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真人間

真面目に息をする
それだけで笑われて
ひたむきに生きても
おかしいとからかわれる

まあいいやって思えれば
どんなに楽だろう
口にしてみても
奥に澱んだ蟠りは消えず

なんで俺みたいな普通の人間が
生きづらいんだ 分からんな
こんな事を思う事も
普通の事なら
この気持ちに名前をつけてよ
助けてと叫ぶ声も
届かないんだ 面倒だ
自力で立ち直るさ
それが俺の病
押しつけられた『まとも』の判子

辛いと思う心の機微も
耐えるべきと割り切られ
不真面目に茶化されても
怒るだけ無駄と悟る

全てが通じない
手詰まりの対話
扉を閉ざしたら
外から見える楽しそうな顔

なんでお前みたいな変な人間が
愛されるんだ 分からんな
俺とどう違うんだ
妬んで僻んでも
無駄なことだって分かっている
もう甘んじて受け入れていく
しかないんだ しんどいな
それでも生きるんだ
それが俺の病
不本意に診断された『普通の人』

誰だって本当は
影がある筈なのに
多様の受け皿が
普通だけをふるい落としてく

普通の人間が普通である事が
まともじゃない事くらい
今なら分かるだろう
誰もがまともで
在りたかった筈だ 始めはさ
なら壊れても狂ってしまっても
仕方ないさ 病なら
諦めもつくからさ
また一つ生まれる
まともじゃない普通に苛まれた
カルテに書かれた病名は『真人間』

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