く形の違和感の正体に気がついた。5/8での「六-・3六△3・六-・-」になってるアクセントは、本来なら「六-・3六△3・六-・4-」ですね。スラーのまとまりも3・2で分けられている、その頭の六に共通してアクセントがのるべきなんだ、ここは。
 変化する音は確かに最終の一音なんだけど、リズムとしてはそこでないと落ち着きが悪い。なので、形の整理が必要かも。

[29] ここシャシャシャ…になったとたんにテンポ超速に変わりますけど、なぜ。その前の28の1箏のテンポでそのまま続けるべきでは。指定ないよね、四分音符の長さは120のままのはず、てきとうにしちゃだめ。
 そうでないと加速したときの面白さが出せない(120→176)。ここは加速の演出カットにしてあるのかもしれないけれど、ちょっといきなりでびっくりするというか、いい加減な印象があります。ついてきづらい。

[31] 何を見せたいのかよく分からないけれど、とにかくごちゃとするので音の整理を。動きがあるのはpizz.の方だと思うので、爪の音を抑えた方がよさそう。mpから静かに終わる形にするなら、どういうふうに情感を作るかも考えた方がよいかな。

[32-33]このラストはすごく難しいな、「静かに」という指定だけれど、どんな光景をイメージして作るのがいいんだろうな。あんまりイメージが湧かない。
 ここは下手にやると寂しい終わり方になってしまう。たっぷりした空気感をうまくつないでいくとか、アクセントをつけて前後の3D感を加えるとか、最後ユリをいれるとか、何工夫も必要になりそう。今のままでは少し、奥行きがなくてもったいないですね。(とはいえ、収録からもうけっこう時間は経っているので、少しは変わっているだろうと希望的観測を持ってはいますが)

 全体的に、音質の変化をもう少し積極的に取り入れて、それと音量との組み合わせの妙をとりいれたいですね、上級生曲な訳だし。ベースの硬い音、柔らかい音、それぞれの楽器の音色は、特徴があります。箏は硬くて、十七絃は柔らかいので、その異質なものを無視せずに、調和させながら、溶け合わせたり、ぶつけ合ったりするのが、こういった曲の合奏の醍醐味です。
 これはこの曲だけじゃなくて、全部の曲にも言えることですが。

 あと同じく、音というのは、出ていればよいものではなくて、時には消えた方がいいときも多いんです。絵でたとえるんですけれど、遠近法、遠くはあまり彩度も明度もなくぼんやりとしていて、手前のモチーフだけに光が当たっている。西洋絵画のイメージで考えてみて下さい。その「遠くの空気」にならなきゃいけない場面が、伴奏はけっこうあります。なきゃいけないけれど、目に入ってはいけない的な。
 そこをもう少し感覚的にやれると、互いの響きを活かせるのでは。


宙々

おっと合奏にメトロノームを持ちこむのは御法度だぜ…!!!

└★★★ 合奏が合わなくて困ったら、メトロを出す前に

 メトロの使用は個人練習まで。
 合奏の時にメトロノームを使用すると「誰の音をよく聴いて」という合奏の基本が全く育たないので、やればやるほど合奏ベタになりますから、ほんとに拍が取れないなら、「合奏をまずやめるべき」です。
 まぁ今時期にはさすがにこんなことはしていないだろうと思いますが。

 拍の取り方。
 これは基本、一拍を4つでとります。なぜ最低4つでというかは、以下の記事で。

 苦手な人は一拍四つを寿限無の呪文でやります。「じゅげむ()・じゅげむ()・ごこうの・すりきれ」ですけど、好きな単語をつらねてもいいです。
 「す『り』きれ、で音入れる」とか、十六分音符の細かい休符もわかりやすくなるし、パニックになりやすい私のような人間にはかなり助かる方法でした。

