哲学:世界は上滑っている~我々は世界を暫定的にしか理解できない-現代量子論からの考察-~

今回は量子力学的観点から人間の思考について思いついた考えを述べてみようと思う。
シュレディンガーの猫の論議をご存知の方は多いと思うが、その思考実験に代表されるように、物質の状態は観測されるまでは決定しないという考え方が量子力学の基本的な原則である。つまり、我々が観測しない限り、その状態は実在し得ないのである。これが実在性の否定である。
ただ、多くの人はこの事実にピンと来ないのではないのだろうか?物事は観測されない限りは実在しない。どうしてもピンとこない。かの天才アインシュタインも「神はサイコロを振らない」として、量子力学の確率論的解釈を否定している。世の中の物理現象は何らかの法則に従っており、偶然や確率に支配されるなどあり得ないと主張したのである。アインシュタインですら、この量子力学的考えに違和感を覚えていたのである。だが、数多くの偉業を成し遂げたアインシュタインだが、これに関しては量子力学的な思考が正しかったのだと後の世で実証されることとなる。つまり、この我々の認知からすると到底わからない理論が実際には正しいのである。これは、明かに1+1=2とは性質の違う事実である。つまり、量子力学的思考は我々には「これが正しいと仮定する」ということでしか論理を進められないのである。
(以後、量子力学的思考は人間の認知の外側にあると仮定することとする)

この世の中の現象は突き詰めていくと、量子の世界の議論に行き着く。なぜ二酸化炭素が地球温暖化に寄与しているのか、なぜ人は愛を感じるのかも全ては突き詰めていくと電子と素粒子の世界に集約される。なぜならすべての物事はミクロからマクロへと広がっているからである。
だが、その電子と素粒子の世界の理論は前で述べているように我々の認知の外にある。つまり、この世の中のすべての本来の論理の出発点がそもそも暫定的なのである。従って、我々の生きているこの世界全ては論理的に記述できるように見えて全てが暫定的であると言える。上滑りの世界である。



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