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私だけの特捜最前線→49「東京,殺人ゲーム地図!~推理を楽しめる刑事ドラマの正統派ストーリー」

※このコラムはネタバレがあります。

特捜最前線には、社会派もしくは人情派のドラマが多いですが、この「東京,殺人ゲーム地図!」は、刑事物の原点である推理とサスペンスにあふれた「正統派」とも言えるストーリーが展開されます。

連続通り魔事件を推理する叶刑事

東京都内で、女と男が交互に相次いで襲われる連続通り魔事件が発生します。特命課が捜査を開始しますが、その捜査をテレビで先読みしてしまう男が現れます。元警察官の犯罪研究家(小林昭二)です。

犯罪研究家は、通り魔事件を次々と予告していきます。その言動に苛立つ叶刑事(夏夕介)は、犯罪研究家と直接対決しますが、「今の警察機構では、この犯罪は解明できない」と断言されてしまいます。

マスコミを通じて、現行刑法を改正し、戦前の特高警察を復活させろとの主張を繰り返す犯罪研究家。その間にも通り魔事件は続き、ついには警察官の拳銃が奪われ、被害者が射殺される事態になってしまうのです。

叶刑事は、通り魔事件には法則性があることに気づき、それが碁石を使った競技「連珠」であることを見つけます。犯人は、女を黒石、男を白石に見立て、連珠の打ち手に沿った場所で事件を起こしていました。

おやっさんの協力で、次の打ち手、すなわち事件が予想される現場を探る特命課。そして、その場所に犯人が現れた瞬間、特命課は恐るべき犯罪者の上をいき、犯人を現行犯逮捕できたのです。

刑事ドラマの娯楽性とメッセージ性

この回は、純粋に刑事ドラマを楽しめるという点で、特捜最前線のなかでも傑作の一つに挙げられています。犯人の人間性の部分には全く触れず、冷徹な事件を繰り返す犯罪者としてクローズアップしました。

犯人たちの狙いは、警察機構を戦前の特高警察のような強圧的な組織に戻すことにありました。犯人の一人は「現行法では、証拠がない私に一歩も触れられないだろう」と開き直る発言をするほどです。

それに対し、神代課長(二谷英明)は「現行法があるからこそ、人々の人権が守られ、警察は民主的でありえるのだ」とキッパリ言い切ります。これは、特捜最前線の肝になる部分であるともいえます。

刑事ドラマとして、事件を推理する娯楽性を持たせながら、同時に警察のあり方について一家言加えるストーリーは見事の一言に尽きます。メインライターの長坂秀佳氏の面目躍如といったところでしょう。

犯罪研究家役の小林昭二さんは、ウルトラマンのムラマツキャップ、仮面ライダーの立花藤兵衛としてもお馴染みですが、ここで見せた威圧的かつ説得力あふれる演技が、ドラマを一層引き締めてくれました。


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