 閑話休題。
 昔々の箏(に限らず多くの芸事)は、もともとが「口伝」がメインでした。
 それは形に残さない方が希少価値を高められる、いわゆる一子相伝だとか、技術を囲い込むための面もあったと思います。が、その他に、その方が正確に伝えられるから、という、伝達方法としての最適解のような面が大きかったのではないかと。
 古来、曲とはメトロのような定拍で演奏されるようなものではなく、唄に合わせるとか、もちろん他の楽器に合わせるとかもあったでしょうけれども、とにかく、「音楽のベースはリズム」だとか「きちんと刻む」という感覚はあまりなかったんですね。だから、楽譜として残すには、とても難しい部分が大きかったと思います。
 (それは、明治以降、紙に楽譜として残すという作業にどれだけ先人が苦心したかの痕跡を見れば分かります。)

話を戻します。

 以上の理由で、本来なら、メトロを使わない方法をとる方が、音楽として伸び伸びと合わせることができるはずでは、と思うんです。

 実際、演奏がメトロ的なので、この動画の曲を聴いていても、機械的な音の並びになっていて、内容が全く理解できない状態です。小節単位のまとまりすら聞いて分からない。ここはもう少し改善してほしいな(今はもうされているかもしれないけど)

 もっと、先人の知恵を活かして、「歌い合わせる」という作業をしてくといいと思います、音程は問わない、鼻歌程度でフンフンやればよいのですけど。
 歌う、これは緩急のテンポの感覚を合わせるとか、強弱の膨らませる表現などで雰囲気を合わせるとか、「感覚を馴染ませる」場面でよく使いました。あと、メロディは歌え、とよく言われていたのですが、フレーズの形を理解する方法としても。
 これをやると、速度も間も休符も合うようになるので、試してみて下さい。拍で合わせるよりは形にしやすいと思います。フレーズのイントネーション的な抑揚の付け方などについても、以下にまとめてあります。参考までに。


 └ 曲について

 この曲は本来は、音数が少ない分、音のきれいさを要求されると思う。響きの良さというか。手自体は難しくはなさそうだけど、難しい曲を選んだなーと思いました。
 でも、上級生ほどこういった曲には細かい要求が出されるけれど、一年生ならそういわれることもないはずなので、そういう意味では楽かも。

 曲として表現を見せることに関して。
 曲自体が表情豊かというほどではないので、演出の難しい品。練習曲みたいではなく聴かせるためには、どう作り込んでいったらいいのかな。使えそうなパーツを取りこぼさずに、細かく楽譜を拾っていく方法で、広げていく方がよさそうですね。
 強弱指定も少ないので、緩やかな抑揚メインで歌っていく、緩やかに途切れない流れで広がりを作る、そういうさりげなく細やかな演出が必要になりそうです。

 一年生は、l和音の強弱など、手の力が必要になりそうですから、指トレとかしておくといいのかもですね。(演奏会一月前に言うべきアドバイスじゃないなこれ…w)でも、綺麗な音作りに指の力は必須で、弱音ほど鍛えた指の差異が表に出やすい、そこは念頭においてもらえると、今後の練習も進みやすいかもという気はしています。
 指の力は、音量よりも音質のコントロールにものすごく出るので。今年は無理でも、来年以降のレベルアップのためにも、頑張って。あと数ヶ月で君達一年生は次の新一年生を迎え、教える立場になりますから、どれだけでもレベルは稼いでおくべきかと。

 └ 一章

出だし、強弱表記も指定もありませんが。一章は楽譜後ろの解説で「宇宙の海」とされていますね、もともとこの曲は章ごとの変化が乏しい、章ごとのテーマや形の違いを冒頭で提示していく必要がありそうだと思います。出だしをどう印象づけるのかが問題になりそう。
 一章、「海」であるイメージはどう作りますか。
 海のイメージマップ(関連語句を連想的に上げて、形を確かめる方法)を作ってみましょう。その中で必ず上がるのは「波」だと思います。冒頭の同じ形の掛け合いはどうもそれっぽいかも?とか、単語から膨らませて、イメージを作っていくと、表現に繋がりやすいのでは。
 もし波であれば、寄せて広がる扇形の水の形を二小節のまとまりで作れそうですし、他にも、いろいろと考えられそう。

