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ベースアンプのゲインをフルにして4年くらいライブやってる話

※以前やってたブログの過去記事に加筆修正を加えた記事です


僕のベースの音作りは4年ほど前から基本的にゲインをフルに、つまりツマミを限界まで上げて使っています。

普通、こんなセッティングなんてスタジオ入り始めた初心者バンドマンもやらないし、そもそもスタジオに常設されているアンプには『故障の原因になるので過度にゲインを上げないでください』みたいな注意書きまである場所もあるので、そんなスタジオからすると僕のやっていることはひたすら機材を虐め抜く愚行でしかないのですが、少し待ってほしい!

確かにスピーカーに負担がかかるという点で手放しにオススメはしづらい。しかし、それはアクティブベースを使用したり、歪みエフェクターやプリアンプエフェクターを用いた場合でも同じことではないか?入力の段階でそもそも音が大きければスピーカーの負担になるし、そこをマスターボリュームで調整さえすればスピーカーを傷めるほどの音は出ないはずじゃないか?

そんな考えを抱き、数々の思考と試行を重ねた結果、ライブの日やスタジオに入る度に上の写真のようなゲインフルセッティングで臨み、その素晴らしさを密かに広めていった結果、最近ようやく僕の周りで(ほんの少しだけ)その良さが広まってきているので、改めて何故僕がゲインをフルにしたかも含めその良さを丁寧に説明したいと思います。


・そもそものきっかけ

これは4年前に1ヶ月半ほどニートをして収入が一切なくなった時、酷くお金に困った結果持っているエフェクターをほとんど売り払ったのがきっかけでした。

(2015~2016年前半の僕のエフェクター、今残っているのはチューナー、ループマシン、プリアンプだけ)

そもそもこの時期は僕自身オリジナルのバンドをやっていなく、エフェクターを買っても使う場面がなく、買い集めるのが完全に趣味になっていました。しかし趣味というものはお金があってこそのもの、生活に困れば当然これらをお金に変えざるを得ません。

それでもサポートでのステージや、ちょっとしたライブやセッションでは指弾きとピック弾きを使い分けたり、場面でスラップをする楽曲がある際にどうしても音色がひとつだと限界がありました。最終的にコンプレッサーと歪みはギリギリまで残ってたんですが、それでも1週間後のライブの為の次の日のスタジオリハに行くための交通費もままならない状態だったので、それもお金に変えるしかなくなり、どうしようと思った時にひとつの秘策を思いつきました。

「アンプのゲインを限界まで上げておけば、指弾きの強弱で歪みサウンドとクリーンサウンド両方とも出せるんじゃないか?」

このアホみたいな秘策を胸に、気がついたらエフェクターを売って、そのお金で入ったスタジオのアンプでゲインフルセッティングを試しました。それが始まりです。


・ゲインをフルにしても意外と歪まない

やってみて結構ビックリしたんですけど、思ったより歪みませんでした。

そりゃ強く弦をハジいたら歪みます。当たり前です。しかし、それなら弱くハジけばいい。それだけの話。アンプによってはどんなにタッチを弱くしても歪む時はありますが、そうなったら歪まないところまでゲインを落とせばいい。それだけの話。やってみると案外呆気なく、でも音としてはそこまで破綻しない音作りが出来ました。


むしろ、めちゃくちゃ音が良い!

BUMP OF CHICKENの直井さんが『花の名』という曲のレコーディングで「歪む限界までアンプのゲインを上げて弱く弾き、倍音豊かな音を狙った」というのを昔ベースマガジンだかの記事で言ってたのを思い出したんですが、質感としてはその音です。メロディックなバラードの中にしっかりと存在感のある、それでいて不必要に歪みすぎてない馴染みのいいドライブサウンドのそれと酷似してました。

その上で、自分の場合は歪んでも良いという狙いのもと最初からゲインを振り切って、その上で指先のタッチを極限まで繊細にコントロールする事により、右手でブースター及びオーバードライブの役割を担えるようにして、サポート等のステージでもエフェクターなしで対応できるようになりました。

それにより、右手のタッチが凄く弱くなりその出音を基本にダイナミクスを調整する為、スラップサウンドも相対的に抜けの良いサウンドになりました。ゲインがフルのお陰か絶妙にコンプ感も出て、指弾きとの音量差も全く気にならなくなったのも地味に大きい変化でした。

