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私だけの特捜最前線→48「フォーク連続殺人の謎!~大事件を予感させつつ、最後は人間ドラマへと」

※このコラムにはネタバレがあります

「フォーク連続殺人の謎!」は、橘警部(本郷功次郎)の警察学校同期生で、今は全国の警察に散らばっているエリート警察官たちが、謎の人物に次々と殺されていくという話で始まります。

最初の犠牲者は、出世頭だったFBI出張中の警部。一時帰国した警部を橘たち同期生が歓迎しようという日に、フォークで胸を一突きされてしまいます。同期生たちは犯人逮捕を誓い、特命課と合同捜査を開始するのです。

警部が国際シンジケートの事件を追っていたことから、組織犯罪が疑われますが、やがて同期生が次々と犠牲になっていき、新聞は「幹部を狙った警察への挑戦」と書き立てていくのです。

仲間たちが殺されてしまい、自分の無力さを痛罵する橘。神代課長(二谷英明)は「お前の思い込みが過ぎる。それは我々も同じかもしれない」と、犯行動機について視点を変えた洗い直しをアドバイスしました。

警察官だから許せなかった

橘は、殺された同期生たちが3年前に警部の送別会で、最後まで飲み歩いたメンバーだったことに気づきます。彼らは終電車に乗るため、最寄り駅にやって来ました。そこで、動機に直結する出来事に遭遇していたのです。

階段の近くで初老の男性が倒れていました。しかし同期生たちは、よくある酔っ払いだったと思い込み、終電車へと急ぐため、そのまま放置しました。しかし、男性は頭部を打って昏倒しており、亡くなってしまいます。

連続殺人の犯人は、男性の息子だったのです。息子は「放置した男たちが警察官だったから、余計に許せなかった」と犯行を計画。警部が一時帰国するというニュースを聞き、計画を実行に移したのです。

一方、メンバーの一人だった警察幹部(長塚京三)は「警察官がミスを犯した・・・その償いをしなければ」と、単身で男性の墓前に向かいます。息子は幹部を狙いますが、すんでのところで橘が駆けつけました。

フォークを使った特異な犯行から、動機を悟って自分を逮捕してほしかったという息子。橘は「殺された警察官の妻や子は、誰を怨めばいいんだ」と怒気を強め、自暴自棄で幹部を殺そうとした息子を撃ったのでした。

語らないことがドラマを深くする

ドラマの脚本はメインライターの長坂秀佳氏で、警察幹部が相次いで狙われた大事件かと思わせながら、実は個人的な恨みからくる単独犯行だったというストーリーにもっていっています。

その恨みも「昏倒していた父親を誰も助けてくれず、見殺しにされた」という、青年の悲しくも独りよがりな動機で、「われ関せず」という世知辛い世の中の風潮をドラマの中へ見事に織り込んでいます。

クライマックスで警察幹部は、墓前に手を合わせたまま、犯人が殺そうとしても、橘が犯人を撃っても、その姿勢のまま動かず、一言もしゃべらないままにエンディングを迎えるという演出は素晴らしかった・・・

何も言わなかったことで、警察幹部の複雑な心境を見事に見せつけてくれました。もちろん、長塚京三さんの名演技あってこその名場面です。ちなみに橘警部も狙撃後は、一言も口をきいていません。

殺人になぜフォークを使ったのか、という謎解きをしたのは、桜井刑事(藤岡弘、)でした。その種明かしをするのは、ネタバレのやりすぎですし、ヤボなのでやめておきましょう。作品をぜひご覧ください。

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