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音量の「幅」

合奏の講評で、「音量の幅を持とう」「大きい音はもっと大きく、小さい音はもっと小さく」と言われること、多い気が。今回は、単純に「音量」の大小の広げ方について。

音量は誰が作るのか

曲での音量は誰が作るかって、奏者なんですけど。
その奏者がどのように「音量」の「表現」を考えてるか、そこで見え方・聴こえ方が変わってくる部分はあります。
まずは、個々の奏者の幅、その表現方法を考えてみます。

▼ 「全体の音量の調整」については、別で記事を書きました。

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”練習不足”ではなく、「練習を していない」だけ。

合奏で音量表現の幅が作れないのは=「曲の・合奏の、練習不足」である、という感覚ありませんか。
ここ、実は、個人練習の問題なことがすごく多いです。

・幅がキッチリ作れないのはなぜか

曲の合奏という難しい課題に取り組む前には、課題をバラして下ごしらえ的な処理をする個人練習が必要になりますが、音量に関しては、わりと、何も対策を考えてない人が多いような。
「フォルテ頑張ればいいのは合奏中のみ」という感覚でいたりするし、そもそも「みんなで頑張れば幅が作れる(はず 」という感覚もあると思う。
つまり、音量の調整に関しては、ほぼ他人事なんですね。

(特に、一年生は「合奏だけど上級生と一緒なら大丈夫」という安心感がある場合、無意識だろうけど、こういう状態になりがちです。
それを顕著に意識させられるのが、「ハイ上級生抜けて。一年生だけで演奏してみよう」という合奏。
メッチャメチャになりますw
でも、それをしないと本人は自覚できないので、荒療治だけど一回はやっとくといいと思う、足りないものを自分で獲得しようという気持ちが出てくると思うし。)

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・音量を「作る」練習

基礎の手の練習で、mf、メゾフォルテで弾く練習だけをしてると、それ以外の音の出し方は身につかないです。
基礎練習がただの”準備運動的な作業”になってて、しかもそこは頑張らなくてもいいと考えてると、わりと三年生でも普通に見られる現象。

各奏法で、力を入れたときの手の扱い方~その中で微細なコントロールができるところまでを身につけられるような練習が必要です。

基礎練習で、弾き方をチェックしつつ、全部をフォルティシモで or 全部をピアニシモで、という普段と別の音を出す練習をしてみると。
力加減と配分が意外と難しくて、がんばろうとすると手が不安定になる、音質がキレイに鳴らない、強音でスタミナが続かなくて弾ききれない、弱音で雑音が増える、高音・低音の位置によってクオリティに差が出る、とか、いろいろあるので、試してほしいな。

その中で、「上手くいかない」とまず感じることが第一歩。
そこの改善を考えられるようになると、それだけでひとつ、ステップアップです。素晴らしい。
*上手くいかないときは、1人で延々と頑張らずに、誰かに訊くとか、見てもらうとかして、できれば時間を節約して楽なクリアを目指して下さいね。

どの位置・どの音量・どのスピードでも同じ形で弾けるのを目標に、バリエーション作っての練習。
自分で苦手な部分の工夫の仕方が分かれば、だんだんと克服していけるので。ここがんばろう。
どんな曲のどんな場面でも、対応できるようになります。

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・練習に目標地点を作る

基礎練習の反復、単純に大きな音で・小さな音で、とやると、ゴールがあやふやで達成感が薄く、すぐ飽きてしまいますね。
そこを、フォルテシモの「表現」で・ピアニシモの「表現」で、という意識でやると、また違った練習になってくると思います。

「表現」、というとわかりにくいから、色に例えてみる。たとえば。

・フォルティシモ=鮮烈な赤。鮮やかでひときわ目立つような。生き生きとして勢いがある。
・ピアニシモ=清冽な青。密やかに光る星のような。手の届かない遠さとそれを越えてくる輝きの。(ピアノって実はけっこう強さが必要だと私は思ってたりします。小粒でもダイヤモンド的な)

…そういう音で、「演」じてみる。自分で好きにイメージは作って下さいね。
(個人的には、フォルテっぽく聞こえるようにするには、アクセントをがっつり + リズム(パターン)をしっかり、と思ってやることが多くて、「いかに派手に作るかがポイント」みたいに考えてましたw ピアノっぽいのは、針の先で弾くように、とか)

