アンプの話

「興味のある方はいらっしゃいませんか?」


友人のFacebookのその投稿は、機材に関するもの。

内容はMARSHALL JCM900とキャビネット、それからPeavey5150についてだった。

冗談交じりに「興味はあります!」と返してみる。

すると「もし全部引き受けてくれるなら差し上げます!どうぞご検討下さい。」と返信。

目が飛び出るほどビックリした。

いくら図々しいでお馴染みの俺でもさすがに気後れして「本当にいいんですか?」と確認する。

「売って雀の涙になって落ち込むより、知ってるどこかで鳴っていて欲しい」と。

心意気に感動し、タイミングを合わせて引き取りに行く事に。


引き取りに行けるタイミングになったので、連絡を入れて指定された先に到着。部屋まで取りに行く。

一緒にアンプを運んでいると「引っ越す事になってね。」と切り出される。

バンドは続く事。でもアンプを持って行ける環境ではない事。家族の事。これからの事。

決して口数が多いワケではないけれど、少しずつ話してくれる内容から想いは伝わって来る。

歴史の詰まった、見覚えのあるアンプを車へ積んでいく。

全部積み終わったので重々お礼を告げて、ハッチを閉めようとすると彼がスッと前に出て来た。

ハッと気付いて手を止めると、最後に積んだヘッドをポンポンと叩いてひとこと。


「いっぱい鳴らして貰うんだよ。」


機材は、楽器は、ただの道具だ。

でもその道具にはそれぞれの歴史がある。

それぞれの想いがある。

俺は、ただ機材を貰っただけではなくて、その想いや歴史を次世代に託されたのだ。


ありがとう。

心して、寿命を迎えるまで使い倒すよ。

そしてもし手放すタイミングが来た時は、それを大切にしてくれる人に託すよ。

やって来た機材たち、よろしくね。

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