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プラスαのインターネット活用術35

Medical Tribune 2000年10月19日 38ページ ©︎鈴木吉彦 医学博士

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ネットアンケート 統計解析の常識を変える

“迷惑な封筒がまた来た”

 インターネットによるアンケート(ネットアンケートとここでは略します)は、質問をインターネットで提示し、ホームページ上で回答を求める方法です。Mediproでは、以前から何回となく、ネットアンケートを行っています。これまでは成功することもあれば、成功しないこともありましたが、最近では成功する場合が増えてきました。

 その理由は第1にMyMedipro会員が4万人にまで増え、その結果、回答者の母集団が大きくなってきたことが考えられます。最低100人くらいの回答を期待しているアンケートでも、実際に行ってみると、数時間で約400人以上の回答を得ることがあります。予想以上の回答数が得られて、謝礼金の合計が予定を上回り、あわててホームページを閉鎖したこともあります。

 これまでのアンケートは、アンケート用紙という紙を媒体としたものでした。ですから、基本的に医師は郵便という形でアンケート用紙をもらいます。しかし医師は、なぜアンケート用紙が自分に送られて来るのか理解できません。病院名と住所と自分の名前が、そこに記載されていることについて、不思議に思います。なぜ自分がアンケートに答えなくてはならないのか、あるいは、どこかで自分の個人情報が漏れているのか、と心配になります。また、多くの場合、自分がこのようなアンケートに答えたいということを意思表示したつもりもありません。その意味では、迷惑な封筒が来た、という印象を持つことも少なくありません。特に忙しいときには、封筒の表紙を見ただけで内容を察知し、開封もしないまま、ごみ箱に捨ててしまうこともあるでしょう。

 筆者は週に2回外来をしていますが、こういう状況をよく体験します。たまに、時間に余裕があるときだけ、暇つぶしとして封筒を開いてみます。筆者の場合、回答項目数が多いとき、回答が面倒なとき、自分の専門領域と関係ないときには、そのままごみ箱に直行することが多かったように思います。

 そういうことを考えると、郵便をベースにしたアンケート用紙による調査法というのは、比較的時間に余裕がある医師からだけの回答を反映いているのではないか、と考えます。その意味では、医療業界で忙しく働いているオピニオンリーダーの医師からの意見を反映しにくかったのではないでしょうか。

了解のうえでの調査

 上述したように、アンケート用紙が送られてくると、なぜこの調査会社は、自分の病院の住所や自分の名前を知っているのだろうか、と不思議に思うことがあります。つまり、この郵便物を送る側は、医師の個人情報をどこから取得しているのでしょう。医師の個人情報が漏れていて、それが売買されているのではないか、という疑問が生まれます。個人情報の漏洩に対して厳しい考え方を持つ医師は、それだけで回答を拒むことでしょう。また、それが調査の結果にバイアスを与えます。

 なお、もし個人情報が売買され、その個人情報を元に、悪徳業者がむやみにインターネットにおけるアンケートの回答を求めるメールを届ける場合、これはジャンクメールということになります。米国なら反スパム法という法律で罰せられるでしょう。 

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