私は実際に、イメージがある方が楽に音にできる時があったので、試してほしいと思います。

▼「物理的に楽器をどう扱ったらほしい音を出せるのか」に偏らせた記事はこちら。いろいろなイメージの違う音=音質の違う音を出すのは、下の記事を参考にしてほしいかな。

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・音の「指向性」と相手との距離感

「音の指向性」。
音は、空気中を伝わる波なんですけど、その伝わる方向を、意識します。
実際にそれを楽器でどう作るかは、不思議でならないんですけど、奏者の意識で方向も距離感も、作れる・変化させられる感じです。

これ、私が教わったときの例えなんですけど。
「1メートル離れた友達に声をかけるときのトーンと、100メートル離れた友達に声をかけるときのトーンって、同じじゃないでしょう」
普通の「おーい」と、大声での「おぉーい!!!」の、声の違い。
「距離が遠いほど、身を乗りだすようにして叫ぶよね。それを楽器でやるの」と。

箏の場合ですけど、何も意識しないと、自分の半径2メートル程度でしか音が鳴らない感じ。自分の周囲で半球状に音が散ってしまうというか。(音は聞こえはするけど、届かないんですよ。目で見えてるけど宙を掻く感じって言ったら分かるだろうか。ガラス戸の外のような)
弾く側が表現としてやってるつもりでも、意外と聴く側まで届かないことが多いです。思っているよりも、数段、届きにくい。

この場合、「音の方向は自分を中心とした全方位・距離は2メートル」の、音の波になっているということかと。
これを、「相手のいる方向へ・距離はもう少し先へ」と意識できれば、音が変わります。
自分でも理由が分からないけど、なぜか、「束(ビーム)」になって出てくる。←ここ赤の大文字で書きたい

 *  *

フォルティシモのつもりでがんばってるのに、なんかこう押しが弱い、うまく出ない、となるときは、多分ここ。方向と距離を意識する(そろえる)と、スッパリ感が出るかも。

(尺は元々前へ音が伸びていく感じの楽器なのだけど、力むと口元で音が散っちゃうから、強音の指定の時ほど「大きい音ではなく、形のしっかりした音を、前へ飛ばす」方がきちんと聞こえる。三絃はよくわからないけど、あてるときの力加減にプラスして、「前へ飛ばす」と、変に力が入りすぎなくていいのかも。これ以上はわからんごめん)

なので、フォルティシモの時は「100メートル先へ届くように」、「的として実際のブツを指定(壁の時計へあてる等 具体的に)」を意識。

これを、個人練習でもやってみてください。
絃、フォルテの伸びがよくなって、「聴き映え」します。
変に力まなくなるから、体力温存もできます。いいことづくめ。w

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☆ ピアニシモは「弱い音ではない」

前に、ピアニシモの方が難しい、と旧ブログに書いたんですけど、 ”弱音” について。

ピアニシモ=弱音 と言いがちだけど、本当は違います。
「密やかさ、静けさ、忍びやかさ、を、凝集した」音。
なので、密度を薄めるような感覚で弾いてしまっては、pppの「表現」にはなっていないし、そうは聞こえないと思う。

・弾く時の手の感覚

① 聴かせるp(メインフレーズなど)の場合
爪の先に集中して、研ぎ澄ませて細く、しっかりめに力を入れる感じだったような気がする。ピンとした音を意識。
(すでに気がするレベルでしか言えないけどw メインパート、強音よりも、弱音の方が、繊細な神経がいるのは間違いない。あと、指の力がないとコントロールが難しくなる。pが弾きづらいと感じたら→ 「指トレのススメ」

② あまり聞こえなくてもいいp(サブ・伴奏など)の場合
メインパートよりやや丸めの音でとか、全体の雰囲気に合わせて弾き分ける。特に高音部はキラキラ感が出すぎると角が立つので、バランスを見て、音質を抑えることも必要です。

この辺、音量と音質の組み合わせで弾き分けが可能なので、音質のコントロールが鍵になることが。
(音質については「音質を意識した音作り」を見て下さい)

