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プラスαのインターネット活用術39

Medical Tribune 2000年11月16日 42ページ ©︎鈴木吉彦 医学博士

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コンテンツパッケージ(2)

ネット版MEDLINEが登場

各種MEDLINEごとに特徴

 私が勤務していた済生会中央病院には、昔はCD-ROM版のMEDLINEがありました。しかし、図書館に行くと、他の医師が利用していて、自分の空き時間に自由に利用できないという不便さがありました。ですから、関連する論文をさっと読みたいときや自宅でも利用したいときに、それができないのは大変に不便でした。この問題は、最近になって英語の論文については、MEDLINEがインターネットで利用できるようになって、解決してきました。

 前号で紹介したMediproのコンテンツパック(A)には、COS版のMEDLINE、PaperChase版MEDLINE、Arise版MEDLINEなどが、無制限に利用できます。これらのMEDLINEは、もともと米国立医学図書館にあるMEDLINE用の生データベースを、COS社、PaperChase社、Arise社が、独自の検索方針で、独自のMEDLINEとして売り出しているものです。また、米国立医学図書館自体も、PubMedと呼ばれる独自のMEDLINEを提供しています。ですから、Mediproには現在では、4種類のMEDLINEがあります。このうち、COS版、PaperChase版は、米国でも有料サービスとして提供されていますので、日本でも、コンテンツパッケージ(A)、あるいはコンテンツパッケージ(B:これは、これまでMedipro Clubと呼ばれていたサービス)のなかに含めて、提供されるわけです。有料サービスということなので、利用するには会員登録が必要になります(http://www.so-net.ne.jp/medipro/の画面にあるコンテンツパッケージのボタンを押して解説を参照)。

 これらのMEDLINEは、独自の検索方針で検索されます。その方針は企業秘密です。ですから、例えば、最新の論文を優先する考え方を採用する方法、クリック回数をカウントして、回数が多い論文を優先する方法、関連する論文も含めてクリックされる論文を優先する方法、雑誌などにランクを付けて重要な雑誌を優先し検索する方法、あるいは、抄録に含まれるキーワードの数が多いほど重要な論文とみなす方法など、たくさんの検索方針の在り方が、検索システムのバックヤードでは動いているはずです。それらをスコア化して考え、そのスコアが高い順に、検索結果を先に(閲覧画面では上に、あるいは前のページに)表示する、という場合が多いようです。

 つまり、これらの検索方式ごとに、各社のMEDLINEには特徴があります。ですから、あるMEDLINEではすぐに見つかる論文が異なるMEDLINEでは、なかなか見つからないということも、よくある話です。特に、自分の論文を、自分の名前を入れて見つけたいと思うときには、私の場合は、PubMedでは見つからないが、他のMEDLINEでは見つかりやすい、ということもありました。PubMedは、関連する論文(related articles)などが見つかるという点では便利なのですが、検索の概念に凝りすぎているような気がします。非常にシンプルな検索ができないことがあり、イライラしてしまいます。ほかにも、さまざまな会社がMEDLINEサービスを提供していますが、MyMediproでは、今後、さらに新しいMEDLINEの導入も複数、検討しております。

使い分けが必要

 1つの検索システムだけで見つけたい論文を検索できないことがあると、論文を書いているときに、非常に不安になります。ある会社のMEDLINEで、キーワードを入力して得られた結果と、異なる会社のMEDLINEで同じキーワードを入力して得られた結果とでは、全く異なる検索結果が表示されます。なぜ、違う結果なのかは、上述したように各社の企業秘密です。ですから、1つずつ論文抄録を読んでいくのですが、その過程において、異なる仮設や食い違った理論があったりすると、それはどのMEDLINEで検索した結果のほうが、より本質に近い仮設であり理論なのか、という疑問が生じてきます。この疑問は論文を書いているときには、重要です。

 一般に、研究者は、自分が書いている論文の内容を支持するような引用文献を見つけたいのですが、それがすぐに見つかるMEDLINEと、見つからないMEDLINEとでは、前者のほうが便利と言えます。では、どのMEDLINEがどのような分野での研究論文を見つけるのが得意なのかというと、それは必ずしも、どれがどれに適しているとは言及できないわけです。

 また逆に、あるMEDLINEでは見つからなかったから、他のMEDLINEで調べなくてもよいかというと、そうはいきません。優れた研究成果が、隠れて埋もれている場合があるからです。1つの論文の、1つの仮設や研究結果を見つけることで、自分が書いている論分に対する理論的背景が見つかり、論文作成の作業が一気に加速するというのは研究者にとって非常によくある話です。そうであれば、利用側としては、各種のMEDLINEに使い慣れて特徴を理解し、自分に合ったMEDLINEはどれかを判断するしかありません。どのような検索をするときには、このMEDLINEを利用し、また別の目的で検索するときには、違うMEDLINEを利用する、というように、使い分けるしかないわけです。

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