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酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第45回「北海道・留萌の夜は大盛り上がり」

「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。

一人酒ができなくなって幾歳月・・・ついに再開の日を迎えた。が、本当の一人酒はこれからだ。さあ、体験談エッセイを書こう。タイトルは、酔いどれ男のさま酔い飲み歩記。第45回「北海道・留萌の夜は大盛り上がり」である。


はじめに

地元・諏訪地方にある観光施設で「北海道留萌フェア」というのがあった。北海道には何度も足を運んだが、留萌地方は未踏の地だった。フェアを見ながら漠然と「行ってみたいな」と思っていた。その4か月後、早くも実現したのだ。

昼の観光は留萌本線で1線1列のホームと古い駅舎が印象的な増毛駅まで往復した。高倉健さん主演の映画「駅 STATION」の舞台となった場所だ。時間がゆっくり過ぎていくようなローカル線をたっぷり満喫できた。

さあ、夜は留萌の繁華街に繰り出すか。

留萌「蛇の目」~新鮮な海の幸でまずは一杯

飲み歩きの前に、留萌おみやげ処「お勝手屋 萌」に立ち寄った。4カ月前に地元でのフェアを見てきたばかりなので、なんとなく懐かしさがある。スタッフのおばちゃんと一言二言会話を交わし、ちょっとだけだがお土産も買わせてもらった。

改めて飲み歩きを始めよう。ホテルで「協賛飲食店特典パスポート」を頂戴したので、最初から奮発するぞ。ならば海の幸がいい。「蛇の目」という寿司店がある。ここにするか。

家族経営の店らしく、兄弟が寿司を握り、オヤジさんが客あしらいをしている。カウンターの一角に座り、まずは増毛町の地酒「国稀」を頂戴し、ナマコ酢をいただく。ナマコは冬の味覚と思い込んでいたが、種類にもよるのだろう。

そして握りではなく、つまみを切ってもらう。ウニ、ホタテ、数の子、イカ、トロ、シメサバと白身魚。白身魚の種類は聞き忘れた。この店は醤油を刺身用と寿司用に分けている。違いは分からないが、こだわっているなあと唸る。

週末の夜とあって、店は結構混んでいて、寿司を握る兄弟の手はなかなか止まらない。これは追加注文のタイミングが難しいぞ。だが、隣に座っている常連のじいさまは、絶妙に声掛けをして握りを頼んでいる。阿吽の呼吸を熟知しているのだろうな。

もうちょっと飲み食いしたかったが、次の店に期待しよう。

留萌のまちで飲み歩くも・・・パッとしない夜

だが、このあとはパッとしない飲み歩きが続く。

まずは焼きとりの店。ここは店の雰囲気こそ悪くはないのだが、店内が煙でモクモクしているのが、どうにも居心地が悪い。それが店のウリなのかもしれないが・・・。馴染めないなかで、生ビール1杯と焼きとり1串だけいただいて、そそくさと店を出る。

次の店では門前払いを食らった。ちょうど店から客が出てきたところを見計らって店に入ったのだが、店員に「すみません、今手一杯で、片付けもできてないんで」と機先を制された。嫌そうな顔にも見えたので、「じゃあ、いいよ」と啖呵を切って出た。

旅先で邪険にされると気分が悪いぞ!

留萌「富丸寿司」~ジャンボかきあげ丼にビックリ

門前払いを食らって途方に暮れた。こうなれば、どこでもいい。目に飛び込んできたのが「富丸寿司」の屋号。また寿司屋では芸もないが、ほかに寄るところもない。

カウンターがほぼ埋まっており、座敷に案内されそうになった。寿司屋に来てカウンターに座れないのは味気ない。と、ちょうど一人客が立ったところだった。すかさず、そちらへ移動し、無事カウンターに座る。

「蛇の目」で握りを食いそびれていたので、今度は握りを注文。日本酒のコップ酒とともにいただく。ラインアップはイカ、甘エビ、ウニ、ホタテ、マグロ、白身魚。この店でも白身魚の種類を聞き忘れた。

しばらくして、隣の客がジャンボかきあげ丼を注文した。出てきた丼のどでかさに注文者はおろか、私も含め店内中が圧倒された。どうやら店の名物らしい。果たして食べきれるのだろうかと心配したが、案の定、客はギブアップした。

見ていただけで、何だか満腹になってしまったぞ。

留萌「A-one」~歓迎された一見客

飲み歩きの締めくくりはショットバーにしよう。「A-one」というなかなか洒落た店を見つけた。バーテンの女性から「マスターが来るまではカクテルができないんです」と恐縮されたが、それは別に構わないよ。

そんなわけで最初は恒例のジントニック。ご常連らしい先客もいたが、とくに会話を交わすでもなく、しばらくは静かに飲んでいた。が、先客の連れらしい女性3人組がやって来て雰囲気が一変してしまう。

「お勝手屋 萌」のおばちゃんたちだった。

つい先ほど、お土産屋に立ち寄ったばかりだったので、おばちゃんたちも顔を覚えていたらしい。静かだった店内は一気に盛り上がっていく。やがてマスターも到着し、ご常連も2人、3人と増えていった。

みんなが顔なじみという店内にあって、一見客の私は格好の「肴」となる。常連さんたちから「どうして留萌に来たの?」とか「この店をどこで知ったの?」とか、次から次へと質問攻めにあう。私は私で、酔った勢いで大げさに答える。そして爆笑。

その間、アーリータイムのロック、マスター自慢のオリジナルカクテルと酒の量が進む。そろそろお開きかなと思っていたところに、恰幅のいい男性が来店。なんと観光協会の会長さんだった。一見客が長野県から来たと知って、喜んだばかりか・・・

「わざわざ来られたので、おごらせてもらうよ」。

定量気味だったが、せっかくだからジントニックをもう一杯だけ飲ませてもらう。そして、飲み終えて店を出る時、お客さん全員が拍手で見送ってくださった。まるで歓送迎会の主役になったような妙な気分だったな。

終わり良ければすべて良し。ありがとう留萌の皆さん。


今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2012年6月の忘備録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。

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「ひとり旅で全国を巡ろう!旅道楽ノススメ」→note連載中の「酔いどれ男のさま酔い飲み歩記」もヨロシク!


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