ピアニシモ=距離の遠さのことも

それから、小さい音は、ただ小さいだけでなく、「距離の遠さ」を表すこともあるので、注意。
また、距離が遠い=「空間が広い」、だったりもします。
その表現をどうやるか。響きを使うか、クレシェンドがあればそれで遠近感を出すか。
そこの研究も、してほしいかな。

(研究、邦楽の作品集的なCDは、意図的に演出が省かれていることが多いので、そこを聴き込んでも演出の引き出しは広がらないです。CDは「いわば楽譜のための見本・サンプルであるので、CDのように演奏したいと思うのは間違いである」と、OBさんに教わりました。
あと、先生によって、メンバーで綿密な練習をして録る人と、スタジオでほぼ一発録りしてる人がいるから、当てにしすぎてはいけない、と。
ちなみに、Y崎先生は綿密な方だということです。一発の人はどなたを上げてらしたか忘れた。
「自分たちで演出を工夫して作り上げるのが、唯一無二としての価値があるのだから」と言われて、でもとても困った記憶 笑)

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クラシックを、参考にしてみる

演出の幅、クラシックの方がいろいろ学べそうかも。
広がり感はすごいですよね、オーケストラは人数多いし、楽器の種類も多いから、それだけ幅のある音が作れますし。
バァンと広げて一気に収束させて、というメリハリも、すんごいです。

でも、取っつきにくいから敷居が高く感じる(…のは私だけかな)

クラシックといってもたくさんたくさんあるので、どうしていいか分かんないと思うんですけど。
お手軽にメジャーどころをちょっぴりの一口サイズで出してくれるオススメの番組ありました。

▼ Eテレの「クラシックTV」。
初心者向け、知識がなくても興味を持ちやすい作りで、時間も30分と長くなく、よいかも。そんなに演出技法とかは紹介されないんですけど、音楽の核、何を理解したら表現につながるのか、みたいな断片がチョイチョイ出て来て、もしかしたら参考になるかもしれません。

(たとえば、ピアノは指の当て方で音が全然変わるとか。この作曲家の演奏はこれに気をつけてやる(特徴を活かす)、みたいな話がぽろっとあったりとか。時代背景の特色で、時代が曲に要求して生まれたもの、要素の話だとか。作業用のBGVにするにはいいかな。)
クラシックが苦手でも大丈夫かもと思います。(実は私はクラシック苦手…知識がないのもあってわけわかんなさすぎるから)

▼ もうちょっとマイナーでもいいからとにかくたくさん聴きたいときは、ネットラジオ。
専門チャンネルで、無料で聴き放題できます。
ネットラジオのアプリも色々あります。
ネットラジオのリンクサイトで探すと好みのものが見つかるかな。


日本語のサイトだと、「OTTAVA」とか有名かも。

クラシックは普通に聴くと意味がよく分からない!w
そういうときは、「リズムの打ち出し方の、長調と短調の違い」とか、観察する感じで聴くと面白くなるかもです。
長調と短調で切り替わったとき、「楽器の色の変わり方」みたいなとことか。

わりと、曲中の「静と動」、どちらかというと、静(短調)の部分の作り込みで演出とまとめ方に困ることが多いと思うので、音作りの参考になるかもしれない(あくまで ”かも” です)

└ 箏の練習に、バイオリンの音をイメージした話

(そうそう、個人的には箏の「フレーズ運びのなめらかさ」の研究には、バイオリンの独奏曲を参考にしましたね。
箏、普通に弾くとぷちーん・ぷちーん、となってしまうのをなるべくどうにかしたくて、音の高低の移動と音の粒の並べ方、バイオリンのイメージで音を出すということをしていました。

あと、ピアノで習ったテヌート=「音の長さを充分保って」のやり方(鍵盤をギリまで押さえて次の瞬間まで次の指を入れないみたいな)をどうにか箏でもできないかなっていうのもやりました。
でもテヌートっぽくすると、かなり弾き遅れがちになります。 ソロならいいかもだけど。伴奏が合わせづらいので合奏にはオススメしない。)

*  *  *

なんでもそうですけど、スキルアップというのは、時間が解決する問題ではないので。
音の作り方、音質の作り方。
いつどのように取り組むのか、それは自分で決めましょうね。努力はきちんとすれば90%くらいは自分を裏切らない。がんばろ。

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