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【読書感想文】目の見えない人は世界をどう見ているのか/著:伊藤亜紗


端的に結論から述べると、私の「世界の見え方」が変わった。

そして、身体的特徴としての「見える」「見えない」は等価である。

また、私の中にあった「健常者と障害者の間にある境界」が、歪み、崩れて、再構築される一冊だった。

私は医療職についており、他職種の人よりも障害者と接する機会が多いように思う。もちろん差別する気などさらさらないし、むしろ障害を持ちながら同じ社会に暮らしている人たちを理解できているほうではないかと自惚れていた。

ところが。この本では、障害者を理解しようとする視点・観点がそもそも違っていた。だって、タイトルが「目の見えない人は世界をどう見ているのか」だもの。このタイトル自体が「見る」とは、ただ「目で見る」ということではないことを語っているから。

空間・感覚・運動・言葉・ユーモアと五つの章で、視覚障害者の「世界の見方・見え方」について書かれているが、ハッと気付かされたり、思わず「なるほど」と唸ってしまったり、「見えていること」のほうが「見えていないこと」が多すぎる気がしたり、どんどん「私の世界の見え方」が歪んでいった。

私が捉えている空間認識・私の五感・運動機能・言葉の認識って一体どういうことなんだろう...なんだか訳がわからなくなっていく。でも、この訳のわからない感覚を味わうことが、本書の醍醐味なのでしょう。

著者の言葉を借りるなら、まさに「変身」。

最終章ユーモアは、言い換えるならば「品のある知性」だと感じた。この章があることで、歪んで崩れた「境界」が再構築されていく。身体的な特徴としての「見える」「見えない」は、人間の意思では変えられないけれど、ユーモアをもってすれば、「見える」人も「見えない」人も住みやすく、面白い世界が出来上がるのかな。私も、「そっちの世界はどう?」と尋ねてみたくなった。

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