p2. L3 ここの部分の1箏は冒頭2パート合わせた形のバリエーションですね。なので、十-五-を、同じに聞こえるように形を合わせた方がいいです。それと、2箏の一小節単位の短い波の上に、1箏の二小節単位の長い波がのって、網目状の美しさを出さなくてはなりませんから、ここはフレーズの上下する形を双方きっちり出す。扁平に弾いてはもったいないです。
 こういうことは曲リーダーさん任せになりがちですが、一年生も楽譜の読み込みを頑張りましょう。

p3. L2 1箏は伴奏ですが、2箏一人に対して、二人いることでベース音量が大きいです。伴奏の役割になるときは、各自が半分以下くらいに抑えないと、伴奏に聞こえないかも(1/2+1/2=1なので、それ以下にするということです)。pizz.の音が立って聞こえるのは、しっかり弾けているという意味ではいいのですが、こういう場面では耳障りですので柔らかく。
 メインになる2箏は、もともとの人数差がある分を加味してもっと弾かないと、全然耳に届きません。パートの役割、それと場面の切り替わりの一瞬を、もっと明らかに明示するように、意識的に音を作って下さい。
 特に、その前の行の最後で1箏2箏の音が混じり合って分からなくなる、その抜けだしの一音(行頭)がとても大事。

 単調な音が繋がっていくときの、聴く側がゲシュタルト崩壊的な飽和状態に陥らせられるのは、アクセントと拍で作るまとまり感が一切ないせいですね。上下する音に連動する強弱の膨らみとか、もう少しあった方がよさそう。

 └ 二章

p6 二章の解説は「宇宙の光」「灯火のひとつは自分である」という言葉が出ます。光の種類もいろいろありますが、命の光であれば、柔らかく優しい、あるいは華々しい、あるいは…、とイメージが取れそうです。

 メトロで機械的な拍を取っているせいで、余白として置きたい『間』がないですね。たとえば、p6. L3 指定「p」からクレシェンドついてる直後。響きをぽわーんとさせて、余韻を聴かせてから、新しく始めてもいいと思う。
 ここのクレシェンドは二音目でもう音量が元に戻ってしまっている、ここは1箏が人数が多いせいですぐ上がりやすいというのがあるから、余計に抑える方向で頑張らないとです。p音のスタートも、まだpっぽくない。もっと始めを抑えられれば上げ幅が作れるので、音量操作はもっとできるようになるといいですね。

p7 爪になった途端に簡単な気がするのか音が雑です。もう少し繊細に。
 中指で引き上げてくるところ、拍が不安定なので、手先を固めてひじで引っ張る。pizz.がやや拍遅れするのは指のかかりが遅いせいか。
 同じフレーズが繰り返されるとき、「山彦」と言われたのですが、メインのあとに繰り返す方は少し弱めて影を作るようにすると、単調さが少し消えます。

p8. スクイの返りはあまり音がしていないけれど、たぶん1箏二人とも遅いです。どっちか一人は「たんた」になってるのですごく遅いです。もっと拍取りはシャープに、きっちり1/2「たた」に入るように。

p9. なぜ「p」指定の直前にケをいれる?入れなければならない理由が「音量が落とせないからpにならない」だとしたら、それは間違ってると思います。別の曲でも書いたけれど、ケは指定以外に安易に使ってはいけない理由があります。

└ ★ fffのあとのpppの作り方

 どれだけ鳴ってても、ケシを使わずにやりましょう。
 直前がどうであれ、聞こえないくらいの音で入れば、それはその時点からそれとして成立するものなのです。表現は物理じゃない。音量ゼロスタートにわざわざしてはいけない、情景がしぬから。
音の薄れる「静寂」と音の断ち切られる「無音」とでは、世界の形が変わってしまう、と私は思っています。この辺は個人的な考えであることは書いておきますが。
 静寂は流れてくるものです。風のような感じ。
 それに対して、無音は突如降りてくるもの。ケで音を殺すことは、生命感や情感を殺します。むやみやたらに曲中に、しかも勝手にいれてはいけない理由はそれだと思って下さい。)