そして、この音作りによる歪んだ音が自分の想像していた以上にタイトな音像で、懸念していた低域の飽和したファズのような音だったり、スピーカーを飛ばしてしまいかねないヒステリックな音にならなかったのが何より意外で嬉しい誤算でした。ちなみにその後アクティブのベースでも同じ音作りをしましたが、不必要にベース側でEQを上げすぎなければ同じ質感の音を出せました。


・デメリット

もちろんこの音作りの弱点もあります。

ひとつは「ダイナミクスの全てを右手でコントロールしなければならないので、ライブ中にテンションが上がっても指先は冷静でいないといけない」ということ。

これをやり始めてから数ヶ月は一緒に演奏したメンバーから「ベースの音が大きい」と言われる事も多く、その度に自分の右手のコントロールが出来ていない事を嫌でも実感させられましたし、今でも気を抜くと意図しない場面で音が大きくなってしまう事もあるんですが、それだけ演奏に集中する(事を目標に出来る)という点においてはむしろメリットだと強引に思うことにしています。

次に「ピックと指を弾き分ける人にとってはその分2倍の努力をしなければならない」ということ。

このおかげで、僕はライブにおいてはピック弾きをしなくなりました。ピックで弾いた瞬間全ての音が歪んでしまったからです。急に下手になりました。ドラクエの職業熟練度が8から1になった感じ。そもそもピックを持っている時点で使うスキルが違うんです。ステ振りの問題です。ピックと指両方で多く練習が必要になるという、それだけシビアな音作りということなんでしょう。

最後に「アンプのキャラクターを掴めていないと良い音にはならない」ということ。

これはメリットでもあるんですが、アンプによってゲインをフルにした際の音のキャラクター、どの音域にピークがあるのか、高音がジャリっとするのかガリっとするのか、低音が回るのかというのを触った時点で素早く判断しないといけません。まあこれはゲインがどうこうと言う話でもないですけど、フルにするとその特徴がより強調されて音に出てきます。

その際に、自分の持っているベースとの兼ね合いで不要な音域をカットしたりするんですが、アンプの特徴が強く反映される分今までの音作りとはなかなか勝手が違います。まあ慣れればどうってことはないんですが、初めて出るライブハウスの、今まで使ったことのないメーカーのアンプとかだとサウンドチェック中に良い音に仕上げられない事もあるし、僕自身も年に1回くらいは、どうあがいてもゲインフルで良い音にならない場合もあり、その時は諦めてツマミの位置を12時ベースにして音作りをしています。

ただ、それぞれの特徴さえ掴んでしまえば大体のライブハウスで右手だけでドライブ感をコントロール出来るようになるので、機材を多く持ち込む必要もなくなります。少なくとも僕は、出来ればその身ひとつで色んな現場に赴きたい人なので、この身軽さを経験してしまうとオーバードライブひとつ持ってくのも馬鹿らしくなってしまいました。最近だとクリップチューナーにシールド一本でライブをこなす事も多いです。


・結局何が見えてくるのか

「アンプの持つ強みと弱み両方を敏感に感じ取れるようになる」

「エフェクター(プリアンプ)で音作りをする際の思わぬヒントになる事がある」

「自分の演奏の粗さを嫌でも再確認させられる」

ということです。


ここまで読んでくださったという事は少なからず興味を持っていただけたと思うので、近いうちに練習スタジオでアンプを鳴らす際は試してみると面白いかもしれません。好き嫌いは勿論あるとは思いますが、それ以上の発見もあると思います。

ただ注意してほしいのは、ゲインがフルである以上、マスターボリュームやEQの調整は慎重に行ってください。EQもマスターボリュームも不用意に上げすぎると当然それだけスピーカーに負担がかかるので、最悪の場合飛びます。EQはブーストするんじゃなくてカットを前提に使う方が良い音になることが多いぞ!上げすぎるなよ!!

あと、右手のタッチも繊細という表現で済ませましたが、ただ弱く弾いても良い音にはなりづらいです。スピードが伴っていないと良い音にはなりません。ゲインフルだと自分の指のスピード感(遅さ)も露骨に音に出ます。非常に難しいですが、その上で指のスピード感を意識すると、ルート弾き一つ弾くのも格好良さが段違いに良くなります。それはまた別の記事で話しましょうか。

とにかく、一度は試してみる価値はあると思います。今の音作りに納得がいっていない人、スラップの音抜けに悩んでる人、イマイチ自分の演奏を聴いてもノれない人、お金に困ってエフェクターを全部手放してしまった人、自分が上達しているのか自信がない人、それぞれにオススメです。


ちなみに僕はバンドメンバーからこの音作りと演奏で気味悪がられました!やったね!!(泣)

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