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私だけの特捜最前線→43「誘拐II・果てしなき追跡!~サスペンスあふれる尾行だけを描いたドラマ」

※このコラムにはネタバレがあります

「誘拐Ⅰ」「誘拐Ⅱ」として前後編で放送され、前編は「誘拐1・貯水槽の恐怖!」と題し、事件発生から身代金受け渡しまでを描いています、身代金を受け取った犯人を追って・・・というところで後編に続くのです。

犯人は異常なほど猜疑心が強いとの設定で、特命課の刑事たちは絶対に悟られないように尾行するという命題を課せられます。現場で直接指示を与えるのは橘刑事(本郷功次郎)です。

ドラマの大半を「尾行する刑事たち」に費やしているのが、この回の特徴。逃げられそうになったり、気づかれそうになったりと、そのつど視聴者をハラハラさせる物語の展開は、さすが長坂秀佳脚本です。

最大のピンチは、滝刑事(桜木健一)が犯人に詰め寄られるシーン。そこにカンコこと高杉婦警(関谷ますみ)が現れ、デート中の喧嘩を装って危機を脱出します。もっとも、神代課長(二谷英明)が命じたのでしょうけど。

これが、前任の玉井婦警(日夏紗斗子)だったら、デートではなく違ったシチュエーション(例えば痴漢を追う婦警とか)だっただろうと思うと、キャスティングの妙もよく考えられた場面だと感心させられます。

スリリングな尾行劇の一方で、桜井刑事(藤岡弘、)だけは犯行の動機を捜査し続け、ついに容疑者を特定します。さらに、誘拐された子供の救出のために大掛かりなローラー作戦の指揮を取るのです。

このドラマでも、橘、桜井が特命課の二枚看板として活躍していることがうかがえます。その二人をうまくコントロールしているのが神代課長であり、特命課のチーム力を見せつけた作品とも言えます。

この作品では、誘拐された子供が実は犯人の実子だったという伏線が張られていました。しかし犯人は逃亡の末、車にはねられて死んでしまうのです。そして子供は、父親と桜井によって救い出され、九死に一生を得ます。

父親は「この子は私の子です」と泣きながら刑事たちに話しかけます。桜井はじめ紅林、吉野、津上、滝、カンコはその姿を笑顔で見つめていますが、橘だけは厳しい表情を崩していません。

橘は、結果として本当の父親である犯人を死なせてしまい、将来子供が真実を知る時がきたら、どうなってしまうのか、という思いがよぎっていたのでしょう。現場責任者として、とても笑う気になれなかったと思います。

決してハッピーエンドだけには終わらせず、「後味の悪さ」をちょっとでも悟らせる演出・・・さすがは、特捜最前線だなとうならせました。

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