 表現とは、場面のひとつひとつで切り替わっていくもので、場面の変わる瞬間に、「奏者の意識の切り替えをきちんと出来れば」、直前のfffだってゼロにできるものなのです。
 だから、そこで、頑張ってもpにならない、どうしよう、と思うのであれば、頑張り方を変えましょう。
(もしかして、洋楽器の演奏を終えたらちょいちょい音消してる感覚なのかな?あれは、楽器のベース音量自体が大きくて残りやすいからなのでは。あと、余韻の鳴ってる最中にはあまりしないですよね、他の楽器が入ってからする感じではないかな、詳しくないけど。
 和楽器では無用の操作ですし、シンシアp9 のように余韻の残りやすい場面で使うのは、かなり目立つはず、そして多分作者の意図に反すると思う。こ余韻と響きのきれいさをずっと響かせて、その広がりでもって宇宙の広大さを表現したいのではと思うので)

大きな音fffのあとに小さい音pppを入れて表現したい場合、幾つかのやり方があります。
① pppのために、多少の間を作る (音の減衰に合わせてpppを始める)
そのままの状態で差の分かるpppをぶちこむ
この2パターンですかね。
①は静的な場面で使いやすくて、②は動的な場面で使いやすいです。というかそれしか方法が思いつかない。
(fffのあとでワンワン音が鳴ってるのに、pppって分かる音をぶち込まれるときの気持ちを知らないのだろうかなと思うけど、あれやられると聴く側としては、強制リセットで聴覚だけを分離して持って行かれる感じがしてすごくいいんですよね…痺れる)

(あと、曲中で絃に触れて音消しするのは、間違った絃を弾いたときだけですので、見た目で「あ、間違えた」って思われるからね、ちょいケシすると。評価的に下がりやすい危険性がある)


 └ 三章 

 直前のケは不要です。音の減衰にまかせて静寂を待ちましょう。
 この動画では、間は十分にありますから、間隔としてそれでいいです、ケがない状態で、十分に場面が遠ざかり去って行く感じを余韻を持って出せるはず。
 ケがあることで、お客さんの集中力と意識をぷっつり切ってしまいますから、場面転換でのケシはダメ絶対です。気持ちがすっと離れてしまう。客に冷静さを取り戻させてはいけない、最後まで自分の側に引っ張り込んでおくために、この「冷める」という瞬間をわざわざ曲中に作らないこと。
 ケ、奏者側の意識の切り替えのための動作が何か必要なのであれば、深呼吸をして下さいね。多分お客さんもその気配で引きずられて、一緒に気持ちの切り替わりをすると思います。

(「客が冷める」ということについてもう少し。
 大規模なコンサートやライブというものを疑似的にでも経験した人は分かると思う、興業というものは「客を狂わせてなんぼ」がベース。そのための仕掛けをこれでもかと盛り込んであるはず。ステージで火を噴かせたり、テープを撃ち込んで散らしたり、見た目と音と空気感を操作して客をしぬほど沸かせて踊らせるのがプロです。
 客を盛り上げる装置や仕掛けをプラス要素として本番の舞台で使えない以上、マイナス要素は極力減らすべきと私は思います)


p9 L3 三章頭からテンポ指定が♩=72 から♩144へ上がります。でも、きっちり数字が二倍になるだけなので、普通にやってはその変化は伝わらないはず。
 なので、ここから違う印象にしたければ、弾き方をもっと変更しないといけない。二章がわりと音数の少ない構成だったのに対して、三章はけっこう一小節あたりの音数が小刻みになり増えます。ここをどう活かすのかが出だしのポイントになるでしょう。
 解説では「風」とあるので、ここはどちらかといえば滑らかさを要求される気もします。途切れずにひたすらに広大に吹く、風の形をどう取るのか。
 (ここは練習が一番難しいところでしょうか。というのも、動画の状態を見ると、ブツブツに単音の連続になってしまっているので、これをどう改善するかなと思うと、けっこう大変そうなので。残時間を考えると、手をつけない方がよさそうかな、一応書きますけども)

