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酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第8回「宇都宮の餃子とカクテルでヘベレケ」

「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。

一人酒ができなくなって2年半・・・再開の日を、ただ黙々と待ち続けていても仕方ないので、体験談エッセイを書こう。タイトルは、酔いどれ男のさま酔い飲み歩記。第8回「宇都宮の餃子とカクテルでヘベレケ」である。


はじめに

宇都宮駅のホームに降り立つと、餃子の香りが漂ってくるのが分かるのは、私だけであろうか。宇都宮といえば「餃子」と短絡的に考えているため、嗅覚が条件反射のように餃子と結びついているのか。いずれにしろ、宇都宮と餃子は切っても切り離せない。

餃子だけだったら、宇都宮はビールと餃子の食べ歩きで終わってしまう。だが、宇都宮には別の顔がある。それは「カクテルのまち」。名人のようなバーテンダーが切磋琢磨しているという。これは飲み歩き道楽の私には嬉しい情報だ。

餃子とカクテル・・・だが、宇都宮はそれだけではなかったのだ。

餃子のまち~ビールのない有名店を皮切りに

今もそうなのか分からないが、当時宇都宮で餃子の有名店といえば「みんみん」と「正嗣」が双璧だった。以前に宇都宮に立ち寄った時、みんみんには入っていたので、今回は正嗣から訪れることにする。

が、飲み歩きの口明けはならない。正嗣にはビールもご飯も無いからだ。焼き餃子と水餃子のみで、基本的にテイクアウトのお客さん中心。だから私も、ただひたすら焼き餃子を食うだけ。

美味かった・・・でも、やっぱりビールがほしい。

ショッピングビルの地下にある宇都宮餃子会が運営する「来らっせ本店」に行けば、みんみんをはじめとする複数の店舗の餃子が一カ所で食べられる。もちろんビールはあるし、ご飯だってある。善は急げ!

複数の店舗から選んだのは、やっぱりみんみんだった。焼き餃子と地ビール「餃子浪漫」を頂戴する。餃子はビールに合うのだが、この地ビールは餃子のために作られたものなので、味が濃い目で余計にピッタリだ。

みんみんの餃子は、注文時に「焼き」「揚げ」「スイ」と言い分ける。焼きと揚げは分かるが、スイとは何か。それは「水餃子」のことだ。何を食べても美味いのだが、腹具合がよければ3種類食べ比べてみるのが一番いい。むろんお相手は「餃子浪漫」がベスト。

ところで、宇都宮にはみんみん、正嗣の2大有名店とは別に、隠れた老舗があった。その店の名は「香蘭」で、宇都宮餃子会には参加していない知る人ぞ知る店だ。実は今回の口明けに狙っていたのだが、すでに営業を終えており、残念ながら来店がかなわなかった。

その後、一度は閉店となったらしいが、若い後継者が現れて復活したそうだ。今は宇都宮餃子会にも加入し、通販もやっている。食べに行きたいなあ。

大衆酒場「東力士」~餃子を勧められたが・・・

夕方の正嗣に始まり、みんみんの前には「味一番」という店まではしごして、餃子を食べまくってきた。だが、さすがに餃子一本勝負では飽きがくる。

口直しのつもりで、屋台横丁という新しいスポットに足を運んだのだが、その手前にある店に目が向いた。これぞ大衆酒場という店「酒蔵東力士」。のれんにデカデカと「東力士」と書かれている。

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見るからに大衆酒場の匂いがするぞ。

大阪で飲み歩いて以来、この手の酒場がすっかりお気に入りとなっていた。横丁内のしゃれた店よりも、中年男には大衆酒場の方がお似合いなのだ。
店内は期待通り、長いカウンターとテーブル席がある大衆酒場の王道。たくさんの酔客でザワザワとにぎわっているのがいい。酒の肴も豊富なのが、重ね重ねいい。

注文しようとしたら、店のおばちゃんが「餃子はいかがです?」と勧めてくれた。一見客だったので旅行者だと思ったのだろうか。ありがたい心配りではあるが、さすがに勘弁してほしい。どうやら、餃子は看板メニューだったようで、みんなに勧めていたのだ。

餃子の代わりに、日本酒のぬる燗と箸休めにもなるワラビとモロキュウをいただきながら、しばし大衆酒場の雰囲気に酔わせてもらった。「餃子のはしご」も決して悪くはないが、店で落ち着くという感じじゃなかった。やっぱり、こういう店がいいな。

すっかりお気に入りになったのだが、来訪から数年後、東力士は閉店となってしまった。餃子が食べたかったので残念だ。

カクテルのまち~マスターと語らい、盛り上がる

東力士で腰を据えることなく、調子に乗った私はさらに「中国飯店」という店で、餃子とビールをいただいた。これでもう餃子はいらない。でも、ビールばかり飲んでいるので、飲む方は物足りない。それなら、もう一つの顔「カクテルのまち」を堪能するしかない。

宇都宮とカクテルの関係は、この飲み歩きを企画するまで知らなかった。いつも飲み歩きのラストはショットバーのお世話になっているので、下調べをしていたら「カクテルのまち」であることを発見したのだ。

宇都宮市内のバーテンダーは、カクテル技能競技の全国大会で、多くの優勝者を出してきたという。ゆえに、宇都宮のバーはハイレベルな店揃い、とのことだ。能書きはこのくらいにして、早速バーに潜り込もう。

まずは「カクテルバータナカ」。こぢんまりとした雰囲気は隠れ家的で、年配のマスターはなかなか愛想がいい。カクテルバーの看板を背負っているのに、私が頼んだのは「ジントニック」。今思えば、つまらないチョイスをしたものだなと苦笑しかない。

なぜ一杯目は「ジントニック」なのか。

居酒屋探訪家の太田和彦さんの流儀を受け売りしていたからだ。ただし、あくまでも最初だけで、二杯目はマスターに自慢の腕を見せてもらったのは言うまでもない。

何杯かいただき、酔うだけ酔ったのだが、せっかくの「カクテルのまち」なのでもう一軒だけ寄ろう。すぐ近くにある「夢酒OGAWAパイプのけむり」の扉を開く。

店内では、さっきまで「タナカ」でご一緒させてもらったカップルと遭遇。ひとしきり盛り上がったところで、さらにマスターとも話に花が咲き、何をどのくらい飲んだのか分からなくなってしまうほど。でも、楽しい夜だったからいいや。

Thank you!宇都宮

〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2007年6月の備忘録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。

★店舗情報などを載せています→ブログ「ひとり旅で一人酒」

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