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酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第10回「初挑戦!あいりん地区の酒場めぐり」

「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。

一人酒ができなくなって幾歳月・・・再開の日を、ただ黙々と待ち続けていても仕方ないので、体験談エッセイを書こう。タイトルは、酔いどれ男のさま酔い飲み歩記。第10回「初挑戦!あいりん地区の酒場めぐり」である。

はじめに

大阪市西成区の新今宮駅と萩之茶屋駅の間にある「あいりん地区」には、日雇い労働者や路上生活者が大勢暮らしている。そのせいか、朝っぱらから営業している店も数多い。飲み歩き道楽としては外せないエリアのはずだが、簡単には近づけない。

あいりん地区は一種独特の雰囲気があり、治安も悪いと聞いている。下手に写真でも撮っていたら、酔っぱらいに絡まれる恐れもある。自転車の数もハンパなく、カバンをひったくられたら一巻の終わりだ。お前、それでも行きたいと言うのか?・・・「行きたい」

そんなわけで、大阪3度目の飲み歩きは西成チャレンジや!

新世界の2軒の飲み屋~あいりん地区へ行くための度胸づけ

南海のなんば駅から3駅目の萩之茶屋駅に行くのは面倒だ。各停しか停車しないので、下手をすると15分くらい待たねばならない。そのせいか、下車する人もまばら。

「朝から飲むぞ」と勇んで降りてはみたものの、独特の雰囲気にのまれてしまう。営業している店があっても、とても入ろうという気になれない。ここはひとつ、度胸を付けてから出直した方がいい。

何食わぬ顔で下見だけして、新世界へ急ごう。

リュックを新今宮駅のコインロッカーに預け、ジャンジャン横丁に入るとホッとする。あいりん地区同様、朝から営業している店が目立つ。串カツ店「ちとせ」で口明けとする。

有名串カツ店と異なり、観光客っぽいお客は皆無。地元のご常連にまぎれてカウンターに座る。生ビールとどて焼きという「鉄板」の組み合わせから。さらに串カツのシシトウ、タマネギを追加し、ゆるゆると店内で過ごす。久々の朝酒がしみ入る。

中年2人組が入ってきて「焼酎ある?」と聞くが、「ない」という返事で2人組は退散。そうか、度数の高い焼酎は無いんだと納得。酔っ払いはゴメンという店なんだ。おばちゃんが切り盛りしているためか、どこかほのぼのとした雰囲気が漂っている。

長居したかったが、本日の目的はあくまでも「あいりん地区」で飲むことなので、ここは切り上げるとしよう。だが、まだ行く勇気がない。ならば新世界でもう一軒。立ち飲み「のんきや」に入ろう。

この店も朝から大繁盛で、狭いカウンターに酔客がびっしり立つ。そのうちの一人が店を出たタイミングで、空いたところに滑り込む。席を確保すると同時に、店員のおっちゃんに麦焼酎とおでんの大根、タケノコを注文。間髪入れず、酒も肴も出てくるのだ。

カウンターの目の前で、グツグツとどて焼きが煮込まれている。後から来たご常連の男性は、来店してカウンターに着いたとたん、何も言わずにいきなりどて焼きをつかみ、目の前にある皿に盛って食べ始めた。

これには、さすがに驚いた。

私の隣に立ったおじいさんは、呼吸が苦しそうな病人っぽい感じ。「大丈夫かな」と心配してチラチラ見ていたが、日本酒一杯とどて焼き2本を食って立ち去った。体調が悪くても、酒だけは欠かせない。スゴイとしか表現できないな。

萩之茶屋「酒のもりた」~あいりん地区初見参で出会った名店

新世界での2軒は、どちらも大阪の大衆酒場っぽくて良かった。このまま新世界で、どっぷり飲もうかな。いや、そうはいかない。初志貫徹、あいりん地区へ行くぞ!

ほろ酔いになったし、リュックを預けて手ぶらなので、恐る恐るではなく普通に歩けるようになった。気持ちに余裕ができれば、酒場もチョイスできるというものだ。

事前に下調べし、ネット上で評価が高かったうちの1軒を、あいりん地区での口明けとしよう。萩之茶屋商店街の立ち飲み「酒のもりた」である。

店先のホワイトボードには「モーニングサービス」の品書きがあり、午前11時まではやっこ、もしくは湯豆腐が100円という格安。こいつはいい。店の前には自転車が数台置いてあり、入るにはちょっと勇気が・・・度胸一発、のれんをくぐる。

店内は予想に反し、意外と明るい雰囲気。店を切り盛りしているのは、40代前後のマスターと女将さん。ただし、飲んでいるおっちゃんたちは、路上で見かけたような方々ばかり。店内のテレビでは、競馬中継を流していた。

ホワイトボードに「きずし」の文字を見かけたので注文したが、残念ながら「売り切れ」の返答。まだ10時過ぎなのに売り切れてしまうとは驚きだ。気を取り直して、女将さんに日本酒とやっこをお願いする。

この女将さんがとてもいい味を出している。

場所柄から、いろいろな酔客が店に現れる。なかには、酔ってベロベロになるおっちゃんやにいさんもいるだろう。だぼらを吹っ掛けたり、エロ話を仕掛けたりする連中もいる。そんな客たちをとても上手にあしらっている。百戦錬磨とはまさにこのことだ。

あいりん地区の大衆酒場、どうなることやらと思っていたが、恐れる必要はなかった。追加で注文したきも焼きをいただきながら、酔っぱらいのおっちゃんたちと、しばし同じ空間を共有。この雰囲気、ほかの地区では絶対味わうことができない。

結論から言えば、口明けが「酒のもりた」だったことが全て。

我ながらベストチョイスだったと言い切れる。この時の印象が非常によかったので、以後、萩之茶屋に来るときは必ず「酒のもりた」に寄る。女将さんの客あしらいを見に来るという目的で(笑)

これだけの名酒場が萩之茶屋にあったのが不思議なくらいだ。事実「酒のもりた」は、萩之茶屋から天王寺へと移転し、「森田屋」と屋号を変え、界隈指折りの人気店となっていく。むろん、「森田屋」になってからも、私がプチ常連であることには変わりない。

話を戻そう。いい酒場で飲めてご機嫌になった。だいぶ酔ってきたので飲むのをひと休みし、新世界に戻ってスマートボールで遊んだ。出玉の台に当たったおかげで、ずいぶん楽しめた。

さあ、飲み歩き後半戦といくか。(次回へつづく)

〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2008年3月の備忘録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。

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