└ ★ おさめる という処理

 全体的に場面の切り替えがつけられていないのが気になります。「おさめる」という処理を全くされていないので、ここは音数の多い伴奏側が気をつけるべき。
おさめる=局所的に音量を落とす・やや緩めて微妙なまとまり感を作る。次の一音の印象を強くする、サゲ(ラスト)→アゲ(スタート)の方法、幾何学的な同じパターンの組み合わせが多くなる曲ではこれをしないと区切りが聴者に伝わらない。これの難しいところは、”やっているな”と明らかに理解されてしまってはいけない、隠し味的な処理として行わないといけないので、わざとらしくやらないのがコツ。さりげなく。)
 おさめたあとは、呼吸をして、気持ちを新しくして一音に入ると、さらに美しさが出せるので、そこもできたら。(気持ちのブレスってそういうことです。ワンフレーズの理解の重要性について以前にも少し書いたから関連として)


p10. L3 2箏は伴奏ですので伴奏らしく。ここは表情をつけるなら、1箏のメロディを活かして上げて下さい。
L4 同じくパートが入れ替わるので、そこを上手に見せること。つまり、最初の一音を1箏がはっきりと出して聴者の耳と目線を引きつける。その隙に1箏は伴奏として身を潜めるように弾くと、音量のバランスもとりやすいかと。
 メロデイの強弱は、そのまま音の高低に相関させて作るとよいです。つまりトップが巾、そこに多少のアクセントをおいて、あとは山を小さくつけながらも滑らかに降りるように。ラストの一音はおさめで小さく。というかんじ。

p11 L3 ここの最初の一音、一人で全体のフォルテの音量を作らないといけないので、力業で構わないからガッと出さないと、ぱっと聴きでは普通の音量になってしまいますね。
 中指でのフォルテの入りは注意が必要で、音量音質ともに親指よりも沈みがちですので、そこを明瞭にするには、中指を人差し指と薬指を使って両サイドから固くホールドし、弾く爪の右サイドを絃へ堅めに引き当てます。指を寝かさずに、立てめにするのもポイント。
 指だけでパタパタ弾くと音の強さも出しにくいので、和音の分解だと思って、手を「コ」の字の形で固めて、前後に動かして使うと、カッチリした音を作れます。
 演出的には直前の部分の音量をどう作るかでも、ここの入り方は変わってきますけれど。
・もしここからカットイン的にフォルテにするのであれば、直前は少し全体の音量を調整しておくといいと思います。
・もしフォルテへ向けてクレシェンドするのであれば、その前(p10からp11.L1まで)を落としておくとわかりやすいでしょう。

P12 同様に、出だしのフォルテの一音を、ここは1箏が二人いるからそう苦ではないと思われるけれど、ハッキリと出す。区切りを見せるためのアクセントをつける。

P12.L1 後半から、五七五七九七五七五七九七五七(九)、ここ掛け合いですけれど、フレーズのまとまり感がほしいですね。つまり、1フレーズとして、アクセントをつけるべき山は九の音、そこが3ヶ所。つまり盛り上がりの上下は、九を中心に「上下上下上」ときます。この滑らかさを掛け合いで出すのはけっこう難しいですから、ここは要練習かも。

p13.L1 ここフレーズの押さえの部分にアクセントが載っちゃってますが、本来なら降りてくるフレーズのトップ、一音目につくべきですね。奏者の意識する音がそのまま出ちゃっているので、なるべく音楽としての形を優先させる。弾きやすさに引きずられないこと。(こういうところがさり気なく難しいのでこの曲はいやだな)

p13. L3 2箏、上がって下がる形の手、上がりで手首を倒すくせがあるのでロスが多い動きです。特に上昇、手首を寝かせずに指だけで持ってきて、そのままの形で下ろせるように。親指に切り替わる一瞬に間があって一音が遅れているのは、手首を戻すロスのせいです。親指の一音にだけ変に飛び抜けたアクセントがついてしまっているのも、その修正で直せるはず。
* かけ爪の奏法に含まれる、中指→親指の手の形を参考にしてみて、そんなに前後に手を動かさなくても弾けるはずなので。中指を伸ばして引っ張らないことと、親指で弾くことを前提とした手の形をキープするのがコツかな。


