見出し画像

私だけの特捜最前線→32「雪国から来た逃亡者!~事件の真相を通して人の心を描いた名作」

※このコラムはネタバレがあります。出演者は敬称略

この回の主役は叶刑事(夏夕介)。行きつけのラーメン店従業員が、子供を守ろうとして暴走バイクにはねられ即死。彼の家族に連絡しようと、履歴書を確認したらでたらめで、本当の身元は分からない・・・。

捜査の結果、彼が東北地方出身で、しかも出身地で起きた殺人と誘拐事件の容疑者だったことが判明。叶は現地へ飛び、彼の母親や、退職後も彼を追っていた元刑事の男性と出会うことになる、というストーリーです。

ドラマの見どころは母親と元刑事の心情です。母親は、容疑者となってしまった息子を憎み、蒸発した息子を「死んだ」と割り切って位牌まで作っていました。叶から消息を聞かされても、無表情のままです。

元刑事は、従業員の男を逮捕するため、退職後も全国各地を飛び歩く執念の捜査を続けますが、ついに私財を使い果たしてしまいます。元刑事の娘は、そんな父親の姿を心配そうに見つめているのです。

やがて事件は、特命課の手によって真実が突き止められ、従業員の男は殺人も誘拐も起こしていなかったと分かります。元刑事は悔しがりますが、娘からは後日、父親がこの事件からようやく解放されたと感謝されます。

叶は母親にも事件の真実を知らせます。その時は冷淡に応対していた母親でしたが、叶の車を見送りながら、膝を崩して「ありがとう」と涙しました。最後の最後に、息子を信じていた母親の本心が明かされたのです。

ドラマとしては、元刑事と娘だけ、あるいは母親だけにスポットを置いても、十分見ごたえのあるストーリーが作れたでしょう。しかし、元刑事と母親の両方の心情を描いたことで、さらに深みが増していったのです。

ここでは紹介しませんが、事件にかかわる他の登場人物の心情にも触れていますし、捜査する叶刑事の思いも丁寧に描かれており、特捜最前線の中でも名作の一つに数えられるドラマに仕上がったのだと思います。

noteでは連載コラム、エッセイをほぼ毎日書いています。フリーランスのライターとして活動中ですが、お仕事が・・・ご支援よろしくお願いいたします!