見出し画像

私だけの特捜最前線→3「愛・弾丸・哀~おやっさんのキャラ」

※このコラムはネタバレがあります。出演者は敬称略

第13回「愛・弾丸・哀」は、初期の特捜最前線の中でも名作の一つに数えられている作品です。主役は津上刑事(荒木しげる)ですが、おやっさんこと船村刑事(大滝秀治)のキャラクターが際立っています。

立てこもり事件で突入した津上刑事は、犯人を前に拳銃を発射せず、後方から撃った桜井刑事(藤岡弘、)が犯人を射殺しました。津上は「撃たなくても逮捕できた」と、桜井を激しく非難したのです。

津上は、冷徹そうに見える桜井よりも、日頃温厚な船村刑事に刑事の理想像を見いだそうとしますが、船村は「私はそんな人間ではない」と否定します。その最中、津上の妹が事件に巻き込まれてしまうのです。

この後のストーリーは省略しますが、作品では主役の津上よりもおやっさんのインパクトが強烈に残りました。そのキャラが最も出たのが、取調室での一癖ある容疑者への取り調べのシーンです。

のらりくらりと話す容疑者に対し、堪忍袋の緒が切れた船村は「俺だって刑事生活30年、伊達や酔狂で頭ハゲらかしてるワケじゃねぇんだ」と啖呵を切り、容疑者に迫りながら矢継ぎ早に言葉を吐きます。

「飯も食わさない、眠らさない、クソもションベンもそこでやれ!」と脅され、迫力満点のおやっさんに容疑者はとうとう陥落し、自供させられます。流れるようなセリフ回しは大滝秀治さんの真骨頂です。

取り調べ担当はベテランの役割、というのが刑事ドラマのセオリーですが、「太陽にほえろ」のヤマさん(山村刑事)とは違ったタイプのおやっさんの取り調べは、この後の特捜で何度も登場してくることになります。

ちなみに「愛・弾丸・哀」は、「哀・弾丸・愛」のタイトルで第359、360回でリメイクされます。こちらの作品の主役はおやっさんで、特捜史上でも一、二を争う名作と言われており、いずれ紹介したいと思います。

noteでは連載コラム、エッセイをほぼ毎日書いています。フリーランスのライターとして活動中ですが、お仕事が・・・ご支援よろしくお願いいたします!