p14 ここからどっちがメロディ?スクイの方がメインな気がするんだけど、そう聞こえないのは伴奏が強すぎるせいかと。スクイはただでさえ音が聞こえにくくなるので、そこを加味して、伴奏はあまり立った音で弾かないこと。
 スクイは聞こえにくいから、余計にメロディ感を出すように、強めに弾く、返りの音もできれば分かる程度には聞こえてほしい。スクイの形も、十ス十」と後へアクセントがのるので、一音目に変更、「十ス十」に聞こえるように。フレーズとしておかしな形になってしまっています。(ここのフレーズの原型は「十~・九~・十~…」となるはずなので)
 で、ここもパートの入れ替わりがあるので、そこも分かるようにきちんと一音目でバトンパスをハッキリ明示。

p15 ここ和音でガッチャガチャなんですけど、上記でも書いたけどフレーズの原型の理解、出来てますかね…?
 必要な音は、各音一つ目まで。あとはリフレイン、影のように映し出せばきれいにできる。つまり、二音ずつで変化していく和音の一つ目はハッキリ目、二音目はうっすら、そういう弾き分けをしていけば、1箏のゴチャ感は少なく出来そうです。
 対して伴奏。ここは1箏のメロディ感が少ない場所、かつ音数か減る。そういう場面では、音数の多い方が情感の演出をになうものなので注意。同じく、一つ目のpizz.+和音、ここまでが基本の形。そのあとの和音の連続は残響のビブラートくらいに思って演奏を。連続が長いので、後半フェードアウトしていくときれいかもですが、ここはやってみないと分かりません。

 基本のpizz.+和音も、音質をどっちかに揃えた方がきれいかも。つまり、爪の音を柔らかくするか、pizz.を爪みたいに堅めに弾くか。
 ここは、もしかしたら、pizz.が一番綺麗に出すべき音なのかもしれません。というのも、使われる音の中でもっとも高音なので。そこに配置される意味があるとするなら、キラッと感がほしいのかという気もしますし、二小節ごと、一フレーズずつ音が上がっていくことを明示する最初のパーツでもあるので。一番耳に届きやすいんですよ、高音って。だから、中途半端な使用はもったいないです。使えるものは使おう。
(音域として、1箏の和音は一が固定されているので、そこからpizz.が十から上がって、どんどん離れていく=曲の中での距離ができる=ドラマチック、ということでもあるので、そういうところももっと使いたい)

p16 L1 ここも、ゴチャッと感があるので、アクセント+強弱と、繰り返しの処理を。
L2~ 爪とpizz.の音の分離感が微妙すぎるか。pizz.はもっと爪のように堅めの音質に変更すると、締まりがあってよいかも。ここは粒感を小さくしていって、宇宙の無機質な雰囲気に戻す方が、曲として収まりがよさそう。
 ラストの和音も、三音の音の大きさが全く揃っていないので美しくないです、3つをできれば均等に。なのでpizz.の扱いはもっと繊細さを持たせた方がきれいだと思う。

 全体的に、この動画の時点では、まだまだ曲としての形がみえないままの状態ですので、このあと年明けの現時点でどうなってるか分からないままにつらつら書いちゃいました、ちょっと書きすぎたかもしれない。
 この曲は表現するという意味では、普通に弾いてはいけない部分が多そうなので、現状を確認しつつ楽譜の読み直しをし、細かい部分に手を入れていくという修正方法になりそうです。
 曲リーダーさんも頑張ってほしいですが、一年生もできれば曲を鼻歌程度で歌って、形の理解を進めて下さい。
 無機質なモチーフをそれとなく無機質さを保ちながら様々な変化を見せるって難しいので、その難しさとどう戦うのかが、私は楽しみかも。

 




まだです。